【スプラトゥーン3】非公式大会って果たして本当に盛り下がっているのか?って話

事の始まり

スプラトゥーンのコミュニティにおいて、ここ数日の間にとある発言から始まった議論で様々な意見が飛び交っている。
今回はこれについて自分なりに思うところを話してみようと思う。
まず発端となったポストはこちら

スプラトゥーンのコミュニティにおいて「上位勢」あるいは「最上位勢」などというくくりで呼ばれるプレイヤーから、このゲームの非公式大会(この呼称はやや不本意だが伝わりやすいの敢えてこう呼ぶ)としては1、2を争う歴史のある「エリア杯(現在は正確にはAREA CUP)」の価値、そして開催頻度に対して改善を求めるようなポストがなされた。

要約すると内容はこうだ

・AREA CUPの開催頻度を下げて欲しい
・なぜなら開催頻度が高いことで、AREA CUPで優勝することの価値が下がっているような現状があるからだ
・価値が下がっているため同大会の優勝よりXPを高めた方がフォロワーが増えるという状況が起こってしまっている
・大会の価値を取り戻すためには「開催頻度落とす」方法しかないと思う
・AREA CUPの価値を守って(あるいは高めて)ください

※XPとはスプラトゥーン3におけるランクマッチに導入されているレートのこと

本題に入る前に、この発信を行ったご本人やAREA CUPのためにも訂正をいくつか挟んでおきたい。
まず、この発信が行われた翌日に、発言者とAREA CUPの代表、そして場をとりもつ立場として同じく大会を運営するそして気であるRe:Productionsの代表を交えた意見交換会が行われて、発言者の認識にもいくつか勘違いや知識不足があったことが明らかになっている。
ここをないがしろにしたまま本件について語られている側面もあるので私の知っている知識も含めて以下に書き出しておく。

・AREA CUPの開催頻度については直近最新のものでこそ従前の月1回のサイクルから月2回の開催に変更がなされたが、開催頻度自体は過去の歴史から見てもむしろ減っている状況にある

・「高頻度と低頻度にわけて…」のような意見も元の発言の中にはあったが、前述の月2回の開催をレギュラー開催のものとして、その実績を元にしたチャンピオン大会的なものを行うということをAREA CUPは定めており、それについても随時情報公開、発信を行っている
※これについて、多くの人が「これを知らなかった」という状況がある

ここからがちょっとややこしいのだが、この意見交換会を通じて「(AREA CUPという非公式)大会の価値を高めるためにこういう取り組みをやってみたらどうだろう」という提案がRe:Productionsの代表からなされるなどしてこれに対しては発言者も理解を示していたように思う。
しかしながらこれが「非公式大会が盛り下がっている。非公式大会の価値を高めよう」というやや主語がすり替わった形のテーマとして波及してそれに対して様々な人が意見を言うという状況が巻き起こっている。
いやあるいは私が誤認しているだけで、そこにテーマを差し替えるシーンがあったのかもしれないが、元々の発言としてのターゲットはあくまでAREA CUPであって非公式大会全般ではなかったのではないか?というのが個人的な意見だ。

競技シーンと、大会シーンという似て非なるもの

AREA CUPの関係者が知人に多くいる中で、こういった発言をするのは少し気が咎めるが、敢えてストレートに言えば確かに、現在のAREA CUPは最盛期に比べて少し盛り下がってしまっているという状況は否めないと思う。

Splatoon3というゲームタイトルだけで見ても、本タイトルで初めて開催されたAREA CUPの参加チーム数は実に130チームほどだった。
これに対して、最も直近で開催されたAREA CUPの参加チーム数は30に届かないといった状況になっている。
参加チームの数が大会の盛り下がりに直結しているかといえばそれがすべてではないとは思うが、例えば高校野球の地区予選に置き換えてもらえたら激戦区と言われる神奈川県代表(参加数170校弱)と最も参加校数が少ないと言われる鳥取県代表(参加数20校強)のどちらがよりすごく見えるかというえば間違いなく前者だろう。それほど量というものはその質はどうあれ説得力を持たせる材料としては力をもっている。

AREA CUPは今の非公式大会の傾向では少数派になっているオープントーナメントであり、原則としてすべてのプレイヤーに参加の権利が与えられている。
同大会は「ここがエリアの最高峰」という謳い文句を掲げており、Splatoonというゲームを競技として捉えた上でその中で最強を競う大会であるものとしてコミュニティでは認識されている印象だ。

