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再録「あのときアレは高かった」〜おままごとの道具「ママレンジ」8200円

「あれ、欲しい!」

そう思うが月々のお小遣いでは到底手が出ない。恐る恐るおかんに相談してみたら、「そんなのおとうさんに言いなさい!」とピシャリ。
そりゃ、直接言えるのなら、おかんに相談しませんわな……。
と、そんなわけで、クラスの中の金持ちのボンだけが持っているのを横目に見ながら、泣く泣くあきらめたあの日の思い出。
そう、あの時あれは高かったのだ。

昭和の、子供には「ちょっと手の出しにくい」ベストセラー商品。
当時の価格や時代背景を探りながら、その魅力を語る。

     ◇

今回は少し目先を変え、女子向け商品。

アサヒ玩具から1969(昭和44)年に発売された「ママレンジ」である。

妹がいた私の家にはこの商品があり、子ども心に「オンナとは変わったもので遊ぶいきものだ」と思ったきっかけのような商品である。

価格は2500円。消費者物価指数で現在の価格に直すと約8200円もする。

台所のミニュチュアと考えればこんなもんなのかもしれないが、「おままごと」の道具と考えると、高いというか、ようやるわというか。だが、そんな心配もよそに、この商品は、1年で17万個以上販売されるヒット商品となった。

同シリーズで、1975年に「ママナガシ」という、より台所チックな商品が発売された。たぶん、これも家にあった。「そんなに家事がしたいんかい!」と突っ込みたくなるほど奇妙な商品群だったが、「男が外で稼いで、女は家で家事をする」という当時の風潮からすれば、素直に「かわいらしい」商品であったのだと思う。

しかし、電熱があったり、子どもに「口に入れるもの」を作らせるなど、これも今の価値観からすれば、クレーム・リスクが漂う商品だ。

だが、そこはおおらかな昭和の風景。そういう私も、妹が作ったホットケーキ状の小麦粉の塊を食べさせられながら、それなりに楽しかったのを何となく記憶している。

昔の女子、われわれと時代をともにした「並走者の皆様」はこの商品をどんな思いで眺めていたのだろうか。ちょっと聞いてみたい。そんな商品である。

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