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食べかけ。

僕は食べかけの写真を撮ることをお勧めしている。それにはいくつか理由がある。

まず1つ目は、食べる前に写真を撮ると、その料理の味が微妙だったときに、どうでもいい写真になってしまうからだ。食べかけの写真はどれも途中まで食べているので絶対に美味しいものの写真になる。

2つ目は、食事前に写真を撮ると、食事に対しての欲望が多少満たされてしてしまうからだ。食事の肝は一口目である、と言っても過言ではない。一口目というのは新鮮でインパクトのあるものでなくてはならない。そのためには飢えというものが必要になる。飢えとは空腹のことではなく、飯が食いたい、という気持ちの飢えである。一口目には欲望剥き出しでかかってゆく。それが食事に対する正しい心構えではなかろうか。

そして3つ目、これが1番大切なポイントである。私の食べかけの写真というのは、ただ料理を写しているわけではない。その料理を食べている時の"感情“も写しているのだ。いや、ほぼ感情を写していると言ってもいいのではないだろうか。

私は、はいちーず!という掛け声で撮られる写真がどうも好きになれない。なぜなら、はいちーず!の間でポーズを取っているその瞬間、せっかくの楽しい気持ちはどこかへ行き、「綺麗に写らないといけない」という思考が頭を埋め尽くしてしまうからだ。そんな気持ちで撮った写真は、写見返した時に、楽しい感情の蘇りにモヤがかかってしまう。写真というのは見返した時に「この時すごい楽しかったな」、とすぐに思い出せるような物でなくてはならない。

写真とは瞬間を切り取るもの。楽しい瞬間というのは不意に訪れるものである。だから私は美味しい!と思った瞬間に、その料理の写真を撮るのである。おすすめなので皆さんにもやってみていただきたい。絵面が汚いので人に見せられない、という料理の写真としてこの上ない欠点があるが、それは知らない。知ったことじゃない。


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