200121_noteドラフトユニコーン記事アイキャッチ画像_v4

【ユニコーン編】海外PropTech資金調達動向 vol.1

みなさんこんにちは、PropTech特化型VCを運営する株式会社デジタルベースキャピタルのアナリスト渡邉啓太郎です。
本記事では、グローバルにおけるPropTech業界のユニコーン企業についてご紹介します。

はじめに

本シリーズでは、海外のPropTech業界(Property×Technology,不動産テック)におけるユニコーン企業を数回にわたって紹介します。
ユニコーン企業とは、評価額がUS$10億(約1,100億円)以上で、未上場のスタートアップ企業を指します。調査会社CB Insightsの「The Complete List of Unicorn Companies」によると、2020年1月時点で、世界のユニコーン企業数は440社。そのうち中国の企業数が104社、米国の企業数が216社とこの2カ国で7割以上を占めています。
今回は不動産テック、建設業界のユニコーン企業を数回にわたって紹介するシリーズの第1弾として、5社を紹介します。世界中で注目を集めるユニコーン企業が、PropTech業界のどのような領域でどのようなサービスを提供しているのか、その動向を捉えることが目的です。


米国、中国を中心に、ブラジルにもユニコーンが存在。建設業、物件仲介事業、シェアオフィス事業と様々な領域の事業が注目を集める。

Crunchbaseや各社ウェブサイト等から2020年1月時点において、推定評価額US$10億以上で、未上場のPropTechユニコーン企業をまとめます。
2020年1月時点におけるPropTech業界のユニコーン企業のうち、5社について個別に見ていきたいと思います。

Katerra

webサイト_Katerra

企業名:Katerra
設立年:2015年1月
本社:米国 メンロパーク
推定評価額:US$3B (2018年1月)
直近の調達概要:シリーズD、US$134M (2018年9月)
事業概要
フレクストロニクスやテスラでCEOを務めたMichael Marksらによって創設され、現在はモトローラモビリティやGoogleでサプライチェーンを担ってきたMark RandallがCEOを務めている。
住宅建築において、部材調達から建設施工まで「ジャスト・イン・タイム」方式を導入し、サプライチェーンを最適化した建設版トヨタ。現在アメリカ、カナダ、インド、中国、サウジアラビア、UAEの6カ国に36のオフィスを展開し、4,000人の従業員を抱えている。
従来の建築業界は、設計から施行までの各プロセスを異なるプレイヤーによる水平分業制で行なっており、仲介業者等を挟みコストや時間に無駄があった。Katteraはその全ての工程を自社で管理できるテクノロジープラットフォームを開発し、サプライチェーンの垂直統合を行う事で、仲介手数料などの無駄なコストのカットを可能にした。建築物の質を保ちながら、低価格かつ短時間で提供する事が可能となっている。カリフォルニア州トレーシーに新しい577,000 square foot(約5万3,000㎡)のコンポーネント工場を建設し、2019年から生産を開始している。年間12,500 multi-family unit(アパートの1戸)を生産する事が可能。
参考記事:Katerra HP

The We Company

webサイト_WeWork

企業名:The We Company
設立年:2010年2月
本社:米国 ニューヨーク
推定評価額:US$47B (2019年1月)
直近の調達概要:Debt Financing(負債による調達)、US$1750M (2019年12月)、Goldman Sachs
事業概要
企業向けにコワーキングスペースを提供するシェアオフィス事業のリーディングカンパニー。29カ国111都市に528ヶ所以上の拠点を有し、50万人の会員にコワーキングスペースやWeWork Commonsというコミュニティーを提供している。
WeWorkとしてサービスを展開していたが、2019年1月にThe We Companyに変更し、オフィスシェア事業のwework、共同生活型デザインアパート運営のwelive、小学校を運営するwegrow(後に撤退)の3つの事業に再編している。
料金プランはメンバーシップ制で、月々$45、$220、$350、$400の4つのプランを提供し、それぞれオフィスの立地や機能などが異なる。スタートアップ企業が主な利用者層であるが、Puma、マイクロソフト、アメリカンエキスプレス、ガーディアン、Airbnb、Uber等もユーザーである。
2019年9月にFounder-CEOであったAdam Neumannが退任し、Senior ExecutiveであったArthur Minson とSebastian Gunningham,がco-CEOsとなった。
参考記事:WeWork HP

