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デッサンで初心者が静物の描き方を基本から学ぶ方法!

 どうも。プロ鉛筆画家の中山眞治です。夏日を超える日が少しづつ増えてきましたね。元気でお過ごしですか?^^
 
 さて、デッサンや鉛筆画を始めたいけれど、何から手をつけたらよいか分からないという初心者の人へ。この記事では、静物を題材にしたデッサンの基本から解説します。

 必要なツールから描き方のコツ、見落としやすいポイントまで、初心者の人でもすぐに実践できる内容になっていますので、静物デッサンで基本的な技術を身につけ、絵画のスキルを上げましょう。
 
  それでは、早速どうぞ!

1 デッサンや鉛筆画に必要な道具とは?


筆者の描画ツール収納ケースです


  デッサンや鉛筆画を始めるにあたって、最初に揃えるべき基本的な道具について解説します。適切な道具を選ぶことで、学習効率が向上し、デッサンや鉛筆画の楽しみも深まります。 

(1) 鉛筆セット


  デッサンや鉛筆画ではさまざまな硬度の鉛筆を使用します。2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの、同じメーカーで、合計7本の鉛筆を基本セットとして持っておくと良いでしょう。

 同じメーカーの製品にこだわるのは、メーカーによって「描き味」や「濃度」が微妙に異なるからです。

 硬度が異なる鉛筆を使い分けることで、濃淡や質感の表現の幅が広がります。 鉛筆については、次の関連記事も参照してください。

 尚、上の画像で使っている「描画ツール収納ケース(390mm×280mm)」は、100円ショップで販売してる「書類入れ」に「バンダナを敷いたもので、もう30年の付き合いになります。

 あなたも、描画ツールを収納できる専用の入れ物も用意しましょう。こまごまとしたもの全部を入れられるものが理想的ですが、最初の内は何でも良いです。ただし、鉛筆の芯が折れないような状態は必要です。

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(2) スケッチブックや紙


  デッサンや鉛筆画には専用のスケッチブックや紙が必要です。一般的には厚手のスケッチブックが推奨されます。

 紙質は、ある程度の厚みと質感があり、鉛筆の濃淡がしっかり乗せられるものを選びましょう。Bや2Bの鉛筆による、濃い目の味わいを得るためには、中目の粗さの画面は相性が良いです。

 2HやHの鉛筆による細密描写による味わいを楽しむには、画面の滑らかな用紙を使うと良いでしょう(ケント紙等)。

 サイズは、あなたが鉛筆画に慣れて、やがてあなたの住む場所の市や区の展覧会へも出品できるように、F10号(530mm×455mm)程度のスケッチブックから始めることがオススメです。

 その理由は、制作をする上で何の目標もなければ、制作に張り合いが出ないからです。モチベーションを維持するためにも、あなたの住んでいる場所(市や区)の公募展へ出品を目指しましょう。

 尚、市や区によってはF6号(410mm×318mm)前後でも出品できるところもあるようですので、出品規定を確認してみましょう。没頭できる趣味は、あなたの人生の核になりますし、老後の張り合いにもなります。

 スケッチブックの詳細な内容は、次の関連記事も参照してください。

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(3) 鉛筆削りや鉛筆ホルダーと練り消しゴム


筆者の使っている鉛筆削りです
筆者の使っている鉛筆ホルダーです


  デッサンや鉛筆画では、細かい修整が必要不可欠です。柔らかい「練り消しゴム」を一つ持っておくと、「消しカス」も出ず、線の修整が簡単に行えます。

 また、鉛筆を常に尖らせるためには良質なシャープナーが必要です。これにより、線の精度が向上し、デッサンや鉛筆画の質も高まります。

 筆者は、鉛筆削りは、上の画像の物を使っていますが、鉛筆削りで削れないほど短くなった際には、もうひとつの画像のような「鉛筆ホルダー」に差し込んで、果物ナイフやカッターで削れば、使い切ることができます。

 尚、「練り消しゴム」は、ただ単に修整に使うばかりではなく、「光を描く」あるいは、「動物の毛並を描く」など、特殊な描き方に応用できる優れものです。詳細は、次の関連記事を参照してください。

