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【#ちいハコ】Act.1 ep.5 スナオな出会い

Act.1
“He is at the mercy of fate.”
episode 5

 あれ、

なんで僕今、ここに倒れているんだっけ…。

 椋介くん。それと、さっき知り合った、ワタナベエイジくん。

 そうか。この2人が僕をここに運んでくれたのか。

 気を失って、いたんだな。

 たしか、サラリーマン風の男が親子にぶつかりそうな勢いで…


 …そうだ、そんな感じだったな、思い出してきた。

 新幹線に乗るなんていつぶりだろう。なんか最近、システムが便利になったみたいだけど、僕こういうのを使いこなすの下手なんだよなぁ。

 本社に遅れないように、

 調べた通り、

 ここで下車だから、

 えーっと、このボタンを押せばいいんだな。

 これで…。

 あれ。間違えた。
 うわ、またやり直しじゃん。

 あぁ後ろに人並んでるなぁ。

 「先、どうぞ」
 「?」
 「あぁ、ちょっと新しいシステムになってから発券するの初めててで。いやー。ちゃんと調べたんですけどね。ちょっと駅員さんに聞いてみようかなって思って、で、後ろにこれだけの方が並んでるんで、ここは諦めて他の方に順番を譲るべきかと思って」
 などと、説明が長くなってしまった。もっと簡単に伝えることができたよな、と反省する。

 参ったな。いつもの日常にイレギュラーなことが加わると、どうも気が落ち着かない。ま、今日は早めに家を出たし、時間も…、

よし、大丈夫。

 あ、新幹線のチケットはあっちで発券するのか。通りで発券できないわけだ。

 なんだか今日は若者とか子連れの方が多いな。なにかイベントでもあるのかな。

 聞き覚えのある声もするな…

若者A(仮にそう呼ぶことにする)「俺さ今月バイトめっちゃ入っててさ。余裕で十万超えそうなんだよねぇ。」
若者B「えぐ。社畜じゃん。そんなペースだと税金引かれるぞ。」
若者A「まあなんとかなるやろ。」
若者B「他人事かよ。」
若者A「まあうちは実家太いし。親がなんとかしてくれるわ。」

 若者2人組の声が徐々に近づいてきてる。

若者B「これだからボンボンは。
…あれ?
…!侃先輩!」

 呼ばれた。やっぱり聞き覚えのある声だ。
 振り返ってみる。

若者B「お久しぶりです!火野です。ほら、ボランティアの活動でお世話になってた…」

 あ!そうだ!火野、椋介くんだ。
見ないうちにたくましい青年になってる…

 「椋介くんか!久しぶりだな」
 「ご無沙汰してます!」

 ほんと、何年ぶりだろう。僕が高校生の頃だから、えーっと何年前だっけ…?

 あ、椋介くんの隣にいる、友人かな?(お名前分かんないから若者Aくん、)なんか気まずい感じにさせちゃってるな。それもそうか。知らない人が自分の友人と話してる状況に直面するのは、気まずいよな。

 「…そちらの方は、椋介くんの友達かな?」
 椋介くんも状況に気づいてくれたみたいで、ご友人を紹介してくれた。
 「あ、すみません。コイツ、俺の友達のワタナベってヤツで。…エイジ、この方は俺の先輩のアキラ先輩だ。ボランティア活動してたときに知り合った、すげぇ意識の高い人で…」
「それは褒めているのか、バカにしているのか、分からないな…」
 意識高い系って言う時ってなんか、他人を担ぎ上げて小馬鹿にしてる気がするんだよなぁ…と思ってると、苦笑いしてしまった。それに気づいた椋介くんに、
 「もちろん、褒めているに決まってるじゃないですか。高校の時にお世話になっていた人のこと、バカにする訳ないですよ。」
 と、フォロー(?)させてしまった。

 「それもそうか…。ところでワタナベくん、」
 「…あ、はい」
 「椋介くんは一人でなんでも抱えるタイプだろ?」
 「え、あ、まぁ…はいそうですね。」

 少々急なパスだったか。ワタナベくんを困惑させてしまった…
 椋介くんが友人と一緒にいる時に遭遇することなんてないからな、この際に聞いておこう。
 と思っていたが、前振りできてなかったな…

 「どうしたエイジ、お前、俺といるときとテンション違いすぎないか」
  「初対面の人なんだから当たり前だろ。両方知っているお前はともかくとして。俺もこの人も初対面なんだぞ」

 それもそうだな。初対面だもんな。しかもワタナベくんからしたら歳上の人を相手にしてるんだよな

 「たしかに。…どうでもいいけど、この人って言い方とその態度なんか気になるな。直せ。」
 「は?なんか悪いのかよ。」
 「いや、普通に失礼だろ。常識的に考えて…。」

