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4000円の公演のこと

はじめに、この記事は若干、本当に若干、攻撃的な内容ですが、この記事の中で触れる公演の出演者や、雇われて参加している方々を非難する意図はありません。

過日、めちゃくちゃ大事な友人が出演している朗読劇を観に行きました。

会場はキャパ100くらいのスタジオ。チケット代が3500円とドリンク代500円。合わせて4000円。

チケット代にドリンク代が加算されるのはライブハウスでは一般的な感覚かもしれませんが、演劇の場合もバーやカフェが一体となっている場所で行われる公演ではよくあること。ドリンク販売で劇場さんに入る収益が使用料の一部みたいになってるパターンですね。

受付でお金を払い、ドリンクチケットをもらってバーカウンター的なところで飲み物と引き換えて観るスタイルなんだろうと思っていたら、普通にスーパーで買ってきたであろう市販のペットボトルの飲み物が並んでいて、そこから一本選んでくださいとのこと。午後の紅茶のミルクティーにしました。

ふむ。

会場に入ると本当にただのスタジオです。椅子はほとんどパイプ椅子。朗読劇なので舞台上にはマイクが立っていて、美術はほぼ何もありません。

うむ。

朗読劇が始まります。劇の感想は今回の話の論点ではないので差し控えておきますが、1つだけ。稽古はしたのかな?と思いました。

後で友人に聞いたところ、本当に1週間も稽古はしていないらしい。

うむむ。

カーテンコールが終わって客席に明かりがついた瞬間に、後ろの方に座っていた関係者達が一斉にガタガタと座ってた椅子を片付け始めます。好意的に見れば役者面会のスペース作り、悪い見方をするなら次の回の準備。

うむむむ。

4000円の興行ですか?これが?

自分のような貧乏役者には4000円は安くない値段であると同時に、小劇場演劇の価格帯の中でも、チケット代を4000円以上にするのはある程度以上の勇気や自信がいる。その分4000円くらいの値段払うと、好みの差はあれ、観てよかったなと思えたり、素晴らしい体験をさせてもらえることも多いわけです。

なんていうか、4000円って、本来そういう値段なんだと思うんです。

繰り返しますが出演していた方々や雇われて参加している演出陣・スタッフ陣を悪く言うつもりはありません。単純に、どんなに好意的に予算割をイメージしてみても、これに4000円という値段設定をする説得力がどこにもなかった。

その分役者にいいギャラを払っているならまだ納得できますが、話を聞くとギャラどころか役者に申告枚数を買取させるノルマ制度で、チケットバック(役者個人のチケット売上金額から、規定のパーセンテージ役者の懐に入る仕組み)の利率もアホみたいに低い。

呼ぶのにたくさんお金がかかるような俳優さんが出演しているわけでもない。駆け出しの声優志望者さん達に、1週間しか稽古の時間を与えず、4000円の公演。

興行である以上、企画人の立場からするともちろん儲けを考えるのはとても大切です。ただ、ちょっとそれがあからさますぎやしませんか?4000円以上の価値を信じさせようとする姿勢が、どこかにあったでしょうか。

ドリンク代。公演や劇場のパッケージングに関わってるとか、公演前後の交流のためにスペースや時間を設けてるとか、そういう付加価値ゼロで飲み物だけ渡されるって。500円でペットボトルの飲み物買わされたのと同じなんですが。チケット代4000円って言うと高い印象つくから、ドリンク代とわざわざ分けて、100円以下の買値で飲み物用意して実質3900円くらいの売上にしてるだけですよね?

余韻に浸っているお客様もいるかもしれない中で、関係者の一団が我先にその空気を壊すのはどうなのでしょう。簡素な美術や照明に、そこまで大金がかかっているとも思えません。

繰り返しますが、お金は大事なんです。お金のことを考えるのは当然なんです。なんせ演劇はたくさんお金がかかります。劇場が大きくなって美術費や劇場費や諸々の経費が上がる、有名な人、実力のある人を呼ぶのにギャラに支払う金額も増える。だから採算をとるのにチケット代も上がる。

でもその値段以上のもの信じてもらえるように、公演の戦略だったり、純粋に芝居のクオリティだったりと日々向き合ってるわけです、僕達は。

儲けを、ちゃんと真摯に考えて欲しい。舞台公演で食い物になるのは、出演する役者じゃなくて、その役者さん達を観に来るお客様です。そして朗読劇でもストレートプレイでもミュージカルでも、売れてても売れてなくても、お芝居に携わる人はきっと少なからず、劇場に足を運んでくれる人が1人でも増えて欲しいと、思っているんです。

そのチケット代高いと思わせたら負けなんです。そういう勝負を常に真剣にしてるんです。演劇を好きになって欲しいんです。言葉でも空気でも好奇心でも、何かをここから持ち帰って頂きたいんです。値段がいくらでも、創り手はそのプレッシャーや責任といつも向き合っているんです。

でもこの公演だけじゃない。少なくない、チケット代の価値を信じさせてくれないものが。勝負して負けたなら、いいんです。それ信じて貰おうと頑張って、上手くいかなかったなら、観客としての自分はしょうがないと思うし、前向きに観劇します。でも、そもそも勝負の土俵にすら上がらずに儲けだけを取ろうとするスタンスの興行が多すぎる気もするし、増えてきた気もします。

キャラメルボックスみたいに真摯に演劇とお客様のこと考えて、演劇の裾野を広げてくれた劇団の運営会社が経済難に陥って、こういう興行を続ける団体が懐を膨らませていく。そういうものと言われればそれまでですが、どうしても納得したくはないなと、思いました。

長々書きました。書いてみたけれど結局僕にできるのは面白い芝居に出て、面白い芝居を創って、演劇を好きになって頂くだけです。偉そうに書いたからには自分は、真剣に値段の土俵で切り結びます。Ammoは10月。ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマンが7月末。演劇面白いなって、思ってもらえるように頑張ります。

お読み頂きありがとうございます!






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