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【シリーズA編】海外PropTech資金調達動向 vol.2

みなさんこんにちは、PropTech特化型VCを運営する株式会社デジタルベースキャピタルのアナリスト竹下凜太郎(@rintaro_take)です。
本記事では、グローバルにおけるPropTech企業の資金調達事例についてご紹介します。

はじめに

本記事では、海外のPropTech(Property×Technology、不動産テック)スタートアップによるシリーズAラウンドの資金調達ニュースを中心にお届けします。【シード編】や【シリーズB編】の記事と合わせて、米国を中心として、海外ではどのような領域でスタートアップが立ち上げられ、次の資金調達ラウンドに進みつつあるのか、立ち上がりが見えた領域の最先端を捉えることが目的です

1月も米国でアパートホテルスタートアップが資金調達。ヨーロッパ地域でも、多くのPropTechスタートアップが資金調達を実施

Crunchbaseや各社ウェブサイト等から2020年01月にシリーズAラウンドで資金調達を実施したPropTech企業をまとめます。グローバルにおける中期段階の資金調達状況を見ることで、不動産・建設・金融のPropTech領域における最先端の動向を探ります。
2020年01月01日~01月31日にシリーズAラウンドで資金調達を実施した9社について個別に見ていきたいと思います。

Locale

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企業名:Locale
設立年:2016年8月
本社:米国  オースティン
調達概要:シリーズAラウンド US$11M (01月13日)、Amplo、Rogue Insight Capital等合計3社
事業概要
サンフランシスコやオースティンなど全米7都市においてアパートホテル(アパートとホテルの双方の設備を備えたホテル)を展開している。
事業形態としては、先月の記事にて紹介したDomioWhyHotelと基本的には同様である。
Localeのアパートホテルの特徴的な面の一つとして挙げられるのが、アメニティグッズにこだわりを見せている点である。宿泊者には厳選された商品を
提供しており、これらのアメニティはウェブサイト上でも購入することが可能となっている。
ここ最近の米国においては、アパートホテル事業を展開するスタートアップの資金調達が相次いでいる。その背景としては、Airbnb等の民泊の利用に慎重な潜在的な顧客層の存在が挙げられる。従来の民泊サービスでは、宿泊施設の提供者によって施設の質が大きく左右されていた面があった。Localeのような新興スタートアップは、この課題を解決することで潜在的な顧客の獲得を狙っている。
参考記事:THE WALL STREET JOURNAL

Luxury Presence

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企業名:Luxury Presence
設立年:2014年
本社:米国  サンタモニカ
調達概要:シリーズAラウンド US$5.4M (01月08日)、Switch Ventures、Toba Capital等合計7社
事業概要
不動産業者向けのwebマーケティングプラットフォームを展開している。
現時点では、ウォール・ストリート・ジャーナルが選ぶ不動産業者トップ100のうちの18のチームがサービスを活用している。その中には、1位にランキングされたビバリーヒルズを中心にビジネスを展開しているJade Millsも顧客として含まれている。
また、世界規模の証券会社4社より、推奨ベンダーとして認定されている。
Webサイト上に記載されている具体的な提供商品としては、ウェブサイトや宣伝広告等が挙げられる。また、提供サービスとしては、SEOサービスや物件ビデオ制作サービス等が挙げられる。

Sweepr

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企業名:Sweepr
設立年:2017年7月
本社:アイルランド ダブリン
調達概要:シリーズAラウンド US$8.8M (01月07日)、Amazon Alexa Fund
事業概要
コネクテッドホーム(IoTを活用し、家庭内の家電やデバイス等をコンピューターネットワークで接続した住宅)におけるカスタマーケアプラットフォームを展開している。
現在、コネクテッドホーム向けに普及しているテクノロジーの多くは、技術ごとにサポート体制が分断されており、Sweeprはその課題に取り組んでいる。具体的には、利用者からの問いかけにより音声対応プラットフォームを起動し、その後問題の診断や指示省やビデオを活用した技術サポートを提供する。
参考記事:EU-startups

Matera

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企業名:Matera
設立年:2017年
本社:フランス パリ
調達概要:シリーズAラウンド US$11.0M (01月15日)、Index Ventures、Bertrand Jelensperger等合計5社
事業概要
Matera(旧:iLLiCopro)
集合住宅管理用のSaaSプラットフォームを展開している。
このサービスは、所有物件の管理を業者に委託していないフランス国内の共同オーナーたちをターゲットとしている。
サービスの仕組みとしては、法定点検・会計・提携業者に関する物件の情報がプラットフォーム上に集約され、オーナーは各自のアカウントでアクセスをする。