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(4) 下敷きとクリップ


第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治


  紙がずれないようにするため、また線を引く際のガイドとして下敷きを使用します。大きめのものを選ぶと、さまざまなサイズの紙に対応できます。紙を固定するためのクリップもあると便利です。

 尚、黒いA4やB4程度の下敷きを1枚用意しておくと、その上にモチーフを置いて、モチーフをライトで照らすと、なんとも素敵な世界が展開できます。その影までも作品に是非取り込みましょう(上部作品参照)。
 
 デッサンを始める際に、これらの基本的な道具を揃えることで、スムーズに技術を習得できて、作品創りを楽しむことができます。

 筆者は、これらの鉛筆削り及び鉛筆ホルダー や練り消しゴムと30年間も付き合っています。長持ちしますよ。

2 静物デッサンの基本ステップ


第1回個展出品作品 静物Ⅲ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治


  静物デッサンは、基本的な絵画技術を習得するための、最適な練習方法です。ここでは、初心者の人でも迷わずに始められるように、静物デッサンを行う際の基本ステップを紹介します。 

(1) 静物の選定と配置


第1回個展出品作品 反射 1997 F10 鉛筆画 中山眞治


  デッサンを始める前に、描きたい静物を選びますが、初心者の人には、絵画教室へ行ければ、教室に「石膏モチーフ(立方体・直方体・円錐・球体・三角錐等々)」がたくさん揃っているのでオススメです。

 これらの石膏モチーフでは、光と影の状態を「つぶさに観察できる」という大きなメリットがあります。この経験をしっかり身に着けると効果的です。

 これによって、光の方向と影のでき方などが学べ、それが基礎となって、さまざまなモチーフにできる影についての考察もできるようになれます。

 もしも、自宅で行う場合には、白い卵・白無地のマグカップ・白無地のカップ&ソーサー・などでも代用できます。また、それ以外にもモチーフは、調理器具及び野菜や果物など、何でもモチーフになります。

 あなたの取り組む気持ち次第で、何でもモチーフになるということです。上の作品を改めて観てください。「空き缶」や「目玉クリップ」でさえモチーフになるということです。空きビンだっていいんです。

(2) 輪郭線の描画


  最初に、軽く鉛筆で輪郭線を描きますが、大きく輪郭を取る際には、Bや2Bの鉛筆を人指し指・中指・親指で軽く「つまむ」ように持ち、大きく肩と腕を振るって描くイメージで進んでいきましょう。

 また、その際には、モチーフを画面の中に収める大きさやバランスだけを考えて描き進みます。

 このステップでは、物体の大まかな輪郭と位置を捉えることが重要です。細かいディテール(詳細)はここでは描かず、全体の構成に集中しましょう。 

 尚、この制作を続ける中で、「この線だ」と思える線に出会えますので、その調子で全体を描いていきましょう。そして、この全体の輪郭線が描けたところで、しっかりと改めて形状やバランスを点検しましょう。

 大きなバランスやサイズなどは、後から描き直すとなると、大規模な修整が必要になってしまうからです。 

(3) 光と影の観察


 そして、この点検が終わりましたら、今度は鉛筆の持ち方を「文字を書くときの握り方」に変えて描き進むのですが、改めて輪郭をなぞる場合には、2段階明るい鉛筆で優しく形を整えましょう。

 その理由は、濃い鉛筆でしっかり輪郭を取ってしまうと「不自然な作品」になってしまうからです。あなたが、2Bでデッサンしていたとすれば、HBで優しく形を整えるということです。

 輪郭線が描けましたら、次に光と影を観察します。どの部分が最も明るいか、どの部分が影になっているかを把握し、一番濃い色の所から描き始めて、徐々に明るいところを描くようにすると描きやすいです。

 影の部分はより濃く、光が当たっている部分は白抜きにすることで、立体感を出すことができますし、背景に濃いトーンを配置することで、白抜きしたところが、「輝いて見える」効果も出せます(上部作品参照)。 

(4) ディテール(詳細)と質感の追加


東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏
東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇 氏


