【連載小説:ホワイトハニーの未来へ】「第5章 お願いしていい?」(3)
(3)
あれ以来、あまり立ち寄らないようにしていた本屋街。
それなのに地下鉄から地上に出ると、まるでついこの間のように当時を思い出す。あの日は、大樹の歩く前に父の背中があった。しかし、今はそれがない。
大樹は自分の足で記憶を頼りに道を歩く。靖国通りから一本横に入って、すずらん通りへ。以前に来た時は無かったコーヒーチェーン店が出来ているのは分かったが、それ以外は変わっていないように見えた。
「あった」
ホワイトハニーの前に来た時、大樹は声を漏らす。店構えは以前と