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Story出会い系嬢の憂鬱。〜プロローグ〜

「来ないなぁあのひと…何してるんだろ」

結以(ゆい)はスマホの画面を見つめながら呟いた。クリスマスイルミネーションに飾られたPARCO前は、そこかしこに体を寄せ合うひとたちで賑わっていた。そこに結以もいるはずだった。そっと手のひらを重ねて。

「寒い…まだかな…」

結以は出会い系サイト「ティアラ」で会う約束をしている男性を待っていた。PARCOの玄関先にいた待ちびとたちは、それぞれ相手を見つけて結以に一瞥もくれず去っていった。

いつの間にか粉雪がちらつき始めていた。もう一度スマホのLINE履歴を辿る。
待ち合わせ時間は19時。もう20時を過ぎてしまった。
19時を少し回った頃にお相手から「仕事で少し遅れます」とLINEが入った。わかりましたのスタンプは既読が付いていたけれど、そこからはなんの連絡もない。
「まだ時間かかりそうですか?」とLINEを送ってみる。嫌な予感がする。

10分経ったけれど、既読がつかない。
LINEのブロックチェックをする。何度試しても、間違いなくブロックされていた。
ティアラにアクセスしてみるとメール履歴は全て消され、相手のプロフィールは「お相手のご都合により表示することができません」と閲覧ができなくなっていた。

「やっぱりか。私がブスだからか」

遠くから私の姿を確認して帰ったのだろう。きっとそうだ。
すっぽかしには慣れているつもりだった。
でもクリスマスイブの夜に何日もLINEでやり取りした相手に、それも写メも送ったはずの相手にすっぽかしされてLINEもブロックされるなんて。
何度も自分の容姿を呪った。

LINEのトーク画面からブロックし返すと、バッグにスマホをしまいPARCOを後にした。

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