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MIU404に狂い咲いた夏の終わりにHYDE LIVE2020 Jekyll&Hydeを見に行った話。


日本どころか世界中が予想外の事態に陥った2020年。
世界から見れば吹かずとも飛び散る、しかし私の中ではとんでもなく大きな、想定外の事態が発生した。

テレビドラマ「MIU404」に激ハマりした。

2018年放送のドラマ「アンナチュラル」が好きだったから、同じ座組で制作されていると聞き、主演の綾野剛と星野源も嫌いじゃないし、とりあえず初回は見てみようくらいのごくごく普通の気持ちだった。
それがまさか「毎週金曜22時のために生きている」とTwitterのbio欄で意思表明をするほどのコンテンツになろうとは。
これまで広く浅くいろんなジャンルのつまみ食いを繰り返してきた。テレビドラマも幼い頃からそれなりに見て楽しんできた。しかしまさか自分がテレビドラマにオタク的なハマり方をするなんて、1mmも思っていなかった。

死角から食らったパンチほど重い。

「MIU404」は警視庁の働き方改革の一環で作られたという架空の設定の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」が舞台。警察内部で“何でも屋”と揶揄されながら犯人逮捕に奔走する初動捜査のプロフェッショナルである機動捜査隊が、24時間というタイムリミットの中で事件解決を目指す姿を1話完結で描く。
綾野は機動力と運動神経はピカイチだが機捜経験がなく刑事の常識にも欠ける伊吹藍、星野は観察眼と社交力に長けているものの自分も他人も信用しない理性的な刑事・志摩一未を演じる。

公式のイントロダクション通り、MIU404は1話完結型の刑事ドラマ。といいつつ、序盤から横たわる大きな事件の存在、そして伊吹と志摩、主役のバディ2人の関係性の変化縦軸となっていて、連続ドラマとしての側面も強い。
各回で発生する事件は死が絡むものや、今現在の日本社会での問題を反映したものばかり。真相が分かっても後味が悪かったり、胸に重く引っかかるものを投げかけてきたりで、手放しで楽しいだけの物語とはとても言えない。
けれどその苦々しさも全部ひっくるめて、感情が喜怒哀楽あらゆる方向に揺さぶられるから、面白くて仕方なかった。
それに伊吹と志摩をはじめ、第4機動捜査隊のキャラクター像は一方向に定まらない人間らしい生々しさを残しつつもキャッチ―で愛らしく、テンポの早い会話がとにかく面白かった。イントロダクションでは正反対のように叙述されている「404」バディだが互いに似通ったところもあり、そんなふたりが、殴り殴られ、口喧嘩をし、マウントを取り合い、暴走したり止めたり、息を合わせたり、走ったり立ち止まったりしながら、作品内の時間で半年をかけて本当の相棒になっていく展開が、響いて響いて仕方なかった。

個人的に特に好きなのが第3話。
https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/story/vol3.html
序盤から伊吹が疾走し、志摩が煽り、主軸の事件はやるせないながらも青春の匂いがあって、その解決はチームプレイ。さらにテーマ的にも事件的にも物語の縦の線が一気に立ち上がる回。
サプライズゲストが登場したり、アンナチュラルと世界線が繋がっていることも明示され、たくさんの要素が詰め込まれたこの話が、私の帰着不能点だった。MIU404が自ジャンルになってしまった。

そこからは、毎週録画予約をしたうえで、本放送はリアルタイムで見て、TVerの公式配信でリピート鑑賞。
考察ツイートを読み漁り、出演者のラジオを聞き、放送前からのインタビュー記事をかき集め、雑誌のバックナンバーを求め公立図書館に行った(逆バックハグananは10件以上予約待ちだった)。
公式SNSアカウントも全部フォロー。TwitterとInstagramそれぞれでしか投稿されない画像があるどころか、同じタイミングのポストでも絶妙に違うとか、そんなことある?あるのか。そういう些細なことにもびっくりした。

本編に登場したメロンパンを買いに行った。人生でメロンパン屋さんの鍵開けをする朝があるとは思ってなかった。

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最終回前後でTBS前に展示されたまるごとメロンパン号も、発表されたその日に見に行った。

