見出し画像

砂浜の記憶

祖父母の家 常呂町
丘を越えればオホーツクの海が見える
きょうだいたちといとこたちと
砂浜を駆け巡った
茶けて濁った泡立ちと
海の呼吸で静まった
砂浜をふと見下ろすと
足跡たちがこちらを見ている
気づけば無数にこちらを見ている
幼い私は怖くなり
家へともどり祖母の裾を
ぎゅっと掴んで離せない
優しく微笑む祖母の顔
何があったと聞いてくる
足跡が見てくると私は言う
祖母は笑いもせず話を聞いて
えらいなお前はと言う
何がえらいのばあちゃん
私は聞くと
そりゃお前に見つけて欲しかったんだべ
海にいのち奪われた
そういう人がたくさんいる
海にさらわれたら どこさがしてもいね
そういう人がたくさんいる
お前が見つけたんだ だからえらいねえ
そう言って小さい私の頭を撫でる
私がもう一度砂浜に行くと
不思議と足跡が無くなって
海岸がまた海の呼吸で静かになった
旱りがやわらぎ 陽が沈むと
きらきら光った いのちの音

いいなと思ったら応援しよう!