『目』

暑い夏の朝、カーテンの隙間から差す日光でいつも起こされる。眠い目を擦りながら体を起こした。なかなか目が開かない。ふと気がついたが、今日は日光に起こされていない。自然と目覚めている。"目覚めている"と言ったが、まだ目は開かない。いや、違う。目はもう開いてる。眼球が無いのだ。だが、寝起きの俺は眼球が無いという存在しえない現実よりも、この夏の暑さを和らげる方を優先した。手取り10万の俺はエアコンなんて言う大層な製品は使わない。いや、使えない。こんな俺の頼れる友は、そう。『扇風機』だ。目は見えないが、大体の感覚で扇風機の位置は分かる。扇風機を付けた。「ピッ」という音と共に先程後回しにした"目が見えない"という問題が解決した。視界は開け、その視界に映ったのは、俺だった。だが俺が映ったのも一瞬で、部屋が回転を始めた。ここで頭の良い俺は気付く。回転しているのは部屋ではなく、この俺の"眼球"だった。俺の目は扇風機の羽目に付いていた。

あぁ、目が回る。

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