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一筆書きで巡る 善光寺〜奈良井宿 日帰りの旅

東京都区内発 東京都区内行

鉄道での旅に慣れた人におなじみの切符の買い方で「一筆書き切符」というものがあります。出発駅からいくつかの駅を経由して、また同じ駅に戻ってくる、という片道切符のことを指します。
多くの鉄道会社では、一枚の切符で長い距離を乗れば乗るほどキロ当たりの料金が安くなるため、単純に往復切符(片道切符x2)を購入するより「長い片道切符」を購入したほうが割安になることがあります。ただしこの買い方だと同じ路線を複数回通過することができないため、「一筆書き」のように同じ場所を重複して訪れないようなルートにする必要があります。
有名な一筆書きのルートとしては、北陸新幹線で訪れ、サンダーバードと東海道新幹線で帰ってくる金沢観光のルートがよく紹介されています。

今回はもう少し小回りのルートで一筆書き旅行をしてみました。目的地は長野県。

東京〜長野〜塩尻

行きはこう。北陸新幹線で長野まで行き、長野で「特急しなの」に乗り換えて塩尻へ。

塩尻〜新宿

帰りは、「特急あずさ」に乗車して新宿方面に。
(今回は諸般事情で立川で乗り換える切符で購入しました。)
東京から塩尻までの片道乗車券は4070円なので、今回買った切符(8580円)は単純な往復よりも少し高く新幹線を使うので特急料金も割高ですが、長野や松本など色々な観光地を途中下車でめぐることができ、乗車時間も東京-塩尻間の往復と大差ないので、そういう意味でお得な切符になっていると思います。

今回の旅行では、さらに塩尻から切符を継ぎ足して、奈良井宿まで足を伸ばしてみました。奈良井宿は中山道随一の宿場町として大変有名な場所です。

塩尻〜奈良井

ここではその旅の道程を写真を交えて書いていこうと思います。今回も日帰り旅行です。

東京〜高崎(上越新幹線)

ぐんまちゃん

いろいろ前口上を述べながら、初手から北陸新幹線ではなく上越新幹線に乗車。ぐんまちゃんが待つ高崎で途中下車をしました。
今回の旅程ではこの後善光寺に訪れる予定なので参道で信州そばをいただいても良かったですしそれが一般的な観光客の正しい振る舞いな気もしますが、善光寺は御開帳の影響で人が多くて激混みになっているのが想像できたので、縁起の良さでは引けを取らない「高崎パスタ」をいただきました。はらっぱの赤唐DX。旨味と辛味の曼荼羅模様。

赤唐DX

高崎〜長野(北陸新幹線)

浅間山

浅間山の雄大な姿を車窓で眺めつつ、長野まで移動。長野は善光寺の御開帳が行われているということで駅総出、街総出でお祭りモードでした。
長野駅から善光寺までは思ったより近くなく、バスに乗られて10分くらい、かつての北国街道沿いを辿りつつ善光寺の仲見世通りまで運んでくれます。

長野駅〜善光寺大門〜善光寺
回向柱

訪れた日は平日だったのですが、仲見世通りや境内は大量の人人人でした。触ると前立本尊にふれるのと同じだけのご利益があるという「回向柱」にもたくさんの人が列をなしていました。

善光寺は、歴史のある古いお寺だ、という印象はあるのですが、なぜこんなにも人気があるのだろう、というのはよくわかっていませんでした。
今でも本当の理由はよく知らないですが、善光寺は多くの日本の寺社のように「○○宗」といった特定の宗派に所属しない無宗派のお寺である、というのが一つの理由のように思います。

月影や 四門四宗も ただひとつ

『更科紀行』松尾芭蕉

芭蕉の句にもあるように、宗派にこだわらず広く門戸が開かれていることで、多くの方々の信仰の場になっている。これが善光寺の人気の理由のひとつなのかなと思います。
善光寺の参道を歩いていると道の左右に多くの宿坊があり、「○○講」と各地の善光寺講の張り紙がされている姿を確認することができます。多くの人の信仰の対象、娯楽の対象として今でも多くの人気を集めていることが伺えます。正直僕の世代だと「善光寺講」にピンとこないところもあるのですが。

現代的な偶像崇拝の一例

仲見世通りを歩いていると、前立本尊に負けず劣らず多くの子供たちの信心をあつめる「すみっコぐらし」の専門店が軒を構えたりしており、時代に寄り添う無宗派に開かれた崇拝の場として揺るぎない善光寺の強さを感じるところではあります。

