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眠れない夜の対処方法として「軽くストレッチをする」とか「温めた牛乳を飲む」とかあるけど、僕は「高校のときの通学路をできるだけ詳細に思い出す」をよくやる。

児童公園の遊具の配置、タヌキの死骸を見つけた側溝、病院裏になぜか置いてあるベンチに書かれた「チョコレートは明治」の文字などを思い出し、そのベンチが青色だったもんだから通るたびにサスケの青いベンチを思い出すことを思い出したり、大人になってから曲を改めて聞くと歌声は青春のように不安定で繊細で(婉曲表現)、歌詞も「(クゥ〜ラス会には)たくさんの人がゆくよ」など素朴で微笑ましく(婉曲表現)、当時はなんでこれを笑わずに普通に聞けてたんだろうと思ったり、確かクラスの誰かにサスケのCDを借りてMDに入れたな、誰から借りたんだっけ、お母さんの職場の人?いやそれはデフテックのCDか……などと記憶の中で寄り道を繰り返していたらいつの間にか寝ている。
いつまでも高校に到着できない。

そのほかに考えることのひとつに、「好きなひらがな」がある。
今日は通学路の話ではなく、ひらがなの話です。


もったいぶる必要もないので早速発表するが、僕の好きなひらがなランキング1位は「を」である。

である、ってなんか偉そうで変だな。
久しぶりにnoteを書いたら文体が分からなくなったので、ここからは「ですます調」にします。

数年前に小説を作って文フリに出展しました。
ページの余白、行間や文字の大きさなど、知識も技術もないなりに見やすさにこだわり、中でも本文フォントを何にするか一番時間をかけて悩んだのを覚えています。
最終的に「しっぽり明朝」で組みました。組みました、ってのも妙に偉そうで嫌ですね。wordで作ったくせに。
しました、にします。「しっぽり明朝」にしました。させていただきました。

同人誌を作るのが初めてだったので、なるべく出費を抑えたく、フリーフォントから選ぶことにしましたが、無料で使える(使わせていただける)フォントだけでも選択肢は膨大です。
ですが、僕にはこれだけは外せないという条件があり、候補はかなり絞られました。
それこそが「を」の形です。

ひらがなの「を」

「を」の2画目と3画目は絶対につながっていたい。
そうしたい明確な理由はなく、UDフォントを鑑みるにむしろ離れてた方が読みやすいのかもしれませんが、こればっかりはたとえ視認性を犠牲にしたとしても、とにかく絶対つながっていてほしいのです。

理由はないと書きましたが、見た目がタイプだからとしか言いようがありません。なぜタイプなのかは説明しようがない。
男の人は短髪でいてほしいし、脱毛もしないでほしい。それと同じです。
初対面の男の人の左手薬指を真っ先に見ちゃうように、小説を読んでいてもまず「を」の形を自然とチェックしてしまう。離れている形のフォントだと、「を」が出てくるたびに「離れてる…」と気が散ってしまいます。

もっと言うと、「を」は縦長の形だと嬉しいです。
しかしながら2画目と3画目がつながっているとだいたいそうなるので、とりたてて条件にはしていません。横長に広がった形でも2画目と3画目がつながってさえいれば全然気になりません。
阿部寛もいいけど、濱田岳も好き。そんな感じです。

いろいろな「を」
いや、2画目と3画目のつながりは気になるのに、図中の文字の高さがバラバラなのは気にならないんかい。という声が聞こえてきます。そうです、気になりません。

ちなみに文フリ用の同人誌のフォントを選ぶ際、「を」をチェックしたあとにも、「あ」(3画目の始まりが2画目に近ければ近いほどいい=右側の空白が狭ければ狭いほどいい)とか「た」(3画目が1画目と同じくらい上にきてほしい)とか細かい条件(というか好み)で見ていき、文字の太さとかも踏まえると「しっぽり明朝」はほぼ僕の理想形でした。
ありがとうございます。

「を」は、しかし自分で書くとなると難しい。2画目3画目をつなげるのは手書きだとほぼ無理な気がします。「え、そっちにふくらむの?」という筆の動きだし、2画目の折り返しも左に進めすぎると不恰好だし、まっすぐ下に下ろすのも不恰好。
中学1年生のときに「を」をかっこよく書けるコツを掴んだ瞬間があったのに、やがて僕は平成ギャル文字を書くようになり、もう何も分からなくなってしまいました。

一方、自分で書くひらがなとしての好きランキング1位は「か」と「な」。
逆にワースト1位は長らく「き」の独占状態だったにもかかわらず、最近「き」もいいなと思えるようになってきました。大人になって好きになるなんて、からすみみたいな存在ですね。食べたことないけど。
いや、「ひ」も気になる存在です。
えーちょっと待って、1位なんて選べない…と悩んでいるといつの間にか寝ています。

このnoteに出てきた主なひらがな(しっぽり明朝)
どうせなら「あかさたな…」って書けばよかった

反対に、ひらがなの元になった漢字(字母)を考えると頭がカッカとして目が冴えてきます。
職場の研修を受けていて眠くなると、字母を想像することで眠気を乗り切っています。
「宇→う」「加→か」「世→せ」は簡単ですが、ここでクエスチョン。
「む」とか「は」の字母はなんでしょう。パッと出てきますか?

何度も調べてるはずなのに字母を思い出せないひらがなが毎回1つ2つあるのでそれを推理するのも楽しいですし、字母由来の筆の運びを意識してひらがなを書いてみるのも楽しいです。
特に「き」「み」は字母(幾、美)を意識して書くようにしてから好きになりました。
ちなみに「を」は「遠」から来ているようです。
(さきほど出題した「む」と「は」はそれぞれ「武」と「波」です)


なんかもっと
「を」は最初敵だったけど4話で味方になって出てくる
とか
「を」は孤高の剣士タイプ
とか
「を」の3画目のカーブのところをハンモックにしたい
とか
「を」で雨宿りするならここの部分
みたいなことを言えればいいんですけど、「なんかいい」としか言いようがなくてすみません。
次回は「あ」「め」「ぬ」について語り合いましょう。
それではまた。

いろいろな「を」
『変体仮名の手引』(中野幸一編 武蔵野書院)より

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