夢も現実も、なにも見ない

「二人分も一人分も大して変わらないから」と、「洗濯好きだから」と、毎日続けた洗濯も、洗い物も、たぶんなにかしらの見返りを求めていた。 「これだけ尽くせば」なんて期待をしていた自分に反吐が出る。「友達と飲むときのネタに」なんて言い聞かせている自分にも、吐き気がする。

結局残ったのは、半笑いで「いつも家事ありがとう」と一言を投げつけられたみじめな私。彼の半笑いには、「どうせ暇なんだろう」という皮肉がたっぷりと詰まっている。私は知ってる。

私は、彼に、見下されていた。

恋人だからと、人生を共に生きていくからと、見ないふりを続けた。恋人でなくなった瞬間、見ないふりを続ける意味はなくなった。なのに。私はそれを直視できない。それは、私が未だに彼に依存しているからか、依存できる相手を失った現実に耐えられないからなのか。答えは、また見ないふりでごまかした。

一人しかいないの家の中で、彼の洗濯ものを洗う。ふと顔を上げて目に入ったのは、鏡にうつる自分。ボサボサの髪。何時間寝ても消えないクマ。疲れ切った顔。 夢みた生活は、どんどんぼやけ、なにが夢だったのかももう思い出せない。

私が彼に見下されていたのは、私がレベルの低い人間だからではなく、彼がそういう人間だからだと思う。そう思いたい。自分に自信があるわけではない。けれど、彼が他人を見下す瞬間を何度も見てきた。だから、私に対してもそうなんだろう。こんなこと、もっと早く気づいておくべきだったのに。何度見ないふりをしてきたんだろう。

いままで見ないふりをしていいことなんて、きっとなかったのに。いつからこうなっていたんだろう


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