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リベンジ映画としての石井隆作品論

石井隆監督作品には、大きく分けて3つのジャンルがある。
1つは、「GONIN」、「黒の天使」のように、人生に行き詰まった男女の壮絶な戦いを描いたアクションノワール映画。
2つめは、「ヌードの夜」、「夜がまたくる」、「死んでもいい」のように、事件に巻き込まれながらも強く惹かれ合う男女をフィルムノワールタッチで描いたフィルムノワール。
3つめは、「花と蛇」、「人が人を愛するどうしょうもなさ」「甘い鞭」のように、セクシャルな面から女性の内面を描いたものの3つに分かれるが、重要なサブジャンルとしてリベンジ映画としての側面は見逃せない。
劇画家時代から石井隆は、女性が男性の不実さや欲望のために不幸に堕ちながらも、どのように這い上がって立ち向かうかを描いてきた作家である。(短編集「カンタレッラの函」に収録されている「ジオラマ」「輝く未来のために」など)
映画監督になっても、腐れ縁のヤクザと手を切ろうとする女性となんでも屋の関係を描いた「ヌードの夜」、様々な理由で男性に裏切られた女性たちが宝石強盗をきっかけに人生やり直しを図る戦いを描いた「GONIN2」、「夜がまたくる」、自分を暴行した男たちとの殺し合いを描いた「フリーズ・ミー」、自分の人生を狂わせた男たちを排除しようとした女性の狂気を描いた「ヌードの夜2」など、踏みにじられぶちのめされながらもより美しく強くなって這い上がって復讐を果たすヒロインを繰り返し描いてきた。
リドリー・スコット監督の「テルマ&ルイーズ」がお気に入りの映画だという石井隆監督は、アクションノワール映画の中で踏みにじられてもしたたかに強く生き延びて戦う中でより輝きを増すヒロインに、石井隆監督は奥さんを始めとする女性に対する憧れや夢やエールを込めているのだと思います。だからこそ、余貴美子や天海祐希や喜多嶋舞など俳優だけでなく男社会に悪戦苦闘する大人の女性に石井隆監督作品のヒロインは励ましと憧れになっているのだと思います。

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