一方で先に"少数派"と書いたように、コミュニティにおいてはこういった競技としてのオープントーナメントはその開催数を減らしている。
私はコミュニティに寄与する活動の1つとして今年の3月半ばごろから大会の情報をまとめているがここまでの5カ月で960件ほどの大会の情報を取り扱った中で、AREA CUPと同一の条件で開催されているオープントーナメントは(AREA CUPを除くと)16件ほどしかない。
AREA CUPが対戦ルールとして採用している「ガチエリア」というゲームモードを対象にした大会は480件(内AREA CUPと同じ4人制であれば220件)ほど開催されているのに…である。

この実績だけで見れば競技シーンとしてのオープントーナメントはやや停滞もしくは衰退しているというよう言えるのかもしれない。

逆にオープントーナメントではない、前述したXPを参加条件に組み込んで開催されている『制限大会』呼ばれる大会は120件ほど開催されている。
実に7倍強の開催数だ。厳密にレギュレーションを確認するともう少し開催数は少なくなると思うが、これを見ても順位を競うことをメインとした大会は今「強い人ほどその活躍の場が限られている」という現状にあることは否めない。
しかしながらその強い人達全員が限られた場に参加しているというわけでもないので、結果的にAREA CUPはこれまでよりも下火になってしまっている。

そしてそうなると露出の多い(ように見える)AREA CUPに盛り上がりがない≒大会の価値が下がった≒非公式大会は盛り下がっているという図式が描かれているのかな?というように思う。
だが、競技シーンを重視した大会の盛り上がりはそれそのものが大会シーンの隆盛を反映したものではない。競技シーン=大会シーンではない。競技シーンは大会という大きなくくりの中の1つに過ぎないのだ。少なくともSplatoonにおいては言えると思う。

非公式大会は盛り下がっているのか

私は一応Splatoon(Wii U)の頃からなにかしらの形で非公式大会に関わっているが個人的にはこれに対する答えは「NO」だと思っている。
参考までによく回顧されるSplatoon(Wii U)の頃の大会の開催件数を見て欲しい。わかり易いように現在と同時期のものを持ってきてみた
ちなみにSplatoon(Wii U)は2015年5月の発売であるため、これは発売から1年年と少し経ったころなので、ゲームタイトルのサイクル的にもそう大きく離れていないように思う。

8月1カ月当たりの大会開催数は20件とちょっとである。
これに対して、2024年8月の開催数がこのnoteを書いている現時点だとどれくらいあるのかと言うと実に170件強ほどある

単純に開催数だけ見てみればどう考えても過去シリーズタイトルで一番非公式大会の開催は盛り上がっている。

「じゃあ個別の大会の参加者数が減ってるんだろ!」っていう話で言えば
確かにそれはやや否めない。というかむしろ過去の大会は開催数が少なかったこともあって1つ1つの大会の参加者数が明らかに多い。
逆に今は個別の大会の参加者数こそ過去に比べると突出したものは減ったが、それでも170件ほどの大会が最低限開催できる人数あるいは一定以上の参加人数を集めて開催されていることもまたゆるぎない事実である。
単純な動員数の合計だけでみたらおよそトントン、あるいは今の方が多いのではないだろうか。

どう考えても単に盛り下がっているというには説明がつかない数字が出ているように思う。

大会に出ることの目的の変化

こうしてみると、非公式大会はむしろこれまでにないほど盛り上がっているように見える。大会の参加チーム数においてもいくつかの大会についてはこの供給過多とも言える開催数の中でも他と一線を画すチーム数を集めている。
そこには単純に「誰が一番強いかを決める」という目的で参加者を集めていた過去の大会シーンから参加者側の目的は少し変化したように思う。

もちろん順位を競うということ自体を完全に捨て去ったわけではない。
大会という形式をとる以上順位は出る。でもそれよりも「大会に出て楽しかったかどうか」が今は重要視されているのではないかと思う。

その視点で見た時、わかりやすく楽しくない経験としては「格上に一方的にやられて負けて終わる」ことだ。
だからこそ(場合によっては)1回戦からとんでもなく強い相手に当たって負けるかもしれない制限のないオープントーナメントは今のプレイヤーからやや避けられる傾向が強いように思う。
そういった層の参加の減少が先のAREA CUPの参加チーム数の低下に一役買っている。みんな「負けてハイ終わり」が潜在的に怖いのだと思う。

