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「冗談だよ」を許せるか

「あの人悪い人じゃないんだけどね」とか「本当はいい人なんだけどね」という言葉を私は信じていない。

本当にいい人であれば、そもそもそんな言葉は出てこないからだ。しかもそれを言う人は影口を言いたくない良い人だ。そんな良い人に気を遣わせている時点で対象者はろくでもないやつだと判断している。

そんなことを前々から思っていたけど、「冗談だよ(なに本気にしてるの?笑)」という言葉もすごく好きじゃないと思った。

「冗談だよ」は文脈によってかなり異なるから、それを言った場面全てが当てはまるわけじゃない。ここで当てはまるのは、相手が傷ついている可能性があるのに、言った側が「冗談だよ」で終わらそうとしてくる場合。

冗談だよで勝手に終わらせてくる場面に遭遇すると、冗談として受け止めるのは言われた側だから言った方に決める権利はねえからな??はき違えんなよ??とお腹がぐつぐつする(口悪いですね、すいません、でもほんとに思ってるんです、サーセン)


ちょっと話は違うんだけど、最近「石子と羽男-そんなことで訴えます?-」というドラマを見た。(ネタバレあり)
有村架純と中村倫也がW主演の弁護士ドラマで、家庭内のゴタゴタやご近所トラブルなどの日常の相談を紐解いていくうちに、現代で起きている社会問題に結びついていく構成で面白かった。

その中でもファスト映画がテーマのエピソードが私は結構好きだった。ファスト映画を作った被疑者は、監督の熱烈なファンで、監督の作品を広めるのに何が悪いと最初は反省の色を見せない。ただ、物語が展開していくうちに自分の罪を認め後悔する。そこで最後に監督に対して「申し訳ない」と土下座をして心から謝る。その後の監督のセリフが私は好きで心に残っている。

「未熟で申し訳ない。どんなに謝罪されても受け入れることはできません。」

謝罪を受け入れて、被疑者も被害者も仲直りめでたしめでたしとなるのかなと予想してたのが見事に裏切られた。
このラストを見た時に、
「あぁ謝罪されたからといって許さなくても良いんだ。許されなかった被疑者はこれからどう自分が犯した罪と向き合っていくんだろう。」
と思った。

友達にそのラストを話すと、「謝罪されたらそれを受け入れるというのが一般的になってしまっているけど、それを許さない権利だってもちろんあるはずだよね。」と言ってたしかに〜とも思ったりした。


法律に違反していたらわかりやすいけど、違法じゃなくても人の心を傷つけたり、そのつもりがなくても踏みにじってしまうことだってある。むしろそっちの方がわかりづらいし、声をあげづらい。
だから自分が嫌なことをされた時に、もし冗談だよ、真面目だね、繊細なんだねとか言ってきて、それをなかったことにしてくるような輩がいるのであれば許さない権利もあるということを私も肝に銘じておきたいし、この文章を読んでる人にもわかっておいてほしい。




一方で、自分が意図せす人を傷つける加害者になってしまった時もある。いろんなことを知れば知るほど、自分が過去に人を傷つけてしまっていた、傷つけてしまっていたかもしれないという自分の罪に苛まれる。

大体の場合、傷つけられた方が覚えていて、傷つけた方は覚えてない。人に言った言葉は取り消せない。

人から傷つけられたことを主張するたびに、(そのときになってようやく)自分が同じことを今まで周りの人にしてしまっていたかもしれないことがフラッシュバックする、ということがあったりする。

それを気づいたときはやりきれなくなるよね。
むしろそのときから自分の言動を改めるチャンスがやってくる。

ここ最近リーガルドラマを見過ぎたせいか、罪と罰について考える機会が増えた。カラマーゾフの罪と罰まだ読んだことないから読んでみたいな。

法律に違反しない罪がこの世にはたくさんある。

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