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行く気のなかった場所が最も行きたい場所へ〜なぜサッカー未経験の自分が鹿島アントラーズに興味を持ったか〜

なんで行かなきゃいけないんだ…

これが小6の11月に初めて茨城県立カシマサッカースタジアムに向かう時の感想だった。まさか、この日以降自分が鹿島アントラーズというJ1クラブを応援し、ほぼ毎年1回はカシマの地を訪れるとは思いもしていなかった。この日まで自分の父親が鹿島アントラーズというJリーグチームに興味を持っていることを知らず、自分自身は全く興味もないのに家族4人連れていかれた。

今もあるのかは知らないが、茨城県の小学校では当時、小学生を無料招待するチケットの引換券が帰りの会とかで配られていた。毎年何試合かは配られていたのだが、小学校6年間で全く行こうと思ったことはなかった。これを使っての初観戦だった。

当時、サッカーに自分自身結構触れていた時期だった。2010年といえば、イナズマイレブンが全盛の人気を誇っていた時期だ。(南アフリカW杯のベスト16じゃねえのかよ)意味わからん髪型の主要キャラ達や実現不可能な超必殺技と個性の強い小学生ウケの良さとストーリーもかなり面白かったこともあり、ミーハーな自分は当時の友人達とイナイレ2,3のゲームをずっとやっていた。アニメもキッズステーションでの再放送を録画して、全てダビングした。それに釣られて、サッカー少年団には入らなかったものの、この時期はよく遊びでサッカーを公園でやっていたものだった。多分、これを見ていた父親は自分の興味をこの息子にも見せるにはいいタイミングだと思ったのかもしれない。こんな超次元サッカーがきっかけで本物のサッカーにのめり込むこともあるのだから、創作物の媒体としてスポーツを扱うことでスポーツそのものの人気を誘うやり方も結構バカにできないものだ。(今のウマ娘がいい例。1年前の自分が変に競馬の知識を身につけるなんて思いもしてない)

で、この初観戦の試合なのだが、普通に敗戦している。

https://www.antlers.co.jp/games/281

2010年の優勝が名古屋グランパスに決まった後の試合だった。ジュビロ磐田の大エースだった「デスゴール」前田遼一が開始早々に得点を決め、前半15分であっさり2失点。前半終了間際に岩政が決めて、後半に折り返すも得点できず。確かに公式レビューにもあるように、後半「あれ入っただろ!」と思ったのが記憶の片隅にある。

そう、アントラーズの「勝利」がサポーターになったきっかけではないのだ。

のめり込むきっかけとなった圧倒的な理由はあのホーム側スタンドから鳴り響くサポーターの声援とチャントだ。恐ろしいほどの歓声と太鼓に合わせた手拍子の一体感。1万人規模の一体感を考えてみれば、当時ライブなんて行ったことがなかったから、あれを初めて見た時はとても壮観だった。最初は手拍子がよくわからないのだが、「オー!アントラーズ!」から始まるあのロール1は覚えやすく初観戦でも何回か繰り返されればそれなりに覚えてくる。今は無き「ゴール鹿島」も独特の拍子を展開していくが、覚えるのにはさほど難しくはない。個人的にかれこれJリーグを10年を見てきて思うのは、贔屓目に見てもアントラーズの応援はかなりわかりやすい。まあ鹿島の応援はほとんど歌詞がなく、「オー」とか言葉の意味を持たない応援が他クラブと比べてもまあ多い。シンプルかつサポーターの声量による迫力。そんなわかりやすい凄さに感動し、引き込まれたのだなと今振り返ると思う。

また、スタンドから見える広大なグラウンド。それを目の前にして、開始1,2時間前にスタジアムグルメを食べたり、いつもと同じDSをやるにしろあの非日常感が堪らなく好きだった。

帰りにミーハーな自分はマルキーニョスのタオルマフラーを親に買ってもらった。(この冬すぐに移籍。弟はこの時に小笠原満男のタオマフを買っている。定番だけど割と最初から満男に行かなくない?)

全く行きたくないとか思ってたのに、帰ってからアントラーズの中継を見るようにはなるし、自分の父親がいつ買ったかわからない3連覇時の特集雑誌を何度も読み返すことで、鹿島の選手達を知って行った。すぐ1ヶ月後には天皇杯準々決勝でカシマを訪れることになった。この試合ではアントラーズが王者・名古屋グランパスを2-1で退け、その後天皇杯優勝まで果たした。中継で見た決勝の野沢のフリーキックの美しさは未だによく覚えている。この時優勝した時のサッカーマガジンをめちゃくちゃ読んだ。

こうしてサッカー経験のない自分が今やサポーター歴11年目に突入している。当初スタジアムの作り出す雰囲気が好きだったのが、段々と勝利の味を占めるようになり、どうして勝てないのかとゲームの展開に強い興味を示すようになった。最近は展開をよく観察するためサポーター席より2Fのイーストゾーンからみるのが1番好きなまである。イナズマイレブンの影響から鹿島アントラーズというチームへ。そしてサッカーそのものの探求に興味が出てきてるのだから、どんな形でさえ入り口を潜ることでどうなるかわからないのだなとつくづく感じる。

3連覇時を知らないものの、大迫勇也や柴崎岳、金崎夢生や鈴木優磨、セルジーニョ、そして荒木遼太郎といった選手達の台頭。クラブW杯でのレアル・マドリードとの激戦。ようやく果たしたACL戴冠。小笠原満男、曽ヶ端準、内田篤人といったレジェンドの引退。クラブの移り変わりを見届け、計7個のタイトル獲得を果たすことができた。それでもやっぱり常勝軍団のサポーターとしてタイトル獲得に飢えている。確かに過去と比べると言語化のできない「らしさ」が失われてきているとは感じるし、それは国内タイトルから5年近く遠ざかっているという結果にも出ている。リーグにも欧州化の流れがある中、「ジーコスピリット」を根底とする我がクラブはどこへ向かうのか。共に勝利の味を噛み締めてきたクラブだからこそ、やっぱり鹿島アントラーズの勝利を不満を垂れ流しながらも強く望んでいるし、もう他のクラブではこうした緊張感を持って観戦することはできなくなっている。

ともかくチーム30周年のうち、その3分の1しか知らないのだが、地元茨城にこんな世界に目を向けられる日本屈指のサッカークラブがあることは本当に誇りだ。もはや生きがいとも言える鹿島アントラーズ観戦。この場で改めてありがとうと言いたい。この先も共に闘おう。

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