時系列の定常性と単位根
$${\{y_t\},t=1\dots T}$$で与えられている時系列があるとする。
$${y_{t-j}}$$を$${y_t}$$のj次のラグと呼び、共分散$${cov(y_t,y_{t-j})}$$が自己分散となる。
この時系列の定常性の定義は、以下のように、期待値、分散、共分散の全てが時間に依存しないことで与えられている。
$${E[y_t]=\mu}$$
$${var(y_t)=\gamma_0}$$
$${cov(y_t,y_{t_j})=\gamma_j}$$
非定常性の時系列の例では、トレンドがある、確率的トレンド(単位根)を持つ、または構造変化がある時系列が挙げられる。
時系列の自己共分散と自己相関係数
j次の自己分散は$${\gamma_j=cov(y_t,y_{t-j})}$$で与えられ、同じくj次の自己相関係数は、
$${\rho_j=\displaystyle{ \frac{cov(y_t, y_{t-j})}{\sqrt{var(y_t)}\sqrt{var(y_{t-j})}}=\frac{\gamma_j}{\gamma_0} }}$$
と与えられる。
時系列$${y_t}$$がIID(独立同分布)ならば、$${\rho_0=1}$$で、これ以外の相関係数は$${\rho_j=0,j\ne0}$$である。
自己回帰モデル:ARモデル
現在の値が過去の値とホワイトノイズで決まるモデルで、p次のAR(p)を、IID$${(0,\sigma^2)}$$の$${\epsilon_t}$$を用いて、
$${y_t=\alpha_0 + \alpha_1 y_{t-1} + \dots + \alpha_p y_{t-p} + \epsilon_t}$$
と表す。ここでは、分散を均一としている。分散不均一モデルには、ARCH、GARCHがある。
ARモデルの定常性
AR(p)モデルが定常性を持つ条件は、
$${1-\alpha_1x-\alpha_2x^2-\alpha_3x^3-\dots -\alpha_p x^p=0}$$の解の絶対値が1より大きいことである。
AR(1)モデル:$${1-\alpha_1x=0}$$から、$${|x|=\displaystyle{|\frac{1}{\alpha_1}|>1}}$$ 。よって、$${|\alpha_1|<1}$$
AR(2):$${1-\alpha_1x-\alpha_2x^2=0}$$。$${x}$$の関数$${f(x)}$$を$${f(x)=\alpha_2x^2+\alpha_2x-1}$$として、この関数が実数解を持つ場合、 $${D=\alpha_1^2+4\alpha_2\ge0}$$。
$${f(0)=-1<0}$$より、解の絶対値が1より大きくなるには、$${f(1)}$$、$${f(-1)}$$ともに負である必要があるから、
$${f(1)=\alpha_2+\alpha_1-1 <0}$$、
$${f(1)=\alpha_2-\alpha_1-1 <0}$$。
$${\alpha_2>0}$$の時、$${f(1)}$$、$${f(-1)}$$から $${\alpha_2-1<0 、0<\alpha_2<1}$$となる。
$${\alpha_2<0}$$の時、$${f(0)=-1<0}$$より、$${f(1)<0、f(-1)<0}$$ 、$${\displaystyle{|\frac{\alpha_1}{2\alpha_2}|>1}}$$でなければならない。これと判別式から、
$${\alpha_2^2+\alpha_2>0}$$、よって $${-1<\alpha_2<0}$$。
以上をまとめると、AR(2)モデルで定常性を持つ条件は、
$${\alpha_2+\alpha_1<1}$$
$${\alpha_2-\alpha_1<1}$$
$${-1<\alpha_2<1}$$
となる。
特性方程式の解が複素数であるときも同様に、定常である条件は$${D=\alpha_1^2+4\alpha_2\lt0}$$で、$${|x|< 1}$$で与えられる。
よって、$${\alpha_1^2-(\alpha_1^2+4\alpha_2)<4}$$から、$${\alpha_2>-1}$$となる(加筆 26/03/24)。
ARモデルの平均と分散
AR(1)の時系列$${\{y_t\},t=1\dots T}$$定常性を持つとする。
上記の条件$${|\alpha_1|<1}$$は、統計的に以下のようにも求められる。
$${y_t}$$の期待値$${E[y_t]=\mu}$$とすれば、
$${y_t=\alpha_0 + \alpha_1 y_{t-1} + \epsilon_t}$$より、
$${E[y_t]=\alpha_0 + \alpha_1 E[y_{t-1}] + E[\epsilon_t]}$$。
$${E[y_t]=E[y_{t-1}]=\mu}$$、$${E[\epsilon_t]=0}$$から、$${\mu=\alpha_0 + \alpha_1 \mu}$$。
よって、$${\alpha_0=(1-\alpha_1)\mu}$$。
これを用いて、
$${y_{t}-\mu = (1-\alpha_1)\mu + \alpha_1 y_{t-1} + \epsilon_t - \mu = \alpha_1(y_{t-1}-\mu)+ \epsilon_t}$$。
また、$${y_{t-1}-\mu = \alpha_1(y_{t-2}-\mu)+ \epsilon_{t-1}}$$と表せるから、
$${y_{t}-\mu =\alpha_1^2(y_{t-2}-\mu) + \alpha_1 \epsilon_{t-1} + \epsilon_t}$$
$${y_0=\mu}$$として、
$${y_{t}-\mu = \sum^{t}_{\tau=0}\alpha_1^{\tau}\epsilon_{t-i}}$$と書き表せる。ここで、$${\epsilon_t}$$と$${\epsilon_{\tau},(\tau\ne t)}$$は互いに独立であるから、
$${E[(y_t-\mu)\epsilon_t]=0}$$。
ここで、分散を考えれば、
$${var(y_t)=var(\alpha_0 + \alpha_1 y_{t-1} + \epsilon_t) \\ =var(\alpha_1 y_{t-1})+var(\epsilon_t)=\alpha_1^2 var(y_{t-1})+ \sigma^2}$$
$${var(y_t)=\displaystyle{\frac{\sigma^2}{1-\alpha_1^2} }}$$
分散は常に正であるから、$${|\alpha_1|<1}$$
単位根を持つ時系列
時系列$${\{y_t\}}$$が$${y_t =\alpha_0+ \alpha_1 y_{t-1}+\epsilon_t、\epsilon_t : IID~N(0,\sigma^2)}$$で与えられ、$${ \alpha_1=1}$$となる時、この時系列は単位根をもち、非定常である。
この時系列の差分、$${\Delta y = y_t - t_{t-1}=\alpha_0 + \epsilon_t}$$は弱定常ではあるが、
$${y_t = \alpha_0 + y_{t-1}+\epsilon_t = 2\alpha_0 + y_{t-2} + \epsilon_t + \epsilon_{t-1} = \dots =\\ t\alpha_0 + \sum^{t}_{\tau=1} \epsilon_{\tau},(y_0 =0)}$$ となり、期待値$${E[y_t]=t\alpha_0}$$、分散$${var(y_t)=t\sigma^2}$$で、どちらも時間tに依存し非定常であり、$${t \to \infty}$$で発散する。
DF検定
AR(1)モデルのデータが単位根を持つ、即ち、$${\Delta y=y_t-y_{t-1}=\alpha_0+(\alpha_1 -1 )y_{t-1}+\epsilon_t}$$から、$${\alpha_1=1}$$か否かの検定を行う。
$${\alpha_1\ne1}$$かつ、$${|\alpha_1|<1}$$であれば、AR(1)のこの時系列は定常性を持つ。
ADF検定
DF検定を拡張し、AR(p)モデルで、単位根を持つかどうかの検定を行う。
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