教育視察ツアーin韓国 2016 Report#4
午前中は1時間ほどバスに揺られて、登山に訪れる人が多い世界遺産にも指定されている観光地・南漢山(ナンハンサン)へ。
ここにある公立学校・南漢山小学校を訪れました。
地域に暮らす子どもの数が減ったことから廃校の危機にあったこの学校は、2001年から「競争や成果主義ではない学校、子どもたちが幸せに暮らせる学校を目指そう」という方針に大きく転換し、そのことをもって学校を存続させることに成功しました。
公立校の枠組みの中で、内側からそういった変革を起こしていこうという「小さな学校運動」「革新学校」の皮切りとなった学校と言われています。
まず校長室で、こんなお話を聞きました。(例によってダイジェストですみません)
・この学校は先生、地域、保護者で1つの方向性で運営している。
キーワードは、自律、経験、協力、進歩(リベラルの意)、生徒中心。
・「生徒中心」の具体的な中身としては、こどもたちの意見をきちんと聞き、取り入れるということ。行事や施設やプログラムにも。
・公立としては初めて教育課程を自分たちで作るという取り組みをした。
・他の公立の小学校と同等の学力や学習は備えつつ、不必要なもの(試験でいい点数をとるための対策、塾に通ってこどもの時間が切迫するというようなこと)は取り払っている。豊かな自然の中で学ぶことを大事にしている。
・今ここに通う子は、もともと地元の人というのはいなくて、この学校に通わせたくて引っ越してくる。
・授業は講義よりは活動的な内容を多くしている。韓国の多くの学校は、40分授業10分休み40分授業という時間割だが、ここでは80分授業30分休み80分授業というスタイル。エポック授業といって、長いスパンで、あるテーマや教科を集中的に学ぶ、ということもしている。
などなど…。
その後、休み時間に子どもたちと少しおしゃべりしたり遊んだり、遊んでいる様子を見せてもらったりした後、授業を見学。教頭先生に学校の中を案内してもらいました。裏山にも机と椅子が並べられていて、春になったらここで自然とふれるような授業はもちろん、教科の授業をしたりもするのだと教えてもらいました。気持ちよさそう…。
図書館は企業の寄付などでつくられていて、時々読書キャンプという宿泊のイベントも行なっているとのこと。
既存の制度の中で、柔軟に学校のシステムや空間をデザインしているところがとても印象的でした。
お昼ご飯は、南漢山名物のアワビのスープ!美味しかったです。
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バスでソウル市内へ戻り、今度は、ハジャセンター(ソウル市青少年職業体験センター)を訪れました。
ハジャの事業領域は大きく以下の3つ。
「職業体験プログラム」
「学校から離脱した青少年のための代案学校」
「マウル(まち)事業」
職業体験プログラムは一般の学校に通っている人が対象。
だいたい団体で来て、2、3時間の職業体験のプログラムを受講する。
文化芸術的な作業や、持続可能性というテーマでの手作業が主な内容。
ウェブサイトで申し込みをスタートすると1週間で1年分が埋まってしまうぐらい人気なのだとか。
代案学校は、ハジャセンターが直接運営している「ハジャ作業場学校(持続可能性とエコがテーマ)」に加え、ハジャセンターから生まれた社会的企業が運営している「料理」と「旅行」をテーマにした学校も館内にあり、それら3つの学校をまとめて「ハジャネットワーク学校」と呼んでいるそうです。資源を共有して相乗効果を得られるように3つの学校が連携しているとのことでした。
マウル事業は、「働く」ということを考えるときに、日常の暮らしや、地域の人(年上や年下の人たち)との関係性の中で自分を見つめ、できることを探していくという経験が重要だという考え方から、青少年だけでなく地域の大人やもっと小さい子も来られる場所として運営されています。木工の工房、陶芸土いじり、自転車の工場など手を動かせるところがあり、また地域の人たちが気軽に使えるギャラリーやカフェ・シェアキッチンなどがあります。
これらが有機的に結びつきながら、青少年の社会体験、職業体験を推進しているというダイナミックな施設。
「パンドル(台をまわす人、の意)」と呼ばれるスタッフの方のお話を聞いた後、施設を案内していただきました。
そして!私たちからも何か提供できるものはないか?ということで、ハジャセンターに来ている高校1年の年齢の子たちに向けて、参加者のIさんが勤め先の高校でやったことがある防災グッズづくりの授業をプチ体験してもらいました。わいわい言いながら楽しんでくれ、いい時間になりました^^
その後、Q&Aタイム。ハジャセンターは取り組みが多岐にわたり、ユニークなので全容を掴むのがなかなか大変で、大幅に時間が延びてしまいましたが、遅い時間まで丁寧に対応してくれ、本当にありがたかったです。
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本当は、この後振り返りのセッションを予定していたのですが、時間が押して皆さんクタクタ&最後の夜なのでみんなで食事をする時間も大切にしたかったので、最終日の振り返りを少し長くすることにしてこの日はセッションを取りやめ、みんなで若者の街・弘大へ。
ビールとマッコリで乾杯!し、夜は更けていきました…。
(2016/03/29 投稿:武田緑)