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濱口竜介『天国はまだ遠い』

『偶然と想像』公開を記念した“短編映画を短編たらしめる“というトークイベントに伴って、濱口竜介が2016年に制作した「天国はまだ遠い」が公開されている。昨年ごろにVimeoで無料公開されて以来の再鑑賞。以下あらすじ。

17歳で通り魔によって殺害されてから女子高生の姿を保ったままの幽霊・三月と、霊感を持ち三月の幽霊を憑依させることができる派遣社員・雄三の元に、三月の妹である五月からインタビューの依頼が舞い込む。五月は姉の事件に関するドキュメンタリー作品の制作のために、事件後に姉を憑依させたことが噂となった雄三から話を聞くこととなる。
  •  雄三の仕事がAVのモザイク付けであるという点。「見えるもの」を「見えないもの」へと変換する。

  •  通り魔によって理不尽に命を奪われる存在を三月と名づける。東日本大震災の暗示。

  • 三月と雄三のダンス。限りなく接近するものの、接触が不可能な他者であることの示唆。

  • カフェにおける雄三と五月の会話。途中から三月が両者の間に位置するが五月がそれに気づくことはない。

  • インタビューにおける雄三の「憑依」。「見えないもの」を「見えるもの」へと変換する。

  • インタビューの場面における、三月の様子。寝ている?憑依は本当に行われたか?インタビューの内容は狂言ではないか?

  • 雄三と五月の抱擁。仮に憑依が達成されているとすれば、ダンスの場面で示された接触の不可能性は克服されたことになる。

  • 雨が降っても濡れることのない幽霊に、傘を差し出すという行為。

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