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王国 (詩)

小雨の夕方

黒猫は子猫を5匹つれて

 散歩をする

 猫たちは大きい順にならんで

 角を曲がる

 3丁目のあの家の主婦が

 内緒で買った高級腕時計を

とんでもない場所に隠していることも

 猫は知っている

 角地にあるカフェの経営状態

 困窮している

 相当なものだ

 区役所の突然の配置換えは

 人々の思惑通り 

 幹部職員がしでかした大失態を形式上払拭したに過ぎず

 彼が糾弾されるのも時間の問題だ

 猫は中学校の裏手へ

プールのフェンスの破れ目から順々に中に入る

 わかいおとことおんな

 桜の樹の下で

 猫のようなかわいい声と湿った息

 
そして、

 プールわきにぼくたちのおうちはあります

 おかあさんがまえあしでつちをほると

 くろいつちが ばばばばばばばばばばとうしろにとんで

 みんなで すげぇや! とまねしました 

ばばばばばばばぁーーー

 おかあさんのつくったトンネルのなかをいくと

 そこはプールのしたで

 しんじられないくらいひろい地底広場があって

 まちじゅうの猫たちが 

そこで新聞を読んだり遊んだり勉強する王国があります

猫の王様はとてもかしこくて

ロケットのしくみをくわしく説明します

ぼくもりっぱなおとなになります

 きょうはもうねむいです

 おとうともいもうともねむってしまいました

 あしたはかけざんをします

 よいこになれるように


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