見出し画像

再録「あのときアレは高かった」〜2万円もした昭和の謎の棒、ブルワーカー

「あれ、欲しい!」

そう思うが月々のお小遣いでは到底手が出ない。恐る恐るおかんに相談してみたら、「そんなのおとうさんに言いなさい!」とピシャリ。
そりゃ、直接言えるのなら、おかんに相談しませんわな……。
と、そんなわけで、クラスの中の金持ちのボンだけが持っているのを横目に見ながら、泣く泣くあきらめたあの日の思い出。
そう、あの時あれは高かったのだ。

昭和の、子供には「ちょっと手の出しにくい」ベストセラー商品。
当時の価格や時代背景を探りながら、その魅力を語る。

     ◇

安倍首相(合掌!)は成長戦略への起爆剤として三本の矢を用意した。高度経済成長から近年に至るまで、我々の生活には忘れられない三本の矢(棒)があった。

後年、物干し竿の代わりを果たすことになった「ぶら下がり健康器」、ブルブルと身体を震わせ、最後には天井の照明を叩き割ることがお約束であった「ボディブレード」、そしてもうひとつが、今回ご紹介する「ブルワーカー」である。

ブルワーカーはドイツで発明された「科学の体育道具」。押したり引っ張ったりしながら筋力増強を図る夢のようなマシーンだ。

1960年代の後半から通販などを通じて日本でも発売されるようになった。74(昭和49)年当時の広告によると価格は9800円。消費者物価指数で現在の価格に直すと約2万円である。

同じく置物系健康器具の大物「ジョーバ」並みの破壊力はないが、短めの物干し竿候補としては、なかなか立派な値段である。

私たちは、少年雑誌の広告に載っていたコレを欲しがった。広告の写真やイラストで描かれるガイジンのように「カッコよく」なりたかったからだ。買ってから成果を出すためにけっこうな「努力」がいるなんてことはさっぱりわからずに、ただただそれを欲しがった。

冷蔵庫を買えば生活が豊かになり、テレビを買えばお茶の間が楽しくなる。高度経済成長時代に見られた、へんな「メーカー信奉」である。

かくして、日本の家庭には三本の矢が奉納された。これらは破魔矢と同じ、大事な信仰対象として、いつまでも大事にされていくに違いない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?