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きみといた夏

第一話「小宇宙」

トゥルルル、トゥルルル、トゥル、ガチャ

「もしもし、宮本書道教室じゃが?」
「(あっ、つながった)すいません、教室はやってますか?」
「・・・・」
「もしもし?」
「コスモという漢字を書いて持ってきなさい、、、ガチャ」
「コスモ?」

小宇宙と書いてコスモと読むことを少年はこのあと知る。

「父ちゃん!コスモって漢字どうかくん??」
コスモ?こすもっつうのは…
昔の記憶は時を過ごすごとに薄れ、子供の時分に父親と話した記憶はそれほど残ってないが、この話は鮮明に覚えている。
そう、鮮明に覚えているんだ。

忘れられない夏。「小宇宙」を抱えて、ぼくは、走った。

ドンッ
『いった~い!!ちょっとどこ見てるのよ!』
いつもバス乗り場で見かけたあの子だ。

今日は夏休み、彼女も私服のワンピース。
高鳴る胸。
忘れられない夏の日の1993。

カランッ
何かが乾いた音をたてて落ちる音がした。そう、彼女が被っていた仮面だ。

「ハッ!顔を見たわね…仮面の下の素顔を見られた聖闘士の女子はその相手を殺すか、それとも…
くらえ!サンダークロウ!」

普通のー 女とー 思っていーたのーにー

咄嗟にのけぞり、彼女の一撃を何とか躱す。反動で手に持っていた書道セットが落ちてバラける。二人の間にはらりと、「小宇宙」が広がった。

「えっ……?あなたもしかして……おじいちゃんの教室の……?」
「えっ……?」

小宇宙を挟んで、ぼくらは立ち尽くした。蝉時雨だけが煩く響いていた。

???「風雲斎先生、すずりさんと例の電話をかけてきた男の子が接触しました」

宮本風雲斎「なるほど、それでは小宇宙の行末を見守る必要が出てきたな。血沸く血沸く〜」

???「先生、あまりご無理なさらぬよう」

風雲斎は、その言葉を聞かぬうちに部屋を出た。

「いきなりなんなんだ君は!」

振り下ろされた彼女の一撃はコンクリートを砕き(いや、焦げ跡がついてるから焼き斬るというべきか)、その衝撃の強さを伝えていた。

「私はすずり。宮本すずり。」

そう答えた宮本すずりはスッと片手を広げ、ぼくの方に向けた。

「通さないよ。ってか通れないでしょ?」

「通れるさ」

それ程に容易く悠然とぼくは、すずりの死線を横切った。

ぼくもまた、遥か怪物。

「ふぉっふぉっふぉっ。こんな逸材が、まだこの世にいたとはな。」
風雲斎は、長い髭を触りながら、笑みを浮かべている。

すずりは、風雲斎には一瞥もくれず、ぼくの懐にしゃがみこんだ。

「黒閃っ」

「黒閃」
打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪み。威力は平均で通常の2.5乗。「黒閃」を狙って出せる術師は存在しない。

風雲斎は己が震えていることに気付かなかった。
(おい…見てるか谷沢…お前を超える逸材がここにいるのだ…それも…)
「二人も同時にだ……谷沢…」

僕の体をかつて経験したことのない衝撃が襲った。
(くっ…もう一度これを受けてはダメだ。小宇宙だ、小宇宙を燃やすんだっ‼️)

「何故小宇宙と書かせたのか分かったよ。君と闘うためだったんだね。
五感全て失われようと、燃えろ俺の小宇宙よ‼️
全身を流星と化して奴を射つんだ‼️ウォォォォォォ‼️」

『こ、これは第六感を越えた第七感、、、セブンセンシズ?!』
『矢沢ですら届かなかった領域に2人も同時に踏み込むとは、、、!』

僕とすずりの冒険は始まったばかりだ、、、!

次回
『宮本すずり死す!』
絶対見てくれよな!

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