エリアトラウトやるだけならアジングロッドでいいよ。


はい。釣り好きおじさんです。例によってこの記事は釣りを始めたての初心者を対象としておりますので、ベテランの皆様からすれば反論はいくらでもあるかと思いますが、生暖かく見守っていただければ幸いです。

さて、表題の件ですが、ズバリ、「アジングちょっとやってみて他のジャンルに手を出したい」、「トラウトやってみたいけどロッドがない」という方に対して、「アジングロッドでいいよ」という趣旨です。

「ええ?全然違うジャンルだけど!?」と思われた方もご安心ください。以下に、なぜアジングロッドがトラウトロッドの代用になるか、歴史的背景を踏まえつつ、今のアジングロッドが性能的にトラウトロッドの要素を兼ね備えていることをご説明します。
多くの人が納得していただける内容となるよう、頑張って書いてみます。

アジングロッド出現前夜


時間を2005年に戻しましょう。この頃、ルアー釣り業界ではある大事件がおきました。そう。「特定外来種法」です。この法律は実は外来種の釣りを罰するものではないのですが、放流や移入が禁止されて、養殖バスの放流により維持されていた多くの釣り場が廃れることにつながりました。

他方、この法律の施行の流れにより、各地方自治体でリリース禁止条例が制定されました。こちらももちろん、外来種の釣りを禁止するわけではなく、罰則もないことが多いのですが、とはいえリリース自体に条例からNOを突きつけられたという事実は拭い去れず、多くのアングラーが他の釣りに移ることになりました。

このころルアー業界のメインビジネスだったバス釣りは、対象となるブラックバスが外来種の筆頭株であったことから徐々に衰退。ルアーマンたちは別のターゲットの開拓に勤しむことになります。

白羽の矢がたったメバル

バスアングラーの受け皿として真っ先に注目されたのが実はメバルでした。「アジは?」となった方、もう少しお待ちください。

メバルが注目された理由は単純で、「ルアーに反応する魚として当時から知られていた」からです。
メバルは2-3月ごろに各地の海岸線に産卵のために接岸しますが、この時期はちょうどバス釣りが難しい、いわゆる厳寒期にあたります。そのため、メバルの釣りが注目される前から一部のバスアングラーがオフシーズンの余暇として遊んでいました。

また、メバルがバスルアー(例えばベビーポッパーとかレッドペッパー)で割りかし釣れることもあり、早い時期からルアーで釣れるターゲットとして認識されておりました。

そのため、日本原初のソルトルアーブランドである月下美人も元々はメバル用をコンセプトとしておりました。

メバリングロッド

メバルの釣り(メバリング)が本格化するにつれ、専用のロッドの設計がなされるようになりました。

前述の通り、元々はバスアングラーの移行先としての意味合いが強かったため、メバリングロッドはある程度釣りに慣れた上級者向けの設計になっておりました。

具体的には、夜間の磯やゴロタでの使用を前提として、取り込みやファイトがしやすいロングロッドとしての設計が基準となりました。しかし、ロングロッドは投げにくい、アクションをつけにくいという難点があり、初心者に使いやすいものではなかったと言えます。

また、メバリング人口が増えるにつれ、メバルの性質として、「細長いワームのただ巻きに最も反応する」ということがわかってきました。そこで、巻きに食いついたメバルを乗せるための、「スローテーパーで柔らかい竿」として作られることになります。初心者向けに説明すると、巻いてきたワームを追尾して食いついたメバルがしっかり針まで食い切ることを目指し、のっぺりとした、しっかり曲がり切る竿を作ったということです。

メバリングの易化


メバリングが本格化するにつれ起きた変化として、メソッドの確立とフィールドの広がりがあります。前述の通り、初めは夜間に磯に出向いてやる上級者向けの釣りだったメバリングですが、漁港の常夜灯や堤防の際など、初心者でもやりやすい場所で釣れるということがわかってきました。

それにより、初心者向けのロッドも出るようになりました。初めは8フィート近いロッドを振り回す釣りだったのが、7フィート、ものによっては6フィート台のロッドを使ったライトなゲームへと変化しました。ご参考までに、バスロッドの入門ロッドが6フィート標準なので、大分初心者に優しい設計になったと言えます。

アジングの出現

さて、メバリング人口が増えると起きることは、外道が釣れるようになってくるということです。その外道の筆頭がまさにアジで、当時はアジといえばメバリングの合間になぜか釣れてしまう魚でした。

アジは古来より釣りの対象魚ではありましたが、サビキやオキアミで釣られることが多く、ルアーの対象と思われていませんでした。なぜなら、アジはその一生のほとんどをプランクトンを食べて生活しており、フィッシュイーターでないのだからルアーでは釣れないだろうというのが大方の見方だったからです。例外的に、外海のジギングでアジを狙う釣りはあったのですが、こちらのアジは40センチクラスの大アジであり、堤防から釣れる20センチクラスがルアーで釣れるなんて大半の人は思っていませんでした。

とはいえ、あまりにもメバリングでアジがかかってくるので、「もしかしてアジもルアーでいけちゃうんじゃない?」と思った釣具メーカーはアジ用のルアーを出すようになり、着実に釣果実績を積み上げていくことになります。

アジングというジャンルの確立

こうして、アジがルアーで釣れる魚として認識され始めると、アジングというジャンルとして正式に走り出すことになります。しかし、ある大問題がありました。
それは、メバリングロッドでアジは釣りにくいというものです。

