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Cryings『Never Heaven』デグチユウトのセルフライナーノーツ

1.Never Heaven

アイディアとしては完全にFUGAZIやGang of Four的なサウンドやりたいなっていうのがありました。

ドラムとベースは後ろにグッと引くようなダブっぽいリズムで、レコーディングの時にはかなりタイム感にこだわり指示をした覚えがあります。

ダブっぽい、バックビートな感じにハマってた時期だったので。

ミックスダウンの時には朝倉さんにリファレンスとしてGang of Fourの『Entertainment!』を渡したので、ギターがあまりリヴァーヴ感のないサウンドで、それも気に入ってます。

最初の声はギターのジャガーです。

あ、おはようございまーす!

挨拶は大事です。

2.Friction

この曲は完全に勢いというか、ライブっぽさみたいなのを重視して録りましたね。

ファズの潰れ切ったようなサウンドが良い感じです。

歌もあえて息切れしてるようなニュアンスを残しています。

こういうロックナンバーに小細工はいりません。

いらないでしょう?

ところでこの曲に限らずアルバムのほとんどの曲ではZauber Pedalsのデラックスビックマフクローンを使いました。

友人が「初期のDinosaur Jr.が使ってたマフのクローンをプレゼントしてやる」と言ってZauber Pedalsさんに頼んで作ってくれたもので、すごく大事にしてます。

歌詞は自分たちの当時の状況と非常にリンクしてますね。

3.敗北主義者の歌

いきなりタイトルが不穏です。

曲としてはbloodthirsty butchersからインスパイアされた曲です。

確か作ったのはCryingsを結成して1年経つか経たないかくらいだったんじゃないでしょうか。

歌詞は、わりと直接的な表現も多いので言及を控えます。

ただ、今の時代にはコネクトする内容だと思います。

自分を安全圏に置いて正論を振りかざすのは簡単ですが、俺もこれ読んでるあなたも加害者じゃないかっていう意識が俺にはあります。

キリスト教における原罪という考えに近いかもしれません。

人の愚かさとはつまり、俺とあなたの愚かさなのです。

最後のぐわ〜っ!ていうノイズプレイにはZauber PedalsのベリンガーSF300モード1を使っています。

4.カチューシャ

個人的にとってもお気に入りの曲です。

曲を作った時はあまり意識してなかったですが、後で「あ、なんだかサニーデイ・サービスっぽい要素があるな」と思いました。

ローファイでキュートな楽曲を目指して録りましたね。

この曲ではジャガーはギターを弾いていません。

わりと今回のレコーディングではそういうパターンが多かったですね、なんというか、曖昧な部分を残したくなかった。

最初のバスドラの4カウントもファニーで好きです。

最後のコーラス?はもはや悪ふざけ。

でも録ってる時楽しかったです。ニャーニャー。

曲とは直接関係ない話ですが、ガールズ&パンツァーではカチューシャが1番好きです。

5.シベリアの海

この曲はCryingsより前にやってたバンドの頃からある曲です。

すごく人気があって、ライブではこれをやらないと納得しないお客さんがいました。

謎のエネルギーというか、オーラがある曲だと思います。

重苦しいオーラですけども。

最初と最後のフリーキーなよくわからない楽器の演奏にはネギーさんという方が参加してます。

何の楽器を使ってたか俺もよくわからない。

でもレコーディング時には色々と指示をさせて頂きました。

エンジニアさんに「デグチくん指示早すぎ!ネギーさん困ってる!」と注意されたのを覚えています。

反省

歌詞のモチーフは作曲時に描いてた自作マンガです。

シベリアタイムスという漫画でした。

6.幽霊みたいにぼやけて見えた

アルバムにちょっとしたインストがあるの好きなんです。

それもあまり派手じゃなくて、ちょっとした箸休め的な。

冷たいシベリアの海に入って疲れたでしょうから、穏やかなビーチで休みませんか?

そんな感じの曲です。

7.Ray Said

バーンと開放的なサウンドを目指しました。

俺のギターはビッグマフのサウンドとクランチ気味にしたサウンドを混ぜて芯を出してます。

苦しくてもきっと〜のとこのコードが好きですね。

ちょっぴりおオシャレ

サビのイエー!の連呼はNirvana『Lithium』のオマージュでもあります。

ちなみにRay Saidというタイトルですが、歌の中では実は「冷泉(れいぜい)」と言っています。

どういう意味でしょうか。考えてください。

8.Looser

ルーサーじゃなくてルーザーと読んでください。

綴りがLoserじゃないのはわざとです。

この曲は本当に自分しかギターを弾いていませんが、サウンドがすごく気に入っています。

大好きなDinosaur Jr.をリスペクトした曲で、ド頭のギターはダイナソーの『Freak Scene』のオマージュです。

潰れ切ったようなファズのサウンドが最高に好きなんです。

相変わらず歌詞が不穏ですね。

俺のインスピレーションやモチベーションについて歌った歌、なのかなあ。

9.Distortion

この曲を作った時のことはよく覚えてて、『君の名は。』って映画あったじゃないですか、あれを映画館で観て帰って速攻で作った曲ですね。

この曲のボーカルレコーディングは難しかったです。

自分の中でもイメージを捉えながら歌うのに苦労しました。

サウンドはエンジニアの朝倉さんがミックスダウンで素晴らしい仕事をしてくれましたね、ちょっとドリームポップみたいなサウンドです。

キラキラ、こういうのが終盤に1曲あると素敵だよね。

10.Sometime

パワーポップですね!

めちゃくちゃパワーポップ、それこそWeezerのような気持ちで演奏しました。

歌はちょっぴりロマンチックな感じを意識して。

夜になれば2人でさ、やらしいこともちょっとしよう

という歌詞があるのですが、これは大好きなWeekday Sleepersを意識して入れたフレーズです。

そういうナンセンスなフレーズでふふってなっちゃうようなの、なんか良いよなって。

この曲はレコーディングで個人的に1番イメージ通り録音できた曲かもしれません。

真っすぐなパワーポップは自分のルーツですから。

最後は「じゃあどこ行く?」って感じで。

どこも行けない時期、ありましたよね。

どっか行きましょうって、言いたかった。

Sometime いつかね。

最後に

『アルバム通して40分代』と考え10曲にしたので通して聴いて欲しいですね。

通して聞いて「どこ行く?」から「おはようございまーす!」に帰ってきて欲しいです。

何度も聴いて欲しいし、何度も聴く価値があるアルバム、だと思います。

いっぱい聴いてね。


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