 ワタナベくんの態度が椋介くんにとって、なにか癇に障ったのかな。注意深く様子を見てなかったから、いまいち何がいけなかったのか分からないけど。

 「まあ、まあ…。そうピリピリするなよ2人とも。僕は何も気にしてないからさ…」
 「でも…。コイツずっと甘やかされて育ってきたせいで、いっつも他人(ひと)に対して偉そうで…。偉いのはお前じゃなくて親のほうで、お前はそれに甘えすぎなんだよって、いっつも思うんですよ。」
 「お前…、いつも俺のことそんな風に思ってたのかよ。」

 まずいな。

 なんか空気が悪い…

 苦手なんだよなぁこういうの。

 「もういいだろ、そのへんで。僕は内輪もめを見るのが嫌いなんだよ。見苦しいからもう、そのへんにしてくれ。」

 2人はお互いを見たあと僕に言った

 「…。すみません。」
 「謝るのは僕にじゃなくて、お互いにだ。僕は何も気にしてないと、言っただろ。だからお互いに対して、な。少し言葉の表現がよくなかったな。」

 「…エイジ悪い、俺言い過ぎたよ。ごめん。」
 「…いや、俺のほうこそ、悪かった。いつもお前に教えられてばっかだな。…一度も言ってなかったけど、…ありがとな。」
 「なんだよ、ありがとうって。そんなまっすぐ言うなよ。」
 「え?これも良くないのか?」
 「いや、そうじゃなくて…。照れるじゃねぇか、言わせんなよ」
 「…そうか、悪い」
 「お前は悪くねぇって。…なんか調子狂うな」
 「わっかんねぇなぁ。やっぱ俺ってそんなに常識ねぇのか」
 「常識ないのは、たしかにそうだ、」
 「あん?」
 「、だからさ、これからも俺が相棒でいてやるよ」
 「珍しく偉そうだな」
 「お前に言われたくねぇよ」

 そんな会話を交わしたのち、2人は笑い合った。

 よかった

 2人が内輪揉めで壊れなくて…

「分かれば…いいんだ。お2人、話の途中でごめん。僕もキミたちにちょっと、言い過ぎた。ごめんよ。」

 思わぬところからの謝罪で困惑したのか、謎の沈黙が3人の間に流れた。

 ふっ。

 なんか変な状況だな

 知らぬ間に頬が緩んでた
 それに呼応するように、2人が吹き出した

 「これで仲直り…だな。」
 「ええ、お騒がせしま…」

 「ったく早(はよ)しろや。こっちは大事な仕事があるんやぞ。どうせお前らのんきに遊びにでも行くだけやろ。俺に道譲れや」
 「なんですか、いきなり割り込んできて。子どもがケガしたら、どう責任取ってくれるんですか。」
 「知るか。いいから早(は)よどけや。こっちは急いでるんや。」

 改札の方で何やら言い争っている声がした。遠目から覗いてみたら、サラリーマン風の男と親子が揉めている。

 止めに行かないと…

 あの親子を男から離して、守らないと…

 ん?
なんだあの爺さん。あの人たちのもとに急に現れた。
 一体どこから出てきたんだ?

 「いけませんねぇ…、こんなことをしていては。」
 その言葉に、サラリーマン風の男が応える。
 「なんやお前!…どっから出てきやがった。」
 「めんどさい仕事を増やさないでくれ…、わしも忙しいんじゃ。」
 「テメェ、さっきから何言ってやが…。」

 男が言い終える前に、謎の爺さんが手に何やら書くような動作をしていた。

 「…これで、あんたのシナリオは終わりじゃよ。」
 「…!」

 えっ

 サラリーマン風の男が

 消えた…?

 消えたのか?

 なんで?

 何が起こったんだ…

 「えっ。今人が消えなかった?」
 「ウチも見た、何あれ」
 「はぁ?気のせいだろ。」
 「いや、俺も見たよ。」
 「なに何ぃ?なんかのイベント?」

 通行人たちもざわついてる

 うわ、めっちゃ人だかり

 身動きが取れない

「…ったく。キミたちの親は人使いが荒いねぇ。たかが上級ライターのくせして、偉い立場のワシにこんなことをさせるとは…。あの男、ペナルティじゃな。」

 …?
 あの爺さん、僕に向かって言ってた?、
 どういう意味だ?、、
 キミたちの親って、、、

 それに上級、、、、

 あれ?、、、、

 なんか、、、、、

 意識が、、、、、、

 遠のいていく、、、、、、


      to be continued…

*このシナリオはフィクションです。
実在の人物や団体・事件などとは
一切関係ありません。

Act.1
episode 6

2024

* * *

 …ここが1人目の違和感か。こんな筋書きを書いた覚えはない。
 やはりいるのか、私のシナリオに干渉する、上級の存在が…

                * * *

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