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オペレーターインタビューVol.1:麻生 玲央

コロナ禍でグローバル・ローカル企業共に多くの配信を請け負ってきたKST EVENTS。元々需要の少なかった配信を行うにあたり、多くのオペレーターが初めての事を経験しながら成長してきた。数々の現場を乗り越え成長してきたオペレーターの仕事に触れるインタビュー。

◆オペレーター紹介◆
麻生玲央
神奈川県出身。2018年よりKST EVENTSに所属。
オンライン現場では、配信オペレーターとして配信、中継、録画を主に担っている。
今回は麻生さんにインタビューを伺いたいと思います。

ーーそれではよろしくお願いいたします。


配信オペレーターとは。

ーー配信オペレーターって何をやってるの?って聞かれたらどう説明しますか?

みなさんおそらくYouTubeとか動画サイトで普段配信とか見てたりするかもしれないんですけど、その配信が安定して流せるようにプラットフォームの管理だったり配信が安定するように保守することを主に行っています。

ーー元々配信オペレーターとして活動されてたんですか?

いえ、元々はイベントスタッフとしてブース誘導とかをしてました。ずーっと突っ立ってる時間が多いのでちょっとしんどいなーって。体力的に大変だなーって思う時もありましたね。

誘導から配信へ。コロナをきっかけにKSTがオンライン環境に。

ーー現在の配信業務の前はイベントの誘導業務をされていたんですね。

そうですね。法人向けのイベントをメインに誘導業務を行っていました。

ーー今とは全く違う業務ですね。配信業務をすることになったのは何がきっかけだったんですか?

まず、コロナをきっかけにすべての環境がオンラインになって外へ出る機会が減ったので、これを機に自分で(趣味であるゲームなどを)配信してみようと思い環境を整えました。その翌年ぐらいからYouTubeなどの配信案件が増え、その時に社長から「配信できるか」と言われたので「家で(配信を)やっているので、できます」というのがきっかけで配信業務がメインとなりました。

ーー誘導人員としてイベントをやっていた頃と配信オペレーターとしての今では全然違いますか?

違いますね。
イベントスタッフは求められることが少ないのでそこまで専門知識がいらないと思うんですが、オンラインの環境になってくると専門知識が多く必要とされるので、それを自分で噛み砕いて理解していく必要がありますね。

また、オフラインイベントだと自分の家から現場で直行して自宅に帰るの繰り返しじゃないですか。オンラインだと逆に知識を入れるのに会社に行く必要があるのでいろんな人と触れる機会が増えましたね。

配信オペレーターとしての苦悩

ーーやはり専門知識が多く、理解していくのが大変なんですね。
その配信自体を理解していく中で大変だったことや困ったことはありますか?

最初はやっぱり音関係が1番知識としては覚えることが多くて大変でしたね。例えば、ミキサーの音を上げるフェーダーもそうだし。ゲイン、デシベルってまずなんだっけ?とか。音の大きさってのも全然分からなくて、どれが適正なんだろうとか。音の声域、音の位置というかローとかミディアムとかハイとかって声質によってありますよね。例えばこの人の声だったらここの声域カットみたいな。

音周りの知識もつけたんですけど、やはりどうしても映像と音と並行して学習するってのは最初の頃は限界があったので、音は音のスペシャリストに頼ることになったんですね。実際にライブハウスや現場で活躍している音のスペシャリストがいてくれたおかげで音の仕組みとかも徐々に理解できるようになり、今となっては映像と音、どちらもできるようになったと思います。

とにかく自分でやってみて、ダメだったところがあればみんなで共有しての繰り返しでした。なので覚えていくスピードも早かったと思います。現場でわからないことがあったら終わった後になんでできなかったのか、もう1回その機材の確認して、例えばコンバーターの出力設定を1から8番までon,offしたり映像の出力設定を見直したり、結構現場によって映像を送る品質設定も変わってくるので。できなかったことは次の日にはできるようにっていうのをどんどん繰り返していきましたね。

ーー何度もトライアンドエラーを繰り返し、理解を定着させるということですね。ではいざ現場に立った時に大変だったことや困ったことはありましたか?

