相貌失認の工夫とサポート

相貌失認での困り事を思い返しつつ、どのようなサポートを受けたいかを考えてみた。
基本的には「顔認識以外の方法で個人を特定しやすくしてほしい」ということになる。勿論、認識できなかったり、覚えが悪いとしても、失礼のつもりでないということも理解してもらえるのがよいのだが。

•待ち合わせ場所の細かい指定や目印の共有
友人関係で頻繁に困るのは、待ち合わせのシーンではないか。

人の多い都市部の駅などで待ち合わせるならば、早めに行ってスマホなどを見ながら待ち(スムーズな連絡と、相手を直接発見できない理由を成り立たせるため)、相手に見つけてもらうという工夫をしてきた。これが車であれば、ナンバープレートは確実についているし、車の色や形は顔より余程覚えやすいので苦労は少ない。

あるいは、飲食店の中での待ち合わせなど、範囲を狭めてその場にいる人の数を減らすとともに、店内を見回して探すことが不自然でない状況を設定することもある。半個室の店などでは視界が遮られ、相手がいる席を即座に発見できなくて当然だからである。
これなら、自分が後で到着しても比較的安心である。「今着いた」と連絡しつつ、その連絡を受けて人を探す素振りをする人を探せばいい。名前を伝えて予約していれば、店員の案内で解決することも多い。

所謂オフ会のような状況で、お互い初めてで待ち合わせする場合は、服装や待っている場所の目印を伝え合うものだし、不安げに声をかけても不審がられないので気楽である。もっとも、次に合う時にはこちらが一方的に不安を感じるわけだが。

こうした経験から、カミングアウトしてサポートを依頼するのであれば、「都度服装や目印を訊いたら答えてほしい」「なるべく見つけて合図してほしい」というお願いを考えている。
親しい友人であれば協力してもらえそうだと感じている。というより、そうした困り事を伝えられて否定するような人を友達に選んできたつもりはない、と言うべきか。

•名札の着用や座席の固定
業務での課題となると、職種によるとしか言えないし、困難の少ない職種を選ぶしかないのが現状だろう。
その中でも、同じような服装で働く仲間が多数いる場合は名札が有効だし、フリーアドレスはやめてほしい。防犯面から名札は批判が多いが、接客業では本名でない職場専用通用名を設定して見やすく提示することが主流になれば、相貌失認者も働きやすい可能性がある。
話は脱線するが、APD傾向があると氏名の聞き取りが怪しくなるため、文字で書いたものと照合できると安心できる。

職場へのはたらきかけは労働者個人ではなかなか進められないもので、自分の場合、カミングアウトせずに耐えているのが現状である。

•顔の上に氏名が表示されるサービス
AR技術ということになろうか。機械には認識できる顔を自分が区別できないことに劣等感を感じることもあるかもしれない。
そもそも学習させる顔写真をどうするのか、表示される氏名はどう登録するのか。個人情報の問題、セキュリティの問題で実現しそうもない。
相貌失認を抱えて、人並みに生きようとすれば、この程度の魔法のアイテムが必要だろうという主張のために書いてみた。

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