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STRANGE STORIES

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奇妙だったり 不思議だったりする物語のコレクションです
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2024年2月の記事一覧

ショートショート「人を殺す臭い」

3年前、地震で家が壊れた。 俺は少し離れたところにいる妹の家に厄介になった。 持っていくのはお気に入りの柔軟剤と少しの服だけ。 妹の遺書を読んだ。 末尾にはこうあった。 「あなたにすべて奪われました」 柔軟剤が臭いからやめてと言われたが、そんなことはないと放っておいた。 そのうちに妹はよく咳をするようになった。 そして頭痛がすると言い出した。冬でも窓を開けているので、寒いと言ったら換気しないと私が死ぬなんて言い出す始末だ。臭いで死ぬわけがない。それにいい匂いじゃないか。

短編「改名モラトリアム」

僕はトランスジェンダー なのだろうか 僕の身体は女性で 僕の心は わからない 好きになる人は女性  病院に行くと 顔が長くて 親くらいの年齢だろう女性の先生が言うには  「同性を好きな同姓もいるし 自分の性に関しては 思春期には まだはっきりしない人もいるんですよ。すぐに決めなくてもいいんじゃないかなあ。様子を観ましょう。」 「手術とかって早い方がいいんですか?」 「いや そんなことはないよ。ホルモン注射の副作用もあるし ただでさえ思春期はいろんなホルモンがドバドバ出てるから

「ゴールデンカムイではなく ゴールデン亀井 後編」

「箱根に行くんなら、家永さんと一緒に行ってやってくれ」 家永さんというのは旅館のお客さんで、口元にあるほくろが 妖艶なお姉さんという感じを醸している。白石は早くも くっつかんばかりになって話を聞いている。 「家永さんは箱根に何しに行くんですか?」 「手術 首をちょっと」 「あ そうなんですか 良くなるといいですね」 「? ええ ありがとう」 「白石 あのお姉さんと何話してたんだ?」 「ああ 病気で手術を受けるらしい。」 「そうか 顔色悪そうだもんな」 その家永さんが車で箱根

「ゴールデンカムイではなく ゴールデン亀井 前編」

気が向いたら「ゴールデンカムイ」や登場人物に似た言葉を探してみてください。 気にせず読んで楽しんでくれてもかまいません。 停電した。 せっかく作っていたオレの朝ごはん  卵焼きが中途半端になって パンが中途半端になって コーヒーを飲むためのお湯がぬるくて オレの朝ご 「オール電化 無理」 はあ ガスがあれば  オレは反対したのに 親が勝手に  その親は朝6時には出て行って いまごろ電車に閉じ込められているかもしれない 端末を観ると、停電の情報は流れていない。 5分経っても誰