アジングロッドの出現

先述の通り、メバルは巻きに反応する魚です。そして、メバリングロッドは巻きで釣りやすくするための設計がなされたロッドでした。

しかし、アジはというと、ただ巻きよりは、ゆったりとルアーを沈めるフォールの釣りに対して反応がいいという性質を持っています。

そのため、フォール中のラインテンションがほとんど掛かっていない状態でアタリを取って即合わせする方が釣果は伸びる魚になります。メバリングロッドのような柔らかいロッドでは感度が悪くアタリが取れないし、スローなテーパーが邪魔して即合わせが難しく、アジを数釣るのに不向きでした。

そこで求められたのは、
1.アタリが取れる高い感度
2.合わせやすい硬いテーパー
でした。

そのため、初期のアジングロッドは、メバリングロッドに対抗するかのように、硬くてシャキッとした竿が多い印象でした。

さて、シャキッとした高感度ロッドといえば、設計としてはバス用のフィネスロッドに近いものになります。そして、それを実現する構造としては、肉厚な中空のロッドが採用されることになります。

2010年ごろがアジングの黎明期といけますが、当時、アジングロッドといえば中空(チューブラー)ロッドで硬め設計が標準でした。

アジングロッドの進化


こうして、高感度ロッドとして出発したアジングロッドですが、アジの口が柔らかくて切れやすいこと、即合わせが必要とはいえ、ルアーを弾かれない程度には曲がってくれる竿が要求されるようになったことから更なる進化を遂げます。

結論から言えば、ソリッドティップの出現です。ソリッドティップというのは中空構造だったロッドの先端部分だけ中空ではなく中身の詰まった構造にすることで、強度をそのままに細く繊細な穂先を実現するものです。これの利点は、大変曲がりやすいのだけど、しっかり合わせると中空になった硬いチューブラー部分に撃力が加わり、しっかりとハリが掛かるという、柔と剛を併せ持つロッドを作れるという点にあります。また、全体としては硬めの竿にできるため感度を全体がチューブラーの竿並みに保つこともできました。

さらに、副産物として、穂先がしっかり曲がる特性から、巻きの釣りも成立でき、メバルにも対応可能なロッドに仕上がりました。そのため、この時期からメバリングロッドは徐々にその役割を終えることになります。

また、当時はメバリングロッドの流れを汲んで7フィート台と長めの設計が多かったアジングロッドですが、堤防の際で釣れてしまうために磯やゴロタを回避しながらファイトする必要がないこと、標準的に使われるのが1,2gのジグヘッドで長い竿にして(遠心力を稼いで飛距離を伸ばして)も大して飛距離が稼げないことから徐々にショートロッド化が進んでいきます。今では5.5フィートのアジングロッドも出回っており、8フィート台のロッドはフロートリグを駆使した大遠投など一部特殊な条件下をのぞいてほとんど採用されなくなりました。

一方のトラウトロッド


他方、トラウトロッドはというと、基本的にはメバルと同様の巻きの釣りの設計になります。これはなぜかというと、トラウトの釣りは基本的にスプーンといわれる金属片に針をつけたルアーを巻き、水流により起きるヒラヒラとした動きで食わせる釣りだからです。

そのため、巻いてきたルアーをしっかりと魚が食い込むように、トラウトロッドは柔らかく、のっぺりとした乗せやすい竿がメインです。また、トラウト釣り場は人口が多く、隣の釣り人と5メートルも離れていないことも多々あり、ロングロッドは事故の元になるためショートロッドが標準的です。具体的には5.0-6.0フィートというところです。

アジングロッドとトラウトロッドの親和性


アジングロッドの進化というテーマで前述の通り、現在のアジングロッドはショートロッド、高感度、けれども乗せも可能という至れり尽せりの設計となっております。

これはつまり、ショートロッドで乗せが可能なトラウトロッドに対して、高感度というブーストがかかっていることを意味し、総合能力においてトラウトロッドを上回ります。

また、昨今のトラウトゲームで標準的な1g前後のスプーンも、元々1g前後のルアーを投げることを前提に作られたアジングロッドであれば問題なく扱えてしまいます。

さらに、近年はコロナなどでアウトドアが注目されるにつれ、初心者でも安全安心に楽しめるトラウトゲームの人口が増加していて、トラウトゲームもシビアになってきています。そこで、釣果を伸ばすためにはその日に一番合ったルアーを選択する必要があり、トラウトからのあらゆる反応を把握したいというのがあります。そのためには、トラウトの甘噛みを手元に伝える高感度が有効なのです。とくに、プールアジングのように水が濁って魚の様子が全く見えないような釣り場では、手元に伝わる感覚だけが頼りになるので、感度がないと何もできないということすらあります。

実際、最新のトラウトロッドでは高感度な設計が増えていますし、それに伴って硬くてシャッキリするが故に乗せにくくなる欠点を補うためにソリッドティップが採用されることも多々あります。

であれば、元より乗せやすいソリッドでしかも高感度なアジングロッドを使う方がよっぽど理にかなっていると言えます。

唯一、トラウトロッドがアジングロッドに勝っている点は、やはりトラウトロッドが元々乗せることを追求した竿なので、トーナメントなどで「この1匹が取れれば優勝」みたいな状況において切り札となりうるというところだと思います。

逆に言えば、トーナメントのようなシビアな状況を除き、アジングロッドはトラウトロッドに求められる全ての要素を兼ね備えていると言えます。

まとめ


アジングロッドの進化とトラウトロッドに求められる性能について述べました。

読んでいただいた方はアジングロッドがいかにトラウト向きになっているかがお分かりいただけたかと思います。

逆に、最新がトラウトロッドはアジングロッドに近づいているという見方も可能で、トラウトロッドを持っていてアジングに挑戦したいという方は、トラウトロッドでやってみるのもありだと思います。




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