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はじめてのギャラは500円でした(8)

表参道のB8出口から上がってきたら、思っていたより、
子どもの城が遠くてびっくりしました。


子どもが赤ちゃんだった頃はよく連れて行ってた場所だけど、
いつもは渋谷駅から坂道をベビーカー押しながら上っていたせいか、
距離感の印象がずいぶん違いました。


入り口に喫煙エリアがあるのも、上の階に会議室があるのも、
このとき初めて知りました。
プレイエリアは閉館時間を過ぎていて、いつもなら響き渡っている子どもの声が、一切しないエレベーターで8Fへ。

エレベーターのドアが開いたら。

すごく若い人たちがものすごくたくさんいて、腰を抜かしそうになりました。

しかも、ほとんどが男性。

(場違いなところへ来た・・・)

オドオドしながら受付をすませ、講義のレジュメと一緒に、
例の課題を返してもらいました。


A4の用紙の端っこへんにヘロヘロになりながらヤケクソで書いた、
自分の小さい文字と再会したら、今すぐ帰りたくなりました。

本当に、本当に、帰りたかった!!

でも、カラダの方は、気持ちを無視して、ずんずん教室に入っていって
前から2列目の空席にバッグを置いたんです。(裏切り者!)


後ろを見ると、かなり広い部屋が、ほぼ満席。
100人以上はいたと思います。

コピーライターになりたい人が、こんなにいたなんて。

もう帰りたい。


広告業界を目指す若者たちですから、さすがにみんな社交的で
まだ第1回目の講義が始まる前なのに、
ワイワイ盛り上がっているグループがあちこちに見えました。

ここに子持ちで無口なオバサンなんて、場違いすぎる・・・


早く帰りたい。

ってか、もう、消えたい。


受講する人たちがどんな人たちなのか何の予想も立てずに行ったくせに
思っていたのと違うような気がして、気分が暗くなりました。

これから、この講座を40回、半年間も受けなくちゃいけないなんて・・・

ところが。

講義が始まってみたら、すごく面白かったんです。

業界トップの現役コピーライターが登壇して、レジュメの解説と共に
ご自身の過去の作品をどんどんスライドで見せてくれるの。

この案件は、どういう経緯があって、何をどう考えて、
誰とどんなやり取りやプロセスがあって、この形になったのか・・


聞いているうちに、なんとなくわかってきました。

同じコトバを扱うのでも、自己表現と広告表現は、ぜんぜん違ってて。

カッチョいいコトバがコピーなんじゃなくて。
むしろ、そんなことは二の次で。


言うべきことが定まった先に、
はじめてコトバが与えられるんだってこと。

コトバを磨いて光らせても仕方なくて
言うべきことを削り込む、視点のナイフを磨くんだってこと。


こりゃー、売れないはずだわ。

チラシっぽく作ってたけど、あれは、チラシじゃなかったんだ。

わたし、めちゃくちゃ場違いだけど、でも、来て良かった。(でも、場違いだけど)

来なかったら、きっと、一生分からなかった。(でも、帰りたいけど)


感激のうちに1回目の講義が終盤に入り、
例の課題の、優秀作が発表されることになりました。

この講座では、毎週必ず課題があって、トップ10作が発表されること、
優秀作品に選ばれると、金色のエンピツが1本もらえることも、説明されました。


エンピツかー

まっ、もらっても鉛筆だからね。しかも1本だし。
気にしない! マイペースでいこっ!


10位から順番に発表された課題のコピーは、
なるほどと思うもの、クスッと笑ってしまうもの、
人それぞれで、なかなか面白かったです。


そういえば、大学のとき「広告研究会」ってあったなあ。
なにやってるのかと思ってたけど、こういうことしてたんだな、きっと。


3位以上では、自分の作品についてのプレゼンもあって
みんな若いのに、やっぱりけっこう勉強してるんだなーと感心しました。
よくまーこう、スラスラ喋れるもんだ。考えてるんだなあ。


講師の先生が、最後の金エンピツを手に取りました。

「じゃ、一位は」


わたしの名前が呼ばれました。


・・・・え?


てなことで

めくるめく引き算の挙げ句、遂にやっと

鉛筆1本、GET。

じゃっ・・・・誰かまだ読んでくれてるようなら(笑)、続く!

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