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整骨院

腰が痛すぎる。
症状で検索すると「反り腰」か「椎間板ヘルニア」が出てくる。
この僕がヘルニアなわけないので(希望的観測)、オイラは反り腰学園芸能コースの皆勤賞・腰野板美だい!ヘヘンッ!ってなわけで整骨院へ行くことにした。

整骨院を選ぶのは難しい。
まず選択肢が多すぎる。
駅の近くで「整骨院」と検索するとコンビニ以上に出てくるからすごい。整骨院の隣に整骨院があることも珍しくない。ていうか名古屋はコンビニが少なすぎる。なんなんだ。

そしてそれらの中から、店内写真などを見て、みつをっぽい味のある筆文字で「ありがとう」とか「まごころ」「感謝」「ぬくもり」みたいな言葉が書いてあるポストカードを掲示していない店舗を見つけなければならない。
別に書いてあってもいいんだけど、書いてないに越したことはない。
あと「天然石の波動によるヒーリング効果」みたいな文言もお断り。

最後に何より、施術してくれる先生が若くてかっこよい男であること。
と、自分で書きながら「最悪すぎる…!」とびっくりした。
エイジズム、ルッキズム、セクシズムの三重奏。
小学生のときから性格診断テストで「物事の決定は、感情よりも論理的に正しいことが重要だ」に「そうだ」を選択し続けたけど、全然そんなことなかった。正しさより感情を優先させてしまう。

そんな反省もしつつ、通うべき整骨院を決めた。
入店するとラーメン屋みたいに「新規様ご来店でーす」「あーい」「あーい」「あーい」と輪唱が始まって、そっちかーとガックリしたけど(別に何か予測があっての「そっち」ではなく、概念としての「そっち」)、お店のサイトで見たままの若くてかっこよい先生が登場してどうでもよくなった。


整骨院では最初に横から全身の撮影をして、写真を見ながら骨盤の傾きなど解説してくれた。
「骨盤が10度の傾きであるべきところが20度になってますね…」
と説明してくれるけど、正直そんなの耳に残らず、僕は自分の横顔が不細工すぎることに衝撃を受けていた。
自分の横顔が本当に不細工で、イラストにして分かりやすくしようと思ったけど本当にそっくりに描けすぎてしまい、簡潔な絵であるからこそ醜さが浮き彫りになり具合も悪くなってきたので載せません。
特に横顔なんて普段目にしないから新鮮に気持ち悪かった。
それに比べて先生の一重の目のかわいいことかわいいこと。

僕の好み(この言葉は使いたくないけど、伝わりやすく言うなら性癖)に、「体を両手で掴まれる」がある。
昔職場の廊下の角で、人とぶつかりそうになったことがあり、そのとき相手の人が「わー!」と言いながら咄嗟に僕の肩を両手で掴んで衝突を回避してくれた。僕はその人のことをすぐ好きになってしまった。
なので施術されると、そう、当然すぐ好きになっちゃう。

整体マッサージが終わったあと、
「3ヶ月集中的に通ってもらい、反り腰改善しましょう!」
と言われ、するするすると7万円の回数券を購入。

1週間で4回通った今日の段階で、腰の痛みは全然改善されてない上、新たに電気治療の回数券10万円を打診され、かなり今怯えている。
何が怖いって、先生に手を触られるたびに人の体の柔らかさと温かさにマジでうっとりとろけているので、ホイホイと回数券を購入してしまいそう。
10年ぶりくらいに触れる人のぬくもり。

整体からの帰りの電車の中で、高校生たちが「松本がまた振られた」と話をしていた。
話を聞くと、松本くんは、同じ相手から7回告白されて、7回とも付き合って、7回とも相手から振られているらしい。

僕が中学生のとき、同級生たちは「告った方が主導権を持っているので、告った側から振るべきだ」「いや、告った方が後になってやっぱやめたと振るのはおかしい」という論争があった。
結局みんなどういう結論を導き出したのか分からない。僕はそういうのを知らないまま死んでいく。セックスもマリオカートも人狼もしないまま死んでいく。

整体の施術中に見られてもいいようにゴムがよれてないパンツを選んだり、腰元に香水を振ったり、人の手ってあったかいんだぁ〜なんて喜んでいる僕がアホのようだ。

3ヶ月後、腰が改善してるか僕が更に回数券を買わされているのか、乞うご期待。

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