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再録「あのときアレは神だった」〜アグネス・チャン

テレビアニメ、漫画、スポーツ、アイドル歌手などなど。実在の人物から架空のものまで、昭和にはさまざまな「キャラクター」が存在した。

われわれを楽しませたあの「神」のようなキャラクターたち。

彼ら、彼女たちの背後にはどんな時代が輝いていたのだろうか。

懐かしくて切ない、時代の「神」の軌跡を振り返る。

(2015年より、夕刊フジにて掲載)


初回の「神」はアグネス・チャンである。

最近、中学生からネット上で脅迫を受けたと話題になった。

「あの人なにもしてないのに、ユニセフでもうけて許せない」という言いがかりをつけられたわけだが、アグネスのデビュー曲『ひなげしの花』の発売は1972年。2000年あたりに生まれた現代の中学生はその神ぶりを知る由もなく、もしかするとその両親でさえ、名前を聞いたことがある程度なのかもしれない。

1972年、田中角栄政権発足、日本列島改造にわいたこの年、白いハイソックスの清純派スタイルとたどたどしい日本語で、アグネスは一躍人気者となった。

その年の日中共同声明やパンダの上野動物園デビューとの関連性は曖昧だが、とにかく、あどけない香港出身のガイジン女子に、日本中のガキが「萌(も)えた」のであった。

彼女はいわば、外タレアイドルのはしりであり、昭和の「アジアンビューティー」のワンアイコンだった。だが、たぶんいま振り返るとその存在意味は理解しがたく、すべてがたどたどしく映る。

『ひなげしの花』に続き、『草原の輝き』も大ヒットした。そこには、たぶん、今の中学生には永遠に伝わらない、牧歌的な善良さがあふれていた。(中丸謙一朗)


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