 全体の形や光と影のバランスが取れましたら、次は細部のディテールを加えます。質感を表現するためには、鉛筆の筆圧を変えたり、異なる硬度の鉛筆を使用したりします。

 例えば、布は柔らかい線で、金属は硬くはっきりとした線で表現します。 

(5) 最終的な修整と仕上げ


  最後に、全体を見渡してバランスや形が自然に見えるか確認します。必要に応じて線を強調したり、不要な線を消したりして、作品の完成度を高めます。

 そして、全体のバランスを確認できた後には、完成度を高めるために、「もっと光と影を強調できないか」と何回も自身に問いかけてください。この度重なる見直しが、完成度を高めることを忘れないようにしましょう。

 その手法として、「翌日改めて作品を観てみる」ことをオススメします。絵画も文章と同じです。翌日に改めて観てみると「修整すべき点がたくさん見つかる」のは、筆者も毎回経験していことなのです。

 また、最後には必ず「サイン」と「制作年月」なども小さく入れておきましょう。その後、「フィキサチーフ」の吹き付けも重要です。

 寒い時期には、洗面器にお湯を入れて温め、「よく振って」吹き付け過ぎないようにも注意しましょう。あまり吹き付け過ぎると「少し黄ばむ」こともあります。
 
 これらのステップを踏むことで、静物デッサンの基本をマスターし、さらに複雑な被写体にも挑戦できるようになれます。何よりも、観察力と表現力が鍛えられることがデッサンや鉛筆画の大きな魅力です。 

3 初心者が陥りやすいデッサンの間違いとその修整方法


第1回個展出品作品 車 1996 F10 鉛筆画 中山眞治


  デッサン初心者がよく犯す間違いは、技術的な面だけでなく、心構えにも関連しています。ここでは、そのような間違いと、それを修整する方法を解説します。 

(1) 間違い1: 線を強く描きすぎる


  多くの初心者の人は、不確かな線を強い筆圧で描いてしまいがちです。これは消しゴムで修整が難しくなると同時に、作品全体の印象を硬くしてしまいます。

修正方法: 線を引く際は、軽いタッチで描き始め、形が確定してから必要に応じて筆圧を強めます。常に最小限の筆圧でスケッチを進める習慣をつけましょう。 

(2) 間違い2: 比例感覚の欠如


  初心者の人は、しばしば描くモチーフの比例を見誤ります。特に、静物を描く際の、例えばビンを描く場合などでは、注ぎ口部分の口径が太かったり細かったり、あるいは、胴体のふくらみ加減が間違っていたりします。

修正方法: 常に全体のバランスを意識しながら描くことが重要です。線を描く前に、モチーフの大まかな比例をチェックし、必要であれば補助線を使って修正します。 

(3) 間違い3: 細部にこだわりすぎる


  多くの初心者の人は、全体の構成を考える前に細部のディテールに囚われがちです。これは作品全体の印象を損ねる原因となります。

修正方法: 最初は大きな形と構成に焦点を当て、全体のバランスを取りながら徐々に細部へと進んでいくようにしましょう。全体像を把握した後で細部に修整を加えることが効果的です。 

 尚、小さな下絵(エスキース)で、何度も描いては消し、描いては消しを繰り返しながら、一番効果的な構成(配置)を検討しましょう。

(4) 間違い4: 光と影を無視する


  デッサンや鉛筆画で立体感を出すためには、光と影の扱いが非常に重要です。初心者の人はしばしば、これを疎かにして平面的な描写になりがちです。

修正方法: 描く対象物のどこに光が当たっているか、どの部分が影になっているかを常に意識し、それに応じた濃淡を付けていくことが重要です。始めに光源を確認し、それを基に陰影を配置しましょう。
 
 これらの一般的な間違いを意識し、それぞれの修整方法を実践することで、デッサン技術を確実に向上させることができます。毎回の練習でこれらのポイントを見直すことが、上達への近道となります。 

4 デッサンでの比例と構成の重要性


 デッサンにおいて比例と構成は、作品の質を大きく左右する要素です。本章では、なぜこれらが重要なのか、そしてそれをマスターするためのポイントを説明します。 

(1) 比例の理解がもたらす影響


  比例とは、モチーフの各部分のサイズが全体との間でどう関連しているかを示します。正確な比例を把握することで、リアルな描写が可能になり、視覚的な誤解を避けることができます。

