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浪人、再考。浪人、最高!PartⅠ

ストレートで大学に行ければ良かったものを、親に余計なお金を出してもらった上に、「浪人、最高!」だなんて本当におこがましい話なのだけれど…。振り返ってみて、自分のこれまでの人生でキラキラ輝いていた青春…を思い出すとやはり、19歳、1年間を仲間と過ごした浪人時代なのだ。まるで、村上龍の青春小説「69」のように…(あの作品も、とっても好きだ)。


現役ならではの根拠のない「強気な姿勢」がたたって、受験校すべてを見事に玉砕した私は、1年間の浪人時代に突入した。村上春樹と同じ人生を歩むべく、まずは大学から同じところに入ろう!と、志望校は「早稲田大学」に絞った。で、選んだのは、河合塾の「早稲田特別文型進学コース」。ほかに、「早慶上智コース」なんてものもあったが、私にはそんな「甘っちょろい」(失礼!)コースは似合わない。バンカラで行くぞ!そうだ!そうだ!バンカラ、万歳! これが私の選んだ1年間の修行の場だった。

浪人するんだから、徹底して「浪人」に徹しようと決心した。髪は落ち武者のようにザンバラにしてふり乱し、お洒落なんてもちろんせず、視線はうつむき加減で、背中を丸めてやや早足で歩き、浪人らしく、コソコソと1年間を生きようと誓った。もちろん、恋なんぞご法度だ。そう、受験に恋愛は命取りだ。ひたすら勉強だけして、ストイックに生きるのだ!そう決めたのだった。

そうして迎えた予備校初日。

大きく深呼吸し、大教室のドアをゆっくりあけた。瞬間、私の目の前に広がったのは一面のお花畑・・・ならぬ、100人以上はいると思われる一面の男子たちだった。しかも、都心の千駄ヶ谷校(原宿や渋谷の近く、と思っていただければ間違いない)なんて選んだばかりに、皆、お洒落でカッコいい。

見た目にはまるで、渋谷のチーマー(懐かしい)もいれば、明らかに進学校のお坊ちゃま私立学校から来たような、若き日の三島由紀夫(本名=平岡 公威〈ひらおか きみたけ〉)を彷彿させるお公家的なお顔もちらほら…。むむっ…。これはまだ私が体験したことのない「新世界」(by ドヴォルザーク)だ…。そして、彼らの頭の中のレベルは確実に、私よりかなり上の人たちなのだ…。その事実を理解した瞬間、これまで味わったことのない精神の高揚と、私の頭の中に、新しい何かが始まるようなファンファーレが高らかに響き渡ったのであった。

それまでずっと公立学校育ちで、高校時代、ギャーギャー、野猿のようにうるさい男子たちとしか接してこなかった私には、初日から目からウロコの瞬間だった。

そしてその瞬間、「恋なんてするまい!」そうかたく誓った私の決意は、泡と化したのだった…。

(続く)


何はともあれ、ラブ&ピース!

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