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根っことつながる旅に出よう①:日本みっけ旅のはじまり

はじめまして。岡野春樹です。

長良川の源流域である岐阜県郡上市に家族4人で暮らし、川で魚とったり、畑やったり、山でキノコとったりしてます。

6年ほど前に、日本を楽しむ旅をつくる  Deep Japan Labという団体を仲間たちと立ち上げ、細々と、ニヤニヤと、続けてきました。

コロナの制限のもと、みんなの身体が縮こまりがちな今だからこそ、
なぜ僕らが旅をつづけているのか、どんな旅をつづけているのかをお伝えして、旅に出ることを全力でおすすめしたいなと思い、この記事をかきます。

日本みっけ旅のはじまり

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(写真:伊豆での『コミュニティラーニングツアー』の様子)

僕が仲間たちと旅をはじめるきっかけは、社会人2年目のこと。
一度体調を崩して休職してからプールで泳ぐようになり、
水と触れてさえいれば、自分をいい状態に戻せる!!ということに気づいて、調子に乗っていたころでした。

ある日、友人から、

「春樹さ、水と触れてればどんな環境も楽しめるって言ってるけど、逆に、”もしこんなことが起きたら、人生後悔する!”ってことないの?

ということを聞かれ、ぼんやり考えながら過ごしていたのですが、
「小さいころから仲良くて、歌人・国文学者の祖父から、何も教えてもらわないまま、祖父が死んじゃったら後悔するかも。」

と、思うようになりました。
今思えばこれが、「日本ってなんだろう?」という問いのはじまりであり、
日本という範囲の、風土と文化への探求のはじまりだったように思います。

ちょうどその頃、祖父の話を聞いてみたいという友人が沢山いたこともあり、バスをチャーターして25人程度で伊豆の祖父のもとに旅をしました。
祖父が身を置いた伊豆という地を存分に味わいながら、
朗らかで元気な若者たちで祖父の話を聞いて、
明るい未来を考えようじゃないか、そんな趣旨のツアーでした。

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伊豆の豊かな自然を味わいながら、バスでにぎやかに祖父の待つ家に到着した20代-30代の若者たち。
しかし、いよいよ始まった祖父の、途切れない、戦争の話、師との出会いの話、、、やがて春風に誘われうとうとと、、、

夜になり、朗らかな若者たちはBBQをしていた。
あるメンバーが「最後の春樹の要約した説明だけでよかったよね」という素直すぎる一言を放った。。

その一言がきっかけで、みんな思っていることを話しはじめた。
「でも、おじいちゃんの連歌の話は、本当に楽しそうだったよね。」
「明日最初におじいちゃんに質問してみたい!」
「質問というより、素直に『連歌やらせてほしいです!』って言ってみよう」
「あと、『歌・言葉の力は恋愛のとき最も発揮される』的な話があったけど、だったら『岡野先生のプロポーズの言葉はなんですか?』って聞いてみよう!笑」

などとワイワイ。
翌日、プロポーズの質問を、誰もがため息を吐く見事な答えで返した祖父は、続けて
「簡易的ではあるけれども、連歌の触りだけやってみようか。」と、
嬉しそうに答えた。

海原に 轟き渡る 波の音

という上の句を、即興で詠んだ祖父は、
「この句に、是非この伊豆の旅を思い返して、下の句をつけてみてください」
と、ニコニコしながら伝えた。
そこから始まった、なんちゃって連歌大会。
全員少し緊張しながらそれぞれなりの下の句をつくる。

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(全員の句の中から最も印象に残ったものを一つ選び、講評する祖父)

「文語が使えなくなってしまった日本の若者が嘆かわしい」と、日ごろから話していた祖父が、生い立ちも国籍もバラバラな若者たちの会を、いつしか楽しそうに、仕切っていた。

帰りのバスでのこと、高速道路で長い渋滞にハマっていたときに、
誰からともなく、
「暇だなあ・・・連歌しようぜ

そこからは昼間では句をつくれなかったアメリカ人の仲間の句や、
卑猥な言葉をうまく練り込んだ̪シモの句まで飛び出す。
げらげらと笑いながらも、みんなが本気で言葉を、日本語を、楽しんでいた。

後日、祖父から「あれだけ朗らかな若者たちが、素直に学びにきてくれたことが嬉しかった」と電話があった。

大人になると、本当は知りたくてもなかなか素直に聞きづらい「日本のこと」がある。

祖父のような先達は、普段結構、
「伝わる人にだけ伝わればよい」と、思っている節がある。

それでも、若者が、朗らかに、謙虚に、そして素直に、
「教えてください!」と、
その先達から学ぼうとするとき、こんなにも気持ちの良い「受け渡し」が行われる、ということに感銘を受けた。

このときの旅をいま振り返ると、当初、みんながぼんやりと持っていた問いは、
「日本語ってなんだろう?」
「和歌ってなんだろう?」
というようなものだったように思う。

こうした素朴な問いをもとに、仲間たちと、
知らなかった日本に出会い、知らなかった自分に出会うような旅をしていこう、そんなことを考えたのが、日本みっけ旅のきっかけだった。

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(解散時にはちょっとなぜか、感極まるw)

文章:岡野春樹