 間違った比例では、デッサン全体の説得力が損なわれ、観てくださる人に不自然さを感じさせてしまいます。 

(2) 比例を正確に捉えるテクニック


  比例を正確に捉えるためには、モチーフを単純な形に分解して観察することが効果的です。

 例えば、人物の顔を描く際の例で例えるならば、目、鼻、口の位置関係をチェックし、それぞれが顔全体のどの位置に来るべきかを考えます。

 また、モチーフの一部分を基準にして、他の部分の大きさを比較する「比較測定」も有効です。 

(3) 構成の役割とその重要性


  構成とは、画面上で各要素がどのように配置されるかを決定するプロセスです。強い構成は、視覚的な流れを作り出し、観てくださる人の目を意図的に誘導することができます。

 全体のバランスを取りながら、モチーフを配置することで、作品に調和とリズムをもたらすことも可能になります。

 そのためにも、あなたが楽しんで描くことに集中できて、5作品ほど制作できましたら、目標を「描く以上は各種展覧会や公募展にも出品したい」と考えるならば、より一層画面構成を引き立てられる考察が必要です。

 そこで、「構図」を研究し始めることや、描く以前の充分な「構想を練る」ことも必要になりますので、その際には次の2つの関連記事も参照してください。

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(4) 効果的な構成を作るためのアプローチ


 良い構成を得るためには、まず全体の構成を構図に基づいて検討し、その中でモチーフをどのように配置するかを決定します。

 例えば、一つの例を取って説明すると、画面の三等分法を利用することで、自然でバランスの取れた配置も可能になります。また、視点や視線の流れを意識することで、より力強い構成を生み出せます。
 
 デッサンでの比例と構成を意識することは、作品に深みとリアリズム(写実)をもたらします。

 これらの要素は、視覚的なコミュニケーションの基本であり、練習を重ねることで自然に身につけることができます。

 尚、構図に基づく構成をする際に、あなたの考える高さ及び幅や不要な模様などは、「あなたの考える、見映えのする寸法や状態へ変更」すればよいのです。

 それは、「デフォルメ」と呼ばれていますが、削除・修整・拡大・縮小・つけたし等、何でもありです。つまり、あなたの感動を観てくださる人へどのように伝えるかが鍵なのです。

 風景画で例えるならば、実際には電柱や電線があったとしても、すべて省略して制作することなどは、当たり前に行われていることを覚えておきましょう。どうです?少し楽になったでしょう。難しいことではありません。

5 モノクロの鉛筆、インク、ボールペン:異なる素材の使い方


第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治


  モノクロの鉛筆、インク、ボールペン、チャコール(木炭)は、それぞれ独自の特性を持ち、デッサンに異なる表現をもたらします。ここでは、これらの異なる描画材料を効果的に使用する方法を掘り下げていきます。 

(1) 鉛筆での描画の基本


  鉛筆は、デッサンの最も基本的な道具の一つで、濃淡の表現に優れています。硬度によってさまざまな線の質感を出すことができるので、微妙な陰影技法に適しています。

 初心者の人は冒頭で説明しましたように、基本の7本の鉛筆(2H・H・HB・B・2B・3B・4B)から始めて、あなたがこの先も、デッサンや鉛筆画を続けていけるならば、徐々にトーンの幅を広げていけばよいでしょう。

 因みに、どこでも購入できる鉛筆の幅は、10Hから10Bまであります。FというHとHBの中間色の鉛筆を含めると、合計で22本にも及びます。

(2) インクでの描画の魅力


  インクはその濃厚な黒さと流れるような線で、強い印象を与える作品創りに適しています。

 ペン先の種類によって異なる線の太さや質感を生み出すことができるため、動的な表現も可能です。水彩のように薄めて使用することで、独特のグラデーションを楽しむこともできます。 