その一方で、仲のいい人と、属性の同じ人と、負けたとしても楽しかった。もしかしたら勝てたかもしれない惜しかった。と思えて負けても気分が沈まずに楽しめたと思える大会に需要が見出されているというわけだ。
あるいは大会においてもコスパやタイパといった効率性が重視されるようになってきたのかもしれない。
いずれにしろ過去シリーズでSplatoonに競技性を見出してバリバリしのぎを削ってきたプレイヤー達と、今のSplatoonの大会あるいはゲーム性に楽しさを見出しているプレイヤー達との間では大会というものに求めているものが違ってきているのだと思う。

だからこそ、今回の件から波及した内容に対する反応がものすごく賛否両論わかれてしまっている。
この件の着地点を我々は、あるいは当事者の彼らはどこに求めてもしくは期待しているのだろうか。
少なくともゲームシステムに文句をつけても今今はどうにもないらいことだけは明確だと思う。本格的に意見や提言として公式に突き付けるのであれば今のやり方は違う。
株主総会に凸れという話でもない

制限大会という幻想

Splatoon3における大会のトレンドは制限大会とイカップルにおよそその多くが占められている。
※イカップル …通常4人1チームのゲームシステムのところを2対2という参加プレイヤーを減らした状態で競う形式
なんなら、イカップルですらここ最近は制限を取り入れつつあるのが現状だ。
どうにもオープン(無制限)大会は肩身の狭い状況にあるように思う。

個人的には制限大会も、より上の層で勝つことを目指せない人への甘い幻想に過ぎないのではないかとも思う。
今回の件でよく引き合いに出てくる「Splatoon(Wii U)の自体はS+99がカンストで、その中で一番誰が強いかを決めようぜが大会だった」をより狭い範囲でやっていることになる。仮にその中で勝ったとて結果それは少なくとも「一番強い」かと言われると疑問が残る。
もちろんそこで勝ったら次のカテゴリー、そしてまたそこでも勝てば次のカテゴリーというというようにステップアップしていきついには無制限大会に挑んで実績を!という形になるのであれば参加に意味や意義があるのかもしれないがそうはなっていないように見える。
じゃあ制限大会に挑む意味、勝つ意義というのはどこにあるのだろうか?

…とこれは本質からは逸れるがこのあたりも考え直す必要があるようには思う。

蔑ろにされるトッププレイヤー達

この件で明確になったのは今のコミュニティにおいていかにトッププレイヤーとそれ以外のプレイヤー達の意識に溝があるかということだと思う。

特に大会が上位のためにあると思っているというような発言があったが、先ほども書いたようにむしろ今の大会は上位以外のために開催されている。
なんならトッププレイヤー達はその活躍の場所を失いつつある。

だが、大会ひいてはSplatoonというタイトルが盛り上がるためにはトッププレイヤーは必要だ。
これはゲームに限らず競技と呼べるものは総じてそうだが、その競技を代表するような競技者がいないものはコンテンツとしては継続していかなくなる。
リアルスポーツなら女子野球がそうだろう。プロリーグみたいなものまで作られたが結局のところしぼんでしまった。新規や視聴者、観戦者を強烈に引き付けるプレイヤーがいないことはそのコンテンツを衰退させていく。

だからトッププレイヤーの存在も盛り上がっていくには必要なのだ。
仮にそれは普通に遊ぶプレイヤーにはまったく関係ないことだとしてもゲームタイトルが注目される価値になればその恩恵は得られるはずだ。

もちろんトッププレイヤーもその存在として見合う立ち振る舞いが必要だ。
ただゲームが上手ければいいというものではないというのは間違いない。
自浄作用みたいなものをコミュニティにもたせることも必要だと思う。
大会の話とはややそれるが、ややコミュニティに関わる人間がいくつかの層で隔絶されてしまっているように思う。
このあたりも「これから」を考えるなら改善していかなければならない課題だ。

結論

非公式大会が盛り上がっていないというのは主語が少し違う気がする。
今の課題はトッププレイヤーが活躍できる場が少ないことだ。

大会開催数だけで見ればスプラトゥーン3は過去シリーズで最も盛り上がっている。これは数字で見れる事実だ。

だが、誰かを蔑ろにしないようになっているかというとそこには足りていない。現状一番犠牲になっているのはどちらかといえばトッププレイヤーだ。
だからこそ今回の発信があったのではないかと思う。

解決方法は選択肢を増やしてあげることだと思う。そしてその選択肢をトッププレイヤーに認識してもらうことだと思う。

というわけでトッププレイヤーのみなさん、私は大会の情報をまとめるアカウントをやっていますのでよかったらフォローしてみない?(唐突なダイマ)


閲覧ありがとうございました


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