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再録「あのときアレは高かった」〜サンダーバードの基地(8000円)

「あれ、欲しい!」

そう思うが月々のお小遣いでは到底手が出ない。恐る恐るおかんに相談してみたら、「そんなのおとうさんに言いなさい!」とピシャリ。
そりゃ、直接言えるのなら、おかんに相談しませんわな……。
と、そんなわけで、クラスの中の金持ちのボンだけが持っているのを横目に見ながら、泣く泣くあきらめたあの日の思い出。
そう、あの時あれは高かったのだ。

昭和の、子供には「ちょっと手の出しにくい」ベストセラー商品。
当時の価格や時代背景を探りながら、その魅力を語る。

     ◇

「サンダーバード」の当時の人気は、いまさら解説する必要はないだろう。1号から5号まで、各マシーンのかっこよさもさることながら、その「乗り込む」際の「からくり」がまたかっこいい。

スコット、ジョン、アランらの各隊員が自分のポートレートが掲げられたイスの前に座り、ひっくり返ったかと思ったら、するすると「通路」を滑りマシーンのコックピットへ(このへん、ものすごく曖昧)。この中途半端なハイテク感ほしさに、滑り台を見つけると仰向けにひっくり返ったかと思うと地面に滑り降り、後頭部をずずず。そんな子供は決して私だけではなかったはずだ。

今回の商品は、今井科学工業のプラモデル「サンダーバード秘密基地」である。

昭和43(1968)年の発売で、定価は2200円。2号発射時のパームツリーが倒れる「からくり」や、ボタンを押すとプールがパカっと割れて1号が勢いよく発射される「ゆるいサプライズ」、びよーんと針金で空中に浮かんでいる宇宙船(5号)など、そのすべての光景が思い出の中で輝く。

消費者物価指数で現代の価格に直すと約7700円。

子供のプラモデルにしてはかなりの値段である。でも、そこは昔の子供。変に根が純朴だから、これさえ与えとけば黙って畳の上でまる1日遊んでる。そういう意味では本当はものすごくコスパのいいおもちゃだったのかもしれない。

残念ながら、ウチにはこの基地はなかった。あるのは、畳のへりにミニカーを並べた頭の中の「幻想の基地」だけであった。


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