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STRANGE STORIES

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奇妙だったり 不思議だったりする物語のコレクションです
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#短編小説

短編「四階」

ホラーです。 昔からよく見る夢がある。 エレベーターに乗っていると、四階の扉を開いてはいけないと感じる。 夢なので、ゾンビのようなものがいることに気付いている。 ビルは十七階建てだったり、七階建てだったりとその都度違う。 けれど、エレベーターは同じだ。 大きさも匂いも壁の色味も同じ。 そして、決まって下りのエレベーターだ。 エレベーターに乗る前に四階は危険だと気付くことがある。 そういう時には、一階までノンストップのエレベーターに乗る。 エレベーターに乗ってから危険だと気付

「ゴールデンカムイではなく ゴールデン亀井 後編」

「箱根に行くんなら、家永さんと一緒に行ってやってくれ」 家永さんというのは旅館のお客さんで、口元にあるほくろが 妖艶なお姉さんという感じを醸している。白石は早くも くっつかんばかりになって話を聞いている。 「家永さんは箱根に何しに行くんですか?」 「手術 首をちょっと」 「あ そうなんですか 良くなるといいですね」 「? ええ ありがとう」 「白石 あのお姉さんと何話してたんだ?」 「ああ 病気で手術を受けるらしい。」 「そうか 顔色悪そうだもんな」 その家永さんが車で箱根

「ゴールデンカムイではなく ゴールデン亀井 前編」

気が向いたら「ゴールデンカムイ」や登場人物に似た言葉を探してみてください。 気にせず読んで楽しんでくれてもかまいません。 停電した。 せっかく作っていたオレの朝ごはん  卵焼きが中途半端になって パンが中途半端になって コーヒーを飲むためのお湯がぬるくて オレの朝ご 「オール電化 無理」 はあ ガスがあれば  オレは反対したのに 親が勝手に  その親は朝6時には出て行って いまごろ電車に閉じ込められているかもしれない 端末を観ると、停電の情報は流れていない。 5分経っても誰

「逆転体質」

「なんか重そうだね」 詩貴の目線を追うと、やっぱり 大人が入りそうなほどに巨大なトランク二つを脇に置いて プラットフォームに続く階段を見上げている外国人の男性だ 少しパーマ イタリア風 たぶん南の方 わたしはさっきから気付いていたので、詩貴の目に触れないように身体の向きをコントロールしたのだが、詩貴は混雑の中で首を振って見つけてしまった 「なにが?」 と言いつつわたしはなおもそこから離れていこうとするが、 「ほら あの人」 と詩貴に腕を掴まれてしまった。 詩貴は困った人を観る