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日本クスクス党 第五話

♪ズンダカ ズンダカ♪

サンバのリズムをBGMに、クスクス料理のフードトラックは行く。

Give me チョコレート!」と、かつてGHQのジープに群がった飢える子供たちのごとく、クスクスで能天気・骨抜きとなった日本の人々は我先にとトラックに手を伸ばす。

その争奪戦にヒートした人々は、いとも簡単にキレて殴り合い、暴動に発展する。そのタイミングを見計らい、クスクス党幹部たちは次の手を打つ。

どうしてもクスクスが口に合わない人々を晒す「クスクス狩り」だ。

もとよりパサパサとした食感に慣れない人は多数いたが、世間の風当たりを恐れて「No!」と言えず、仕方なく周りにあわせていた。しかし、SNSにはそんな「クスクス弱者」の苦しい胸の内を吐きだす書き込みが散見し、それは“No more kusukusu!(NMK)”の掛け声のもと、大きなうねりとなった。

これに対して、クスクスの栄養価の高さや調味アレンジの幅広さを指示する“Let's gain kusukusu!(LGK)”は強硬策をとり、NMKの信者とのゲリラ的な戦闘が発生。やがては国を二分する紛争へと繋がった。

夕方のニュースでは、両軍のしのぎをけずる勢力分布を詳しく報道。職場や学校などで対立するメンバーに出くわさぬよう、自宅での自粛が呼びかけられた。感情の興奮をうながす酒類の提供は禁止され、街には閑古鳥が鳴く。

経済が疲弊し、世論が二分化する中で、「誰を、何を信じればいいのか?」疑念にかられつつも、些細な“ことばのあや”から各地で暴動が巻き起こる。

クスクスが招いた非常事態に、国や政府、都道府県との間では責任の擦り付け合いが延々と続き、根本的な解決に至らない。

日本が“こってり”と弱体化する様子を確認し、クスクス党は遂に日本を東西に分けることを閣議決定する。“LGK”と“MNK”の各会員の居住区を東と西に分断し、その国境にそびえたつ“壁”を設置した。親戚・恋人同士、かつて共にオリンピックを戦ったチームメイト同士が“クスクスが好きか嫌いか?”だけで二つの国に分断される。

その様子に“待った!”をかけたのが、クスクス食に疑念を抱き、歴史ある“米食”にこだわり続けた日本有数の米どころ“越後”を拠点とする漢たち。

任侠「米田組」だった。

彼らはクスクスに侵された両国民を“米食”に戻すべく“炊き出し”を展開。これには自慢の炊き出し専用トラックを持参した“石原軍団”も共闘。争いの先に光が見えた瞬間だった。

~つづく~

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