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ライオンと猫(今日的寓話)

2019年の冬まで、人類は流行りの風邪をひいたら、家で素直に寝て、大汗をかいて、その後、徐々に体力を回復させていた。医者も、「風邪に特効薬はありません。」と、常識を語っていた。

しかしその同じ医者たちが、2020年初頭から現在に至るまで、人々を風邪でもないのに、ホテルに隔離したり、入院したりして、さらに、自動車事故で死んでしまっても、流行り風邪が原因で死亡したと記録するようにもなった。

これを例えで説明するなら、「裏通りにいる野良猫と凶暴なライオン」というものになる。まあ、しばらくその話を聞いてもらいたい。

◆裏通りにいる野良猫と凶暴なライオン
2019年末までの人々は、「裏通りにいる野良猫」を見ても、ただ無視して通り過ぎるだけだった。たまに、猫好きな人が、野良猫に声をかけて撫でようとして、手を引っ掻かれ、たまたま、それが原因で皮膚が炎症を起こしてしまい、慌てて「皮膚科」で治療されたりしていた。さらに運悪く、悪性の菌が体内に入ってしまい、入院したなんてこともあったかもしれない。

でも、そんな事例があったとしても、人々は裏通りの野良猫を見かけても、何ら怖がることもなく、ただ「あ、あそこに野良猫いる」と思っただけだった。

ところが、2020年初頭から、人類は野良猫を見ると、大騒ぎをし、口に布を巻き付け、手をアルコール消毒し、レストランになぜか、透明な板を設置するようになった。

まるで、裏通りに「凶暴なライオン」が多数徘徊しているように、人々は、人気のない(猫気のない)野原にいても、顔に布をあてがうようになった。なぜ、口の当て布が凶暴なライオンから身を守るのかは、そもそも不明であるのだが。

さら、2019年までの「裏通りの野良猫」が、突然「凶暴な人食いライオン」に変身したという証拠はどこにもないのだが、テレビと新聞が、「今日、3000人が、新型ライオンに食べられて入院しました。」と連呼する。さらには、「新型ライオンを目撃した人は、即、隔離せよ。」というお触れさえ出るようになったのである。

裏通りの野良猫をみて、それが凶暴なライオンであると、実際に「目撃」などできるわけがないのだが、2020年以降の人類は、突然に脳内でそのように変換されるのだという「科学的理論」を、自称専門家たちが、毎日話すものだから、人々は、「他県から、恐ろしいライオンを目撃した人が来るらしい。そんな奴らは、危険だから追い返せ!」などと言いながら、他県ナンバーの車に、「早く出て行け!」という張り紙を張るようになったのである。

さて、今日も裏通りには野良猫がいる。その多くは平和的であり、昼寝をしたり、毛づくろいをしたりしながら、変わらず生活している。一方、野生のライオンは、アフリカの大地で狩りをしながら、周りの動物たちと共存している。もちろん、ライオンの餌食となる草食動物は毎日一定数存在するのだが、それでも、アフリカの大地から、ライオンも草食動物もいなくなることはない。それぞれが、増えたり減ったりしながらも、強欲な人間が草原を開発して都市を作って、つぶさない限り、それぞれが、生き抜いてゆくのだ。

さて、いつまで、私たちは、「裏通りの野良猫」たちを目撃したり、撫でたりするなら、即刻入院しなければならないのだろうか?なにしろ、野良猫を目撃したことを、鼻の粘膜の検査で明らかにできるということなのだが、そんな不思議な検査方法が、世界中で行われていることを、だれも変だとは思わないようだ。

さらに、可笑しなことに、不思議な液体を体内に入れると、もう、野良猫を見ても怖くないというのだ。少しは怖いかもしれないが、定期的にその液体を体に入れれば大丈夫というのだ。それで、なんとお年寄りから順番に、ほとんどの人がその液体を体に入れたというのだ!

そもそも、野良猫をライオンとして見なければ、そんな液体は一滴も必要がないのだが、何で、その液体で、その奇妙な脳内変換を、また変換しなければならないのか?ひどいことに、その液体を体に入れた(何回も)の証明書がないと、会社を首になったりするらしいのだ。

一体、人類に何が起こったのか?

よくよく、耳を澄ませば、裸の王様を、裸であると指摘する声はあるのだが、それに聞く耳を持つ人が圧倒的に少ないことに、私は嘆息している。

かく言う私も、はじめのころ、「凶暴なライオン」のことを、隣国のニュースで知って結構恐れたものである。一時は、都会に行くこともやめたくらいだ。でも、ある時から、野良猫が野良猫であることに気が付いた。4コマ漫画や配信動画で、この新型ライオン「騒動」の真意を教えてくれる方々がいたからだ。そして、普通、ライオンは動物園の檻の中にいて、それが脱走しない限り、普段の生活はそのままで良いということを思い出したのだ。

野良猫は野良猫である。

この事実が、どうにも今の人々には受け入れられないのだ。

これは、世界の七不思議を超えた、摩訶不思議な魔術に違いない。

あなたは、今でも、このマジカル・ミステリーツアーの参加者だろうか?

今、作曲するなら、タイトルは「野良猫・ラプソディ(狂詩曲)」というタイトルになるだろう。

(おわり)






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