見出し画像

鑿(のみ)を持つ (2022/6/14)

記事の長さはおよそ2,000文字。3~4分程度で読めます。

【NIKKEI The STYLE】
天空を目指した塔の未来
風雪という名の鑿(のみ)が刻む
高さ競い合うその先に

2022/6/12(日)日本経済新聞朝刊

記事のポイント

  • バベルの塔の昔から、塔は人とともにそびえ、時代を見下ろしてきた。高みを目指すその姿に人は素朴な畏敬の念を抱き、夢と希望を重ねた。

  • 新型コロナウイルス禍を経た今、高さに優越を、集積に効率を求める発想が揺らぎ、塔に変わるシンボルを模索する動きが始まっている。

  • 「北海道百年記念塔」は野幌森林公園に1970年に完成した。時代は高度成長の真っただ中、完成の2年後には札幌冬季五輪の開催を控えていた。どこまでも上を目指す塔のデザインから、成長への確信に満ちた高揚感が伝わってくる。

  • だが、風雪は想定以上に過酷で百年記念塔も次第に外壁の剥落などが目立つようになる。管理する北海道は解体の方針を固め、今秋にも工事が始まる。

  • もう一つの「塔」は札幌芸術の森野外美術館の丘陵に静かに立つ「四つの風」。こちらは自然のなすがままに身をまかせ、36年がたつ。作者は砂澤ビッキ。神秘的でダイナミックな木彫作品を残したアイヌ民族の造形作家。

  • 樹皮をむき鑿を入れただけの生の木である。雨風や雪の直撃を受ける。2010年の真夏の夜、傾いていた1本がついに力尽きた。翌年にまた1本。13年に3本目が倒れ、今は西向きの1本だけが残る。

  • 生きているものが衰退し、崩壊していくのは至極自然である。それをさらに再構成していく。自然は、ここに立った作品に、風雪という名の鑿を加えてゆくはずである」砂澤ビッキ

  • 最新の素材と技術を駆使し、高みと永続を目指した鉄の塔に風雪が加えた鑿は予想以上に過酷だった。「四つの風」はそれを最初から受け入れ、土に還る。人や自然との関わりも終焉の流儀も異なるが、そのシルエットは人の心で生き続けるだろう。

  • 1783年、フランスのモンゴルフィエ兄弟が熱気球の有人飛行に成功し、空から俯瞰する視線を手に入れた。欧州には360度の風景画を見せるパノラマ館が登場。山中や丘陵には展望の塔が相次いで建ち、高みから見晴らす欲望をかき立てた。効率を求める資本主義の発展と技術革新を下支えに、人はさらに上を目指した。

  • 1853年、ニューヨーク万国博覧会に「エレベーター」が登場し「塔(タワー)」の高さ競争が加速した。現在競争の先頭に立つのはドバイのブルジュ・ハリファ(828メートル)

  • 衰えを知らない上昇志向の風向きに変化の兆しもある。前回大阪で開かれた万博はエキスポタワーや太陽の塔がシンボルだったが、次の2025年万博には塔やタワーはない。

  • グーグルなど世界の有力企業では、低層で分散型の本社ビルが主流になっている。

  • バベルの塔の物語。人々は天に届く塔の建設を始めた。その試みにくぎを刺そうと神は、人が話す言葉を複数に分け、互いに意思疎通できないようにした。その結果人は離散し、塔は崩壊したとも言われる。タワーひしめく日本の大都市のスカイライン。「創世記」が伝える逸話が、教訓となるだろうか。

**********************


この記事を読んでいて、わたしには「塔」が「人間」のことに思えてなりませんでした。


◆技術革新を下支えに、人はさらに上を目指す

「塔」が資本主義の発展と技術革新を下支えに高層化を目指したのと同様に、「人」は医療という技術革新によって更なる長寿を目指しています。
800mを超える「塔」ができたように、人間の寿命も100年に迫ろうとしています。


◆世界の有力企業では、低層で分散型の本社ビルが主流

「塔」が高層化を追求していたところから、低層で分散型に移行しているように、「人(組織)」も世界的には、これまでのような中央集権的で階層型の組織から、フラットで分散型が主流になってきています。
一方日本では、各所に変化の兆しは見られるものの、いまだに「塔」も「組織」も中央集権で階層型のままです。


◆風雪という名の鑿が加えられる

「塔」が立っていれば、自然の風雪にさらされるのと同様に、「人間」も生きていれば風雪の鑿が容赦なく襲い掛かり徐々に衰退し、崩壊していくのは至極自然なことですね。


多くの共通点が見られた「塔」と「人間」ですが、大きく違うところがひとつあります。それは、

人間は「自分で自分に鑿を入れることができる」、
そして「自分の望むような造形をつくることができる」

ことです。


ただ風雪にさらされるままに無為な日々を過ごして衰退・崩壊するに任せるのか、それとも自分の望む造形を彫りだすことを目指して、毎日少しづつでも自身に鑿を入れ続けていくのか

鑿のひと彫りはごくわずかなものでも、彫り続けることによって、いずれ望む造形が彫りだされるのを信じて。



本投稿は日経新聞に記載された記事を読んで、
私が感じたこと、考えたことについて記載しています。

みなさんの考えるヒントになれば嬉しいです。
「マガジン」にも保存しています。

「学びをよろこびに、人生にリーダシップを」
ディアログ 小川



美味しいものを食べて、次回の投稿に向けて英気を養います(笑)。