QuintoAndar

webサイト_QuintoAndar

企業名:QuintoAndar
設立年:2013年2月
本社:ブラジル サンパウロ
推定評価額:US$1B (2019年9月)
直近の調達概要:シリーズD、US$250M (2019年9月)、SoftBank・Kaszek Ventures・General Atlantic・Dragoneer Investment Group
事業概要
ブラジルでインターネットを通じて保証人や保証金無しでマンション等の賃貸住宅物件を仲介するオンライン不動産賃貸仲介企業。
サンパウロ、リオデジャネイロ等、ブラジルの29都市に展開している。
ブラジルにおける従来の不動産賃貸契約では、家賃未払いリスクに対応するため、厳格な所得審査に加え、高額な保証金や保険料、連帯保証人が必要であり、賃貸物件をなかなか借りられず、手続きに長時間を要するという課題があった。
QuintoAndarは保険会社との連携や、独自開発のアルゴリズムによる審査システムにより、保証金、保険料、保証人不要の賃貸契約手続きを実現している。SoftBankの他にGeneral Atlantic等が主な投資家である。
参考記事:2019年1月10日,Forbes「Quinto Andar: The Brazilian Startup Changing The Rentals Market Plans Further Disruption」
2019年9月27日,LABS「QuintoAndar is already in 25 Brazilian cities and has plans for Latin America in 2020」

Danke Apartment

webサイト_Danke Apartment

企業名:Danke Apartment
設立年:2015年1月
本社:中国 北京
推定評価額:US$2B (2019年2月)
直近の調達概要:シリーズD、US$190M (2019年10月)、Primavera Capital Group・CMC Capital Group
事業概要
中国で若年層に支持されるアパート賃貸プラットフォームを提供。
中国13の都市で約407,000戸の住居を管理している。家賃と管理サービス料から収入を得ており、2019年9月末までの9ヶ月間の収益は、前年同期の16.7億元(約256億円)から198.8%増の49.9億元(約766億円)であった。
主に若年層社会人に、シェアハウスを賃貸している。3、4人の家族用にデザインされた住宅物件を、いくつかの物件に分割し、煩わしいメンテナンスの部分はDankeが負担する事で若年層の社会人にとって最適な住居を提供している。
賃貸取引のプロセスは、価格のアルゴリズム算定等、データドリブンなシステムを構築しており、情報の透明性と手続きの効率化を実現している。10/28に米国証券取引所にニューヨーク証取への上場申請を出しており、近いうちにIPOをすると考えられる。Ucommune、Tiger Global Management等が主な投資家。
参考記事:2019年3月1日, Tech Crunch「Tiger Global and Ant Financial lead $500M investment in China’s shared housing startup Danke」
2019年10月30日, technode「China’s Danke Apartment shared housing platform files for US IPO」

VTS

webサイト_VTS

企業名:VTS
設立年:2012年
本社:米国 ニューヨーク
推定評価額:US$1B (2019年5月)
直近の調達概要:シリーズD、US$90M (2019年5月)、Brookfield Asset Management・Fifth Wall・Tishman Speyer
事業概要
商業不動産のオーナーとブローカー向けに、テナントの賃貸契約取引とその後の資産運用業務を効率化するデータプラットフォームを提供。
世界のトップ100のクラウド企業の証であるForbes 2019 Cloud 100に選ばれている。
現在約100億square feet(約10億平米)、ニューヨークの約20倍の面積の不動産物件がVTSのプラットフォーム上で管理されており、世界35都市で35,000のユーザーが存在する。
Blackstone, Brookfield, LaSalle Investment Management, Hines, Boston Properties, Oxford Properties, JLL,CBREなど、世界の10大不動産オーナー企業のうち8社がクライアントである。直近の資金到達の目的は、ニューヨークの物件を対象にしたオンラインテナント賃貸仲介ポータル「Truva」の2019年秋でのローンチであった。
参考記事:2019年9月11日,Business Wire,「Tech Unicorn VTS Named to the 2019 Forbes Cloud 100」

おわりに

2020年1月時点におけるPropTech業界のユニコーン企業のうち、5社を取り上げました。米国、中国などにおいて、建設業やシェアオフィス事業、住宅物件仲介事業、データ管理サービス等の事業が大きな注目を集めており、日本国内にも類似のサービスを展開する企業が存在しています。グローバルにおいても、特殊なビジネスモデルを構築するものは珍しく、基本的には既存のビジネスにテクノロジーを導入する事による業務効率化がメインテーマの一つとなっています。


株式会社デジタルベースキャピタルとは
2019年に設立された日本初のPropTech特化型ベンチャーキャピタルです。人々の暮らしや働き方を豊かにするLaaSをテーマに規制産業(不動産、金融、建設)領域に関連するスタートアップへ投資しています。
主な投資先 X KitchenCLASADDressmodecasFUEL 等。

ベンチャー投資事業に加えて、大手企業向けのデジタルトランスフォーメーション、オープンイノベーションにおける戦略コンサルティングも行っています。
主な支援事例:ゼンリン、LIFULL、三菱UFJリースらによる次世代不動産情報インフラプロジェクト「ADRE」、一般社団法人第二地方銀行協会「SARBLAB」等。
PropTechスタートアップコミュニティPropTech JAPANの運営を行い、アジア最大規模のPropTech特化型ピッチカンファレンスPropTech Startup Conferenceを運営しています。

起業・資金調達のご相談、コンサルティング/リサーチに関するご依頼等はお気軽にこちらよりお問い合わせください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?