昔話

そのうち文に残しておこうと思っていた記憶。

私は12~3年程前にオンラインゲームに没頭していた。
PCが普及する前の時代の事なので、当時初めてのPCゲーム。
顔も知らない人とゲームをするという事が衝撃的だった。
そのゲームの中にはギルドというシステムがあった。
要するにゲーム内でグループを作り、そこにみんなで所属をする。
やる気に満ち溢れていたのと、他人と会話するのが好きだった私は、そのギルドのリーダーになった。
最初は10人にも満たない小さなギルドだったが、時間が経つにつれて40人近くにまで大きくなった。

当時20歳そこらの私は、ゲームの中だけとはいえ40人もの人が集うコミュニティを纏めた事が無かったので、どう立ち回ればいいか常に模索していた。
その中で、同じギルド内の人にはみな平等に接するという決まりを、自分の中に課していた。合っていたかどうかは未だに曖昧である。

そんな頃に、別のギルドのリーダーをやっていた人と仲良くなった。
規模は大きくなかったが、とても良いギルドだった。

仮にその人はLとしよう。
私よりも長くギルドのリーダーを務めていたので、ギルドの運営方法などの話をよく聞いてもらっていた。
日に日に会話をする機会が増え、仲良くなっていく速度も加速していた。

このオンラインゲームには対人要素があり、毎週日曜日にギルドvsギルドの攻城戦が行われていた。
簡単に説明すると、MAP内に砦があり、制限時間までに守り切ればその砦の所有者となれるといった具合である。
報酬のような物があり、それなりの人数のいるギルドは皆参加していた。
当然私のギルドも、Lのギルドもその戦いには毎週参加していた。
ギルドの規模が違うので、普段はギルド同士で戦う事は無かった。
友好・中立・対立なんて言葉があるが、私とLのギルドは、それでなぞらえると友好関係にあったので、戦場では戦わないと取り決めていた。

しかし、ある時ついに一戦を交える事となる。
その日の攻城戦はとても調子が悪く、砦を守れないでいた。
時間終了まであと僅か、焦っていた私は自分達よりも規模の小さいギルドが守っている砦を狙う事にした。
偵察に行く時間も殆ど無く、普段Lのギルドが守っている砦に決め打ちをして向かう。案の定Lのギルドはその砦を守っていた。
一瞬の躊躇はあったが、すぐにGOサイン。
そこからは数の暴力で、一瞬で砦を制圧して時間終了を迎えた。
攻城戦が終わった後、当然Lからクレームが入った。
協定を破った事と何ら変わりないので、当然のクレームだ。
自分のしてしまった事の過ちから来る自責の念と、何もかもを投げ出したくなってしまうような感情から、それを機にそのゲームを休止する事にした。
今思うと多少の疑問は残るが、私が休止する事によってLも満足し、私のギルドも変わらず活動していけるこの形はベストだと思っていた。

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