Neighbor

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企業名:Neighbor
設立年:2017年
本社:米国 レヒ
調達概要:シリーズAラウンド US$10.0M (01月30日)、Andreessen Horowitz等合計3社
事業概要
アメリカ国内において、個人間の倉庫仲介サービスを展開している。
自らを倉庫版Airbnbと呼んでおり、事業形態はAirbnbと同様である。
貸し手側は、webサイト上に空きスペースの情報や写真を掲載する。借り手側は、場所や広さなどの条件を基に検索をする。
提供する空きスペースの広さには、非常に幅があり、小さい場所はクローゼットから大きい場所ではバスが駐車可能な駐車場まである。
このサービスの優れている点としては、Airbnb等のサービスと異なり貸し手側に大きな負担が無い点が挙げられる。倉庫の特性上、一度荷物が運びこまれるとその後の作業はほとんどなく、借り手と密接な関係を築く必要性も無い点を支持する人々が多く利用している。
参考記事:Business Insider

Home HT

HomeHT_スクショ

企業名:Home HT
設立年:2016年4月
本社:ドイツ ベルリン
調達概要:シリーズAラウンド US$11.0M (01月21日)、Capnamic Ventures、 EQT Ventures等合計4社
事業概要
ドイツ国内にてアパートのオペレーティングリースを展開している。
具体的には、webサイト上でアパート所有者よりリース貸し出しの申し込みがあると、物件データを基にオファーを提示し、合意に至った場合にはリース契約を締結している。この全てのやり取りはwebサイト上で完結される点に特徴がある。
オーナー側のメリットとしては、オファーの提示が非常に短時間で行われることや物件に入居者がいない状態でも毎月一定の金額を受け取ることが可能な点が挙げられる。

Capmo

Capmo_スクショ

企業名:Capmo
設立年:2018年
本社:ドイツ ミュンヘン
調達概要:シリーズAラウンド US$5.5M (01月30日)、Capnamic Ventures等合計2社
事業概要
建設業界用のソフトウェアをドイツ国内にて展開している。
主に建設現場の責任者をターゲットとしており、現場に関わる様々な関係者との作業の円滑化のための設計図の共有、現場における施工プロセスの管理、日々の進捗報告等のサービスを提供している。
また、建設現場でのデータ収集を活かした建設欠陥の発見サービスも提供しており、これらのサービスが単一ソフトウェア上で完結させられるようにしている。
現在、世界では今回紹介しているCapmoのようなConTech(建設×テクノロジー)分野が盛り上がりを見せており、2020年のトレンドとして予測されているのは、1)AR・VR導入の加速、2)多くの関係者の接続性の加速、3)スマート機器によるオンサイトデータ収集の加速である。
今回のCampoの資金調達は2)及び3)に当てはまっている。
参考記事:RolandBerger

LaborChart

LaborChart_スクショ

企業名:LaborChart
設立年:2014年
本社:米国 カンザスシティ
調達概要:シリーズAラウンド US$非公表 (01月31日)、Five Elms Capital
事業概要
建設業界用の労働力管理プラットフォームを展開している。
具体的なサービスとしては、労働者のスケジュール管理、作業進捗の予測や
作業予算の管理などを提供している。
建設業界は、ソリューションのニーズはあるものの、現状は選択肢が少ない状態にあり、LaborChartはそこに目を付け、サービス展開をしている。
参考記事:VC Daily News

Homeloop

Homeloop_スクショ

企業名:Homeloop
設立年:2016年6月
本社:フランス パリ
調達概要:シリーズAラウンド US$22.0M (01月22日)、Crescendix
事業概要
フランス国内にてオンライン不動産販売プラットフォームを展開している。
具体的な販売までのプロセスとしては、物件の所有者がオンラインフォームを記入すると参考オファーが24時間以内に届く。その価格が正当であると所有者が判断した際には、Homeloopの不動産の専門家が自宅を訪問し、終了後48時間以内に正式な金額のオファーがされる仕組みとなっている。このオファーに関しては、保証がされている。
フランス国内での個人間での不動産売買や代理店を通しての取引と最も異なる点としては、これらの取引方式では不動産の販売契約後10日以内であれば契約の取り消しが可能であるが、Homeloopの場合はオファー価格に変更が無いという点である。


おわりに

今回は2020年01月にシリーズAラウンドで資金調達を実施したPropTechスタートアップ9社を取り上げました。
2020年01月に関しては、ドイツ及びフランスを中心とするヨーロッパ地域でのPropTechスタートアップの資金調達が目立ちました。今後、ヨーロッパ地域でどのような分野が盛り上がりを見せるのかに世界的に注目が集まります。


株式会社デジタルベースキャピタルとは

2019年に設立された日本初のPropTech特化型ベンチャーキャピタルです。人々の暮らしや働き方を豊かにするLaaSをテーマに規制産業(不動産、金融、建設)領域に関連するスタートアップへ投資しています。
主な投資先 X KitchenCLASADDressmodecasFUEL 等。

ベンチャー投資事業に加えて、大手企業向けのデジタルトランスフォーメーション、オープンイノベーションにおける戦略コンサルティングも行っています。
主な支援事例:ゼンリン、LIFULL、三菱UFJリースらによる次世代不動産情報インフラプロジェクト「ADRE」、一般社団法人第二地方銀行協会「SARBLAB」等。

PropTechスタートアップコミュニティPropTech JAPANの運営を行い、アジア最大規模のPropTech特化型ピッチカンファレンスPropTech Startup Conferenceを運営しています。

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