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エール

若者の投票率が低いという。それが問題でなんとかして投票率をあげようと今回の衆議院選でもいくつかのキャンペーンが行われていた。その動き自体はいいことだと思うけれど、私個人的には若者の投票率をあげること自体は目的ではないと思っている。

若者が投票しない理由は、私にはなんだか想像ができる。自分が若者だった時、投票に積極的だったかといわれれば決してそんなことはないし、自分の若かった頃を振り返ってみると、今の若者はみんな優秀だなぁと思わされることの方が多い。

私は今年で49歳になる。若者からしたらおじさんもいいところで、下手をすると自分の親よりも年上だという人もたくさんいるかもしれない。実際、自分にも20歳になる息子がいて、その息子をみて自分の年齢をいつも痛感させられる。

話を少し戻してみるが、若者の投票率の低さが政治への無関心というのは恐らく間違いではないだろうが、平和な国である程度豊かに生活できている若者が政治へ無関心になるのはある意味自然なことであろうと思う。

若者は忙しい。

私なんかに比べて、若者は圧倒的に忙しいと思う。見た目には遊んでばかりに見えるかもしれないが、彼ら、彼女たちは自分の未来にむけて、必死で自分のアイデンティティを確立しようとしているし、自分の未来のために運命の人に巡り合おうとしているし、自分の夢のために様々な経験を積もうとしている。

私は学校や大学のいわゆる教科書で学ぶような勉強は、人生における勉強のほんの一部でしかないと考えている人間で、私自身そんなに学を修めた人間ではない。息子にも学校は5段階や10段階で評価をもらうようなこと以外のほうが、いや、ほうも大切な勉強だと常々言ってきた。そこでは小さな社会が存在していて、先生たちがきちんと保護してくれている。子供たちはそとの社会ではやってしまうとまずいような失敗をたくさんして、叱られて社会性やさまざまなものを学び成長していく。今はたくさんの賛否があるようだけれども、中学にはいり部活にはいれば小学生の時には経験しなかった先輩後輩という上下関係に出会う。それは先生と生徒でもなければ親と子とも違う、近い年代だけれども上の立場の人とのコミュニケーションを学んでいくし、自分が先輩になれば、逆に近い年代だけれども下の立場の人とのコミュニケーションを学ぶ。部活動にはもちろん、その部として活動をするという同じ目的を持った組織を体験し、その中で努力し協力して成果をあげるというその年代では他でなかなか経験できないようなことを学ぶことができる。そんな経験をどんどん積んでいくから子供の成長は驚くほど高い。親になって一番驚かされるのは子どもの成長で、親になって一番勉強させられるのは子どもによってだったと思う。

若者と呼ばれる人たちは例えば、大学生であったり、社会人の1年生であったりとまだまだ経験を積み重ねられる人たちだ。人によっての成熟の早さには個人差があるだろうけども、一つの目安として25歳まではとにかく新しい経験や知識をスポンジのように吸収していく時期で、それらを30歳までに自分の中で取捨選択、吟味、熟成させて自分というものを作り上げ、そこからはそれらを活かして社会なり、家族なり、また新しい世代たちが同じように成長できるように還元していく時期なんだろうと思う。その意味で私の中でのオトナの1年生は30歳と定義している。

若者と呼ばれている人たちはその意味では、まだオトナではない。オトナとなるために、いろいろな人や物事と出会い、経験値を積み重ねていく途中の人たちだ。成人し、社会にでれば学校のように守られた環境ではない。そこで失敗すれば即自分の責任として跳ね返ってくる。でも、それも経験として学ぶことができるのならば、それは糧として一回りあなたを大きくしてくれる。

私が若者の投票率を上げること自体は目的ではないといった理由も一つはそこにある。

若者は忙しい。成長するために忙しいのだ。

若者が投票するなとは決して言っていない。自分の考えで、自分の選択で投票することは素晴らしいことだ。ただ、それは自分の意思で、自分の考えで、自分の選択でということが条件になってくる。人に言われたから、投票率をあげるために行かされていく選挙にはあまり価値を私には感じられない。それよりは、今はたくさんの経験をして、失敗もして、自分が本当のオトナになった時、自信をもって投票できるようにするほうに私は価値を感じる。

あと一つ、若者の投票率が低いから、シルバー向けの政策ばかりになっていると言う意見がある。ふざけるな。若者のことを考えて、守り、導くのはオトナの責任だ。若者が投票しないからなんてことは理由になる訳がない。私を含め、オトナ世代はみんな、そのまた上のオトナたちに守られて導かれてやってきたのだから、我々はその次の世代、若者たちのことを考え、守り導く義務がある。それを投票しないからなんて若者のせいにすることは違う。若者の投票率の話題を聞くたびにそんなことを考える。若者の投票率があがらない理由は他にもあるけれど、ひとまずはここまでで。

若者と呼ばれる人たちへ。あなたたちは未来を生きるひとたちだ。未来を見ながらいろいろなことにチャレンジしていってほしい。それは人から見たら遊んでいると思われてもいい(一つだけ、遊んでいると怠けているは全く違う。遊ぶというのは積極的なチャレンジだ。怠けているのはあなたにプラスはない。怠けず、一生懸命遊んでほしい)今持っているパワーを大いに使って大きなオトナになって欲しい。そしてまた、あなた達が次の若者を守るオトナになってくれたらと願う。えらそうなことを言ってごめんなさい。


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