善光寺参りをした後、時間があるようならぜひ訪れた方が良いのが城山公園。善光寺の東側にちょっと行ったところにある、とてもきれいな公園です。

善光寺の喧騒が嘘のように静かで心地よい場所です。カフェや美術館も併設されており、東山魁夷館では教科書に載っているような有名な絵なども拝観することができます。参拝で疲れた身を癒すには最適な場所だと思います。

長野〜塩尻(特急しなの)

「特急しなの」で、松本までおおよそ1時間。長野県を代表する2つの大都市は比較的短時間で移動可能ですし、一筆書き切符を使うと両方を手軽に訪れることができます。
道中、姨捨駅の周辺は車窓が美しくて有名で、「日本三大車窓」と称されているようです。

姨捨駅周辺からの車窓

まあこの写真は携帯から撮影したものでしょぼいですが、撮る人が良い機器で撮れば絶景の風景となると思います。
ちなみに三大車窓のうち他の2つは「根室本線 狩勝峠越え」「肥薩線 矢岳越え」ということのようです。

いずれも豪雨水害により廃線、もしくは運休中で、今は列車で訪れることはできません。実際に訪れることができる唯一の三大車窓が姨捨駅という感じです。そろそろ新しい「新・三大車窓」を選び直したほうが良い気もします。

今回の一筆書き切符の行程であれば松本は必ず訪れるべきなのですが、今回はスケジュールの都合でスキップ。塩尻まで足を進めました。
松本周辺は水に恵まれたとても素敵な街で、歴史的な建築物、多くの美術館、風光明媚な自然を楽しむことができる素晴らしい場所です。私が言うまでもなく。

以前訪れた大王わさび農場の風景。厳密に言うと安曇野市。

塩尻〜奈良井(中央西線)

奈良井宿のある奈良井駅には「特急しなの」が停車しないため、塩尻で各駅停車に乗り換えて向かいます。切符的には塩尻で途中下車して、別途購入した奈良井までの往復切符を使用します。

奈良井宿は、中山道69次の34番めの宿場。中山道のちょうど中間であり、地形的に急峻な鳥居坂を超える手前の宿場ということもあり、留まる人も多く、大変に宿場として栄えた場所のようです。その様は「奈良井千軒」の言葉でも有名。

奈良井宿では、江戸時代の風情を残す昔ながらの建物と、昔ながらの建物っぽい立て付けに表だけ設えた建物が立ち並んでおり、なかなかの風情です。
個人的に関心したのは、奈良井の人は本当にこの建物でみな日々生活をしているということです。いかにも観光客向けといったお店がかなり少なく、昔ながらの宿や名産である漆器を取り扱うお店がいくつかある以外は、一般の方の住居や生活に必要な施設が多く立ち並んでます。

これらの風情ある建物の中を体験したい場合、宿に泊まるという選択肢もありますが、史料館として開放されている建物にお邪魔するのも手軽な選択肢のひとつです。今回は「上問屋史料館」という場所に訪れてみました。

囲炉裏
二階の部屋
二階の部屋から奈良井宿のメインストリートを望む

問屋場は、江戸時代の宿駅制度を支える施設の一つで、ここでは常に何頭かの馬や人足をプールさせておいて、荷物の運搬や人の移動のために供していた、そんな施設のようです。今で言う旅客鉄道、貨物鉄道のターミナルの役割。「駅」という言葉に馬片がついているのも納得、という歴史です。

全般的に、奈良井宿は観光地然とした施設が少なく、歴史を感じさせる風情もあり、とても落ち着いた良い雰囲気の場所でした。
数十年前の昔であれば多くの田舎にこういう古い建物がまだ残っていてそこで生まれ育った方も多いかもしれませんが、私の世代だと一切未体験の世界で、ノスタルジーを感じるというより、とても新鮮な気持ちになりました。

奈良井〜塩尻〜東京(中央西線、特急あずさ)

という感じで、短い時間ながら色々と満喫したので帰宅します。

塩尻駅まで戻り、再度一筆書き切符で入場しなおし、「特急あずさ」で東京に戻ります。
塩尻駅は立ち寄っただけでほとんど何も観光しませんでしたが、塩尻周辺はワインの生産で有名な場所のようで、駅に大きなワイン樽のオブジェがある他、駅の構内にワイン用のぶどう畑があり見学可能です。塩尻も、今度訪れた時はゆっくりと訪れてみたい場所です。

日本で唯一 ホームのぶどう園

ということで、私も手土産にワインを購入し、電車の中でプチ酒宴を開く、というおっさん仕草を存分に発揮しつつ、帰路につきました。

今回の行程、私は時間もなく日帰りで敢行しましたが、最低でも1泊、できれば2泊して、各地の観光地をもっとゆっくり楽しむのが良いと思います。

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