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初めてのめり込んだジャンルだったせいで楽しみ方のノウハウの右も左もわからないまま、8割がた溺れているような状態で、公式から湯水のように供給される情報やコンテンツを摂取し続けた。
沈んだことを自覚してからの2ヵ月間ずっと「オタク3日目」だった。Twitterでも一人でずっと喚き散らしていた。

そしてあっという間に、9月4日の最終回。
朝からテレビとラジオに張り付き、電波ジャックの番組を全部おさえた。3分で分かるMIU404まとめ面白かった。


食事も入浴も済ませ、いよいよ興奮が極限まで高まった状態で迎えた22:00。
最終回直前インタビューでの言葉にもあったように、まさしくジェットコースターに乗ってるような69分間だった。辛い展開に頭を抱え、呼吸が止まり、泣き、そこから一変、強すぎる絵面にお腹の底から笑って、叫んで、単純な勧善懲悪とはならない苦々しさや虚しさもあり、とびきりのサプライズの展開の後に笑顔で終わった。22型の小さなテレビの前でスタンディングオベーションした。告知と同時にBD-BOXの予約をした。
全身全霊で満足感を味わいながらも、公式非公式問わずMIU404に寄せられる言葉を追う手が止められず、何時間経っても興奮が収まらなかった。
この夜はびっくりするほど眠りが浅かった。午前2時すぎに寝たのに何度も中途覚醒したうえに7時前には完全に目が覚めた。


しかし心身ともにガンギマった状態で明けた9月5日には、前日と同じかそれ以上に大切な推し事が控えていた。
それが『HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde』の初日公演だ。

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新型コロナウィルス感染症流行以降、初めて実施される有観客かつ生配信実施のライブで、現地に参加可能なのは東京都在住のファンクラブ会員に限定されていたが、要件に適っていた自分は幸運にも初日公演のチケットを手にすることができた。
生演奏のバンドスタイルでのライブに行くのは半年ぶり、しかもそれが主現場のひとつであるHYDEさんのワンマンライブということで格別の想いを持って臨んだ。

感染拡大防止策はかなり徹底的に取られていたが、徹底しているが故なかなか作業が多かったので、記録のために実体験を記載。

(ソーシャルディスタンスを保った状態で整列)
①入場扉前で「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」がスマートフォンにインストールされていることを確認
未実施の場合は、列を外れてこの場でインストール
②事前に公式Webサイトにアップロードされていた問診票に必要事項が記入されているかを確認
持参なしもしくは未記入事項がある場合、列を外れてテーブルで記入
③非接触型体温計で検温
④入場扉の床に設置された消毒マットで靴の裏の消毒
ここでやっとライブハウス内へ
⑤マスクを外し、顔写真付き身分証明書・電子チケット・問診票にて氏名や現住所、および本人であるかの確認
⑥電子チケットの入場用QRコードをコードリーダーにスキャン
⑦同グッズセット受け取り用QRコードをスキャン
⑧エコバッグに入った状態のグッズセットを受け取る
(長机が設置されており、必要な場合はここで荷物整理)
⑨ドリンク代600円の支払い。現金以外にSuicaなど交通系電子マネーでの支払いにも対応
⑩手指の消毒
⑪ドリンク交換
⑫着席

各セクションのスタッフ数は多く、オペレーションも特別遅くは感じなかったが、開場到着から着席までは約20分かかった。
HYDEのライブと言えば、6:66もしくは16:66ちょうどの開演がお決まりだったけど、流石にこの日は全員の入場を待つために開演時刻が遅らせられた(入場列にはその旨のアナウンスがなくて冷や冷やした)。
手元の時計で17:15頃、「16:55:01」で止まっていた緞帳に映し出されたデジタル時計が再び時を刻み始め、発声禁止の厳かな空気の中、Zepp Hanedaは「16:66:00」を迎えた。
幕が上がった向こうには、2018年のソロ再起動ライブツアーと同じNEO TOKYOの裏路地を背景に、黒いフードをかぶりドラム缶に囲まれた椅子の上に座るHYDEと、彼を中心に取り囲むサポートバンドメンバーがいた。
見覚えがあるようで、初めて見た、そんな光景。

