幻想郷における酸素 - 東方虹龍洞考察
酸素とは次のような性質を持つ気体である。
・火のついた線香を入れると激しく燃える性質(助燃性)を持つ。
・過酸化水素(オキシドール)に二酸化マンガンを加えることで発生する。
・水に溶けないので水上置換法で集める。
・空気中には約20%含まれている。
・光合成で作られ、呼吸で使われる。
酸素は多くの人が小学校の理科で習うような常識レベルの科学知識である。
そんな常識レベルの科学知識が幻想郷の中で、それも科学と対極な存在のような神様である「玉造 魅須丸」によって言及されたのである。
〇酸素という言葉は幻想郷に存在しうるか
幻想郷の成立は博麗大結界が作られた明治18年(1885年)とされる。
それまでに酸素という概念があったのかというと…あったらしい。
酸素 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/酸素
化学新書 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/化学新書
世界的には酸素の発見は1771年である。
日本では1860年に出版された『化学新書』で言及されている。
なので酸素の概念が幻想郷にあるのはそこまで変なことではないようだ。
まあ東方茨歌仙などで水銀やら砒素やら色々な化学物質が言及されているので酸素という概念くらいはあるだろう。
〇無酸素と月
東方Projectでは月には月の民が暮らしている。
それだけでなく幻想郷から月に行ったことのある人妖もいる。
月は空気が無いというのは私たちにとっては常識である。
だが東方Projectのキャラクターは宇宙服もなく生身で月面上に立つ。
なぜそれができるのかと言えばそれが彼女らにとっての常識だからだ。
(外の世界出身の早苗だけは月面上で空気に対して少しだけ言及をしている)
というのに。
というのに東方虹龍洞では「無酸素なので呼吸ができません」と言われる。
なぜなのだろうか。
その問いに対して私が考えたのは、経験の有無だ。
空気が無いということを月に行って体験をしたことがあるだろうか。
私は無い。そして地球上にいる人々のほとんどもそうだと思う。
つまり”月に空気が無い”ということは経験が欠如した事象である。
経験が欠如した事象には幻想が入り込む余地がある。
そしてその幻想が実際に起こる幻想郷の世界では
”月には住民がいて当然空気もある”という幻想が実際に起こるのだ。
一方で坑道における無酸素や酸素が少ない状態に対しては、
呼吸が難しかったり窒息するという経験が存在する。
故にそこに幻想が入り込む余地はないので
幻想郷でも坑道では酸素が無いことで窒息する事象が存在するのだ。
そもそもの話、月面上では酸素どころか気体自体が存在しない真空であり
坑道の酸素だけが不足している無酸素とは全く異なるものではある。
しかし、真空に放り込まれたときと無酸素空間に放り込まれたときで、
実際にどうなるかを予想しやすいのはおそらく後者であると思う。
後者は近い経験からどうなるか大体予想をつけられるが、
前者は近い経験すら無く予想ができない部分が多い。
予想ができないがゆえにそれを補う幻想が生じうるのかもしれない。
もちろんその幻想が入り込む余地を経験でさらに埋めていくことはできるし
経験で埋めるために実験や観測などをしていくアプローチは"科学"そのものであるように思う。
〇酸素という呪い
ところでこの酸素という言葉だが、魅須丸の言及では記事冒頭の酸素の説明とは異なる部分がある。
酸素が呪いであるという解釈だ
外の世界と幻想郷での解釈の仕方の違いは東方Projectではよくある話だ。
例えば山彦という現象は、外の世界では音の反響によるものだが幻想郷では妖怪山彦によるものである。
東方香霖堂の森近 霖之助が掲げる解釈も外の世界の解釈とは異なることが
多い。
ここで注目すべきは、
「外の世界と幻想郷どちらにおいても実際に起きる現象は共通していて、
違うのはその現象が起こる理由の解釈の仕方である」
ということだ。
つまり酸素という概念の存在は、窒息という現象を通して外の世界と同様に幻想郷でも存在することができる。
ただしその現象が起こるまでの理由の解釈は異なっていてそれが魅須丸
による言及の部分である。
このような私たちがよく知る現象に対する幻想郷流・東方Project流の解釈は
私が興味深いと思う東方Projectの世界観の一つである。
〇市場の神と呼吸
虹龍洞の中は無酸素で呼吸ができないという話だが、
これは東方虹龍洞のエキストラストーリーでは解決する。
市場の神である「天弓 千亦」から手に入るアビリティカード「空色の勾玉」
これを使えば無酸素でも呼吸ができるようになる。
なぜそれが市場の神から手に入るのかを先ほどの東方Project流の解釈で考察してみようと思う。
呼吸という現象は"所有権のやり取り"だからと私は解釈した。
誰の所有物でもない空気中で二酸化炭素の所有権を失い酸素の所有権を得るそれは天弓 千亦の所有権を失わせる程度の能力によるものと考えた。
ただし、そのやり取りは基本的には無自覚で行われているため千亦の信仰にはなれなかったのだろう。
このような考察が出来るのも、東方Projectの設定に考察が入り込む余地が
あるからこそなのかもしれない。
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以上、”幻想郷における酸素の考察”及び”東方Projectの興味深いところ”
という話でした。
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