配信って”映像”、”音”、”ネットワーク”この3つを見なければいけないんですが、映像が来てなかったり音が届いてなかったり、なにかしらトラブルが起きたときにそのボトルネックをみつけることがすごく大変ですね。

本番当日になにかトラブルが起きるとまず慌てるんですよ。前日に機材組んでリハーサルしてチェックはしたんですけどなんで映像来てないんだろうって。現場のスケジュールってすごくタイトだったりして、ボトルネックを探し出すのに時間を割いてしまったせいで後のスケジュールに遅れが出たりってのもありましたね。

特にネットワークに関しては正直みえないところが多すぎるのでどこにボトルネックがあるのか洗い出すのは本当に難しいですね。配信って結局トータルでみていくので映像、音、ネットワークの知識をある程度理解しておかないとトラブルが起きた時に対処できないのでかなり大変ですね。

麻生さんが配信オペレーターとして請け負った現場の一機材図。画面右側の収録オペレーターを担当。合成映像、エンべされた音声の終着点として各ソースが届き、ネットワーク環境と共に3つの要素に気を配り、配信を保守する。路線図のように複雑なこの機材図を理解しどこにボトルネックがあるのか瞬時に判断し対応する。


ーー限られた時間でボトルネックをみつけ出すのは大変ですよね。配信という技術的な面で大変だったことや困ったことはありましたか?

YouTubeって1080pで配信をする場合だとビットレートの推奨値が4,500~9,000kbpsとされてるんですね。

現場の場合、状況に応じて蓋絵(イベントタイトルの静止画)を送信し続けることがあるんですけど、vMix側でYouTubeに送る映像を1080p、6Mbpsに設定しYoutubeに送っても蓋絵を配信し続けているとどんどんビットレートが下がっていくんですよ。

配信自体に問題が無くても、YouTube Studioが減少したビットレートに反応して警告文を出してくるので最初は不安でしたね。ただデータ送信量が少なくなっただけで、機能的に問題があるわけではないので今は不安なく配信できています。やはり知識と経験は大切ですね。


自分の経験を活かし教育コンテンツを強化へ

ーー配信面で多くの経験をされてきたわけですが、今後どのように考えていますか。

今後入って来られるスタッフに向けて誰もが配信できるようになるための教育コンテンツを増やしていきたいですね。やはりKSTの軸は配信にあると考えているのでまずは配信を覚えてもらい、そこからほかの知識をつけていただきたいなと。

ーーそれは非常に大事ですね。教育コンテンツとは具体的にどのようなものですか?

この前の現場で新人のスタッフに自分が配信してる姿を見てもらった時があるんですが、スタッフには自分のボトルネックの探し方を教えたり、新人スタッフのオペレーションに対して抱えている疑問や問題点を洗い出しそれをケアする。そしてそれを他の新人スタッフや配信学習者たちに共有するということですね。

ーー問題点をその都度クリアにすることで誰でも配信できるようにするということですね。では学習していく上で何が大切だと思いますか?

手を動かすことですね。
まずその現場であんまり起こってほしくないのが、わからないことをわからないままにしてしまうことです。

その機材触らずにわからないことを調べて、記事をみただけで「あ、こうだったのね」で終わらせてしまうと本当に知識として身に付いたのかはわからないですよね。

例えば、配信に必要なストリームキーはどこから仕入れてくるのか、そのストリームキーを配信ソフトウェアのどこに埋め込むのかというのを記事でみて理解するより手を動かさないと完全には理解できないんです。

また現場ではスピードを求められるのでこの手の動かす速さを身につけておかないといけないわけです。あと、わからないことは操作しないとわからない。操作してみてわからなかった→記事でわからない内容をみる→再度実際に手を動かして操作してみる→わからなかったことがわかる
という流れで自分が腑に落ちるまで手を動かして情報を整理することが大切だと思います。

・・・・・


一変した業務内容から困難を乗り越えてきた麻生さん。多くの現場を経験してきたからこそ気づけた手を動かすことの重要性。

コロナ禍で移りゆく情勢の中、成長を続けるオペレーターに焦点を当てて綴った今回のインタビュー。次回も新たなオペレーターに触れていきますので、どうぞお楽しみに。

麻生さんが現場で使用している
プラットフォーム、ソフトウェアなどをご紹介

・配信プラットフォーム
YouTube live、VIMEO、Zoom webiner、ON24、BRIGHTCOVE、Twitter live

・配信ソフトウェア
vMix、OBS、Wirecast、LiveShell(ハードウェアも兼ねる)

・中継、プラットフォーム
Zoom Meeting、Webex、Microsoft Teams

・録画機材
HyperDeck


◆スタッフロール◆
インタビュー:RENA
写真:吉野 龍希
文:守 孝太
構成:原 一徳