その中で9ヵ月ぶりに聴いたHYDEの音楽は、至極の響きをしていた。
耳だけじゃなく全身を生の音楽に浸す感覚に、内臓の器官がびりびり震えた。
HYDEさんの歌声は優しく語り掛け、地を這うような低さで鳥肌を煽り、時に平和を祈り、時に死を悼んだ。曲ごとに全く違う色を為すHYDEさんの表現力と歌声に心が痺れた。

セットリストもとてもよかった。HORIZONは生で聞けたの初めてだったし、久々のEVANESCENTは直前のMCもあり涙が抑えられなかった。夏は華やかだからこそ切ない。
アコースティック編成ながらアレンジの幅も広くて、同じ味わいの曲がなかった。また原曲から全く違うアレンジになった曲も多く、特にANOTHER MOMENTは通常のライブだと後半の盛り上がるポイントでかかるジャンプ曲だが、この場においては本来の歌詞が持つ、別れてしまった存在との戻らない時を想う切なさが強調された美しい曲になっていた。

帰りの電車の中、イヤホンを耳に刺したけど、ラジオも音楽も聴けなかった。頭に響いているHYDEさんの歌声を少しでも残しておきたかった。
私の人生にはこの人が作り出す音楽が、エンターテインメントが必要だし、それを生で味わういう特別な体験をこれからも大切にしたいという気持ちでいっぱいだった。


さて、何故この全く関係ないドラマとライブの感想を1つの記事にまとめているか。その理由は2つある。

まず1つが、どちらもこういった2020年だからこそ生まれた形のエンターテインメントであったこと。

僕の中で2020年というのは、
オリンピックもあるし、
すごく華やかな年になると思ってた。
エンターテインメントの年になると思ってたんだけど、

(中略)予想外の事態になってしまった。

これは今回のライブパンフレットの1ページ目に、HYDEさんが記したメッセージの序文。HYDEさんに限らず、演者もスタッフも観客も、エンターテインメントに関わる人はみんなきっとこう思っていた。
自分は恨みがましい性格なので、次々とライブチケットがただの紙切れになっていく2月下旬から何度も味わったあの絶望を未だに忘れられないし、もし新型コロナウィルスが流行らなかったら、という妄想も未だに止められない。

けれどJekyll&Hydeは今のこの状況にならないと実施されなかったライブだ。これまでと同じ形式のライブではHORIZONは向こう何年も聴けなかったかもしれないし、全曲今回のために1からアコースティックアレンジをしたという曲たちも、この形で新しい姿を見せることはなかっただろう。あとMCが長いのも嬉しかった。歌ってるときは死神のような目の鋭さをすることもあるHYDEさんが、やわらかい声と和歌山弁で心の赴くままひとりでふわふわ喋ってるのが大好きなので。

そしてMIU404も、今のこの状況下だからこその結末を迎えた。盛大なネタバレになるので詳細は伏せるが、新型コロナウィルスが流行して2020年の東京オリンピックが開催されないというこの世界線にこられてよかった、と思わされる展開があった。2020年の今だからこそ味わえる、現実と地続きの面白さに唸った。

奇しくも双方にオリンピックという単語が出てきたことで、自分の中では結びつきができたけど、今だからこそ生まれたエンターテインメント、面白さや喜びは他にもたくさんあるはずだ。零れてしまったミルクのことはきっとこれからもしばらく嘆き続けるけれど、そういった新しい面白さを受け止めて、大切に噛み締めながら、日々の糧にしていきたい。


そしてもう1つの理由が、MIU404が伝えようとしていた「スイッチの大切さ」をHYDEさんの言動に見たことだ。

志摩「誰と出会うか、出会わないか。この人の行く先を変えるスイッチは何か、その時が来るまで誰にも分からない
(MIU404 第3話「分岐点」より)
伊吹「玉突きされて入った俺が404で志摩と組むことになって、二人で犯人追っかけてその一個一個一個全部がスイッチで、なんだか人生じゃん!?
一個一個大事にしてぇの。諦めたくねぇの。
志摩と全力で走んのに、必要なんすよ

(MIU404 第6話「リフレイン」より)

