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基礎知識Vol.9 反社リスクを理解する 【前編】

初回に「何故、反社チェックをしなければならないのか?」と題したお話でも、反社リスクについて触れさせていただきましたが、今回は反社会的勢力との関係を持つことによるリスク「反社リスク」について、もう少し詳しくお話させていただきたいと思います。

【何故反社リスクを理解しなければならないのか?】

反社チェックを危機管理の手法として捉えると反社リスクを理解するうえで大切なのが、その根源となる「危機管理」を理解しなければなりません。
何故なら、危機管理は、「何が危険で何が安全であるか、その危険によってどんな被害が生じるのか」ということを理解しなければ不可能であるからです。

危機管理は、その危機に対する段階(Phase)に応じて、以下の二段階に分けられます。

第1に、危機的状況の未然防止(回避)など日頃の備え(取り組み)である
Phase1 「危険管理(RiskManagement)」

第2に、危機的状況に陥ってしまった場合における被害の拡大防止・軽減、早期終息、被害回復、再発防止など発生した危機に対応である
Phase2 「危機管理(Crisis management又はDamage Control)」

危機管理は、危険と危機に対応した経験に基づいて実施していくもので、危険原因(不適切行動)・危険が危機に発展した原因・経過(経緯)の洗い出しと評価→危険・危機の定義→危険管理手法の策定・周知・徹底→危機対応→再発防止で振出しに戻るという危険・危機回避のPDCAサイクルと言えます。
そして、危機管理は日頃の備えである日々の取り組みがその大半を占め、何も起きなくて当たり前、何か起きてしまった時点で上手く治めることが出来たとしても、成功とは言えません。

以上のことから導き出された結論が
危機管理は「何が危険で何が安全であるか、その危険によってどんな被害が生じるのか」ということを理解しなければ不可能
ということなのです。
「何が危険で何が安全であるか、その危険によってどんな被害が生じるのか」ということを危機管理についての理論における学術的な呼び方は、「危険感受性(Risk Sense)」といい、その醸成は、経験に因るといわれています。
また経験を重ねて得た危険感受性は、既知の危険に対する感受性のみならず、第六感など呼ばれる未知の危険を予兆として予測・察知する感性の向上にもつながると考えます。

【「危険感受性(Risk Sense)」は教育・訓練により補える】
危機管理に必要な「危険感受性」は経験に基づいて養われるとお話ししました。
しかし、警察官や消防士などのように常に危険と隣り合わせの職に就く人と違い、事務職など危険と距離のある人が危険・危機に関する経験を重ねるには、時間が必要です。
危機管理の基本的理論の一つ「ハインリッヒの法則」(1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常(ヒヤリ・ハット)が存在する)を基に考えると気が遠くなるほどの経験が必要となります。
そして経験した危険や危機が致命的な事態であった場合、その人の経験(人生)は未完の状態で途絶えてしまい蓄積されることはありません。

【危険感受性の涵養】
そこで、経験を補うものが「教育・訓練」であるとされています。
企業危機管理における「教育・訓練」として一般的なものを挙げてみます。

【ヒヤリハット活動】
日常業務のなかで、実害は発生しなくとも危険や危機の原因となった異常(危険や危機の原因となった不適切行為や危機の不具合などの兆候)を日常業務の中から洗い出して評価し危険・危機の原因として定義し、その未然防止策を共有し危険・危機を芽のうちに摘み取る活動。
情報収集はヒヤリハット報告書など書面による報告を基にし、処分など不利益取り扱いを忌避するための事案隠しなどを防止するため、実害が発生していないケースであることからも、報告に基づく処分やけん責をしない配慮も必要です。
情報の評価・定義付、未然防止・改善策の策定は、担当者単独の判断よりも担当部署・関係部署のミーティングによることが効果的な結果を導き出します。
情報共有は、報告者のプライバシー保護に配慮するとともに、報告者に対する不要なけん責やイジメなどを避けるため報告者は匿名扱いとし、報告書を集約した小冊子「ヒヤリハット集」や社内報や定期的なミーティングなどにコーナーを設けて文書・口頭での紹介が適切と考えられています。
また、その際に、危機管理担当者が司会・進行を務める危険防止検討会など一方通行にならない教育に配慮することで、より効果的な教育・訓練なると考えられています。

【危険予知訓練(KYT)】
略称のKYTは、Kiken Yochi Kunrenの頭文字という何とも間の抜けた略称ではありますが、危険感受性の涵養のために有効な教育・訓練として評価されています。
ヒヤリハット活動などで収集した不適切行動や危険原因・兆候について、把握された時の発生直前の状況をイラスト、写真、動画などで再現し、潜在する危険を予想させ、その予想の根拠と未然防止策を説明させる。
KYTは個別の実施も可能であるほか、グループ討議による実施も可能であり、実施者があらかじめ用意した正解を提示するだけでなく、教育・訓練の受講者の意見を聞くことで、未然防止策がより充実することも期待できます。

少し長くなってしまいました…この続きと反社リスクの詳細については、機会を改めてご紹介させていただきたいと思います。

最後まで記事をお読みいただいてありがとうございます。

それでは、次回をお楽しみに。

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