人生はスイッチの連続――それがMIU404という物語の大きなテーマのひとつだった。上記で引用した台詞をはじめ、某教育番組でおなじみのピタゴラ装置を用いたりして、出会う人、掛けられる言葉、目の前で起こる出来事、その全てがスイッチで、それ次第で人は犯罪に走ってしまうこともあれば、逆に誰かを救うこともできると、テレビの前の私たちに訴えかけていた。
特に最終回ではそこまで積み重ねてきた出来事や関係性の全てがスイッチになって、最悪の事態の一歩手前から引き返すことができるという展開だったから、この物語に大きく感情を揺り動かされた自分も、目の前に現れるスイッチをひとつひとつ大切に押していこうと思った次第だった。

ここで話をHYDEさんに戻す。

これは6月下旬に行われたインタビュー記事だが、この時点で彼はこう述べている。

──音楽シーンにおいては、さまざまな制限がある中でInstagramやYouTubeなどで配信をしたり新しい表現をされるアーティストも多いですよね。

そうですね。ライブ配信をがんばっているアーティストもいるけど、やっぱり僕が本当にやりたいのは今までのようなオーディエンスありきのライブであって、無観客っていうのがあまりピンと来ないんですよね。

──それを求めるファンの方も多いとは思うのですが。
もちろんやってみることでわかることもあるけど、まだ僕はライブができないのであればその期間を制作に充てたい。曲のクオリティを上げたりするような作業に時間を使いたいと思ってます。

しかしここからわずか2ヵ月後の9月上旬に、Jekyll&Hydeライブは開催された。
ではなぜ開催に至ったか、それは7月下旬にミュージックステーションと連動した無観客配信ライブに出演したことがきっかけだったと、この日のMCでHYDEさん自ら語った。

パンフレットのインタビューの中では、より詳しくその時の心情の変化について述べられている。

カメラだけの状態だと思っていたんですけど、蓋を開けてみたら、200人くらいのお客さんとつながってるでっかい画面があって。それを見た瞬間、"うわ、すごい!"”みんないるじゃん!”"感動して泣いちゃうかも"と思ってスタートして(笑)。
(中略)僕の中にあった配信に対する価値観がガラッとひっくり返ったんです。無観客だけどこれは無観客と言えるのか、って。実際そこにはいないんだけど、いるときとあまり変わらない感覚になったんですね、そのときに

この話をライブハウスの中で聞いた時、今この場でHYDEさんのライブを見られているのはまさしくスイッチが押された結果そのものだ、と感じざるを得なかった。
Mステと配信イベントへのオファーを受けたことが、HYDEさんが今回の形式でのライブに踏み切る大きなスイッチになったのだ。
さらに最後のMCでは「お客さんを入れて観てもらってすごくうれしいけれど、うれしいだけで終わっちゃダメで。次につなげていきたいです。これが成功すればきっと地方でもできるので、それまで楽しみに待っていてください」「俺たちなら絶対成功できる」と言っていて、今この場は結果であると同時に、また新しくライブを開催するために作動する大きなピタゴラ装置の中のスイッチのひとつでもあると実感した。

大好きなHYDEさんの力になりたい。どういう形であれまたHYDEさんのライブが見たい。そしてアーティストとして存在感の強いHYDEさんのライブが成功することは、他のバンドやアーティストの有観客ライブを開催するためのスイッチにもなりうる。
だからこそ自分にもスイッチがあることを自覚して、少しでも良い未来に進むように、大切に押していこう。
ライブ終演後、Zepp Hanedaからすぐ近くの羽田空港の眩い夜景を臨みながら強く思った。

自分の生きる糧だったエンターテインメントのほとんどが奪われてしまった2020年の夏を、なんとか日々生きていけるよう支えてくれていたのがMIU404だった。第4機動捜査隊は架空の存在だったけれど、彼らが残してくれたメッセージは今を生きる自分にとって、確かな現実だ。
そしてその夏の終わり、もう好きになってからかれこれ20年近く経つHYDEさんを通して、それを地肌で実感することができた。
直接的な繋がりはないにしろ、私にとってはどちらも大好きで大切な存在だ。そこから与えられたものを心に刻みつけて、日々を生きていきたい。


というわけで今からでも全く遅くないので、MIU404是非見てください
Paravi(2週間無料体験あり)で全話見られます。めちゃくちゃ面白いです。米津玄師の感電の良さが404倍増します。


本当はここで終わらせるつもりだったが、ちょうどこの記事を書いているタイミングで嬉しいお知らせが入ったので追加!

スイッチちゃんと押せた!!



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