(3) ボールペンの利点と活用方法


  ボールペンは乾燥が速く、非常に細かい線を安定して描くことができるため、細部の表現や細密な線描きに適しています。

 また、ボールペンは押し出されるインクの量が一定なので、一貫した線質が得られ、技術的な描写や機械的なモチーフのデッサンに最適です。
 

(4) チャコール(木炭)での描画の特性と活用法


  チャコールは、その柔らかさと豊かな黒さで知られ、力強い表現と深い陰影を簡単に作り出すことができます。

 チャコールを使う際は、寝かせて使えば、大胆なストロークで広い範囲をカバーすることができるため、動きのある表現や大きなサイズの作品に適しています。

 また、指やティッシュで擦ることによって、簡単にぼかすことができ、柔らかい質感や、煙や霧のような効果を表現するには理想的です。

 始める前に、異なる硬さのチャコールを試してみると、それぞれが持つ特性を理解しやすくなります。

(5) 素材を組み合わせた表現


  これらの異なる素材は、単独で使うだけでなく、組み合わせることで、より豊かな表現も可能になります。

 例えば、鉛筆で軽く下描きをした後、インクで主要な線を引き、ボールペンで細部を追加するなど、各素材の特性を活かした多層的なアプローチが推奨されます。

 これらの異なる描画材料を使いこなすことで、デッサンの表現幅が広がり、より多様な作品創りが可能になるでしょう。

 それぞれの特性を理解し、適切に組み合わせて使うことが、作品の質を向上させる鍵にもなります。

 ただし、これらの素材の中で、鉛筆は一番弱いトーンになりますので、
慎重に組み合わせを考えて使用しなければ、作品のバランスを崩してしまう可能性もあるので注意しましょう。

6 実例で学ぶ!静物デッサンの構成


第1回個展出品作品 休日 1998 F10 鉛筆画 中山眞治


  静物デッサンは、物の配置や光の当たり方が作品の出来を大きく左右します。本章では、効果的な設定の実例を通して、どのように静物を配置するかを学びます。 

(1) 実例1: フルーツと花瓶の組み合わせ


  フルーツと花瓶を組み合わせた構成は、色と形の対比を楽しむことができるクラシックな例です。フルーツは明るい色を選び、花瓶はシンプルな形状を選ぶことで、両者のバランスを取ります。

 配置する際は、フルーツを前面に、花瓶を少し後ろに置くことで奥行き感を演出しましょう。 

(2) 実例2: 古い書籍と眼鏡


  古い書籍を数冊積み重ね、その上に眼鏡を置くことで、時間の流れや静けさを感じさせる構成になります。

 書籍はページが少し開いている状態にし、眼鏡は光が反射する角度で配置することがポイントです。 

(3) 実例3: 陶器と布


  陶器の質感と布の柔らかさは、素材の対比を強調するのに適した組み合わせです。陶器は中央に配置し、布は流れるように陶器の周りに配置することで、形と質感の両方を引き立てられます。

 光源を布の一端に当てることで、布のしわの影を強調し、更なる立体感を出すこともできます。 

(4) 実例4: 金属製のモチーフと木の素材


  金属製のモチーフと木の板や小物を組み合わせると、光の反射と吸収の違いを学ぶ良い機会になります。

 金属製のモチーフは光を強く反射するため、それが木の素材の自然な質感とどのように異なるかを観察することが重要です。

 この構成では、光源の位置を変えながら、どのように影響が変わるかを試してみましょう。
 
 これらの実例を通じて、静物デッサンの配置の技術を習得し、自らの作品に応用することができます。静物を配置する際には、常に光と影、素材の質感、そして全体の構成を意識することが重要です。 

7 上達への近道!日常でも簡単にできるデッサンの練習法


第1回個展出品作品 男と女 1997 F10 鉛筆画 中山眞治


  デッサンの技術を向上させるには日々の練習が欠かせません。本章では、日常生活の中で簡単に取り入れられるデッサン練習法を紹介します。 

(1) 毎日のスケッチ


  毎日決まった時間に、小さなスケッチブックに何かを描く習慣をつけましょう。

 例えば、コーヒーカップ、机の上の小物、窓辺の風景など、日常のありふれたものを題材に選びます。この習慣は、観察力を養い、手と目の協調を向上させる効果があります。 

(2) 制限時間を設ける


  時間制限を設けてデッサンを行うことで、素早い決断力と効率的な描画スキルが身につきます。

 例えば、5分間で完結するスケッチを毎日行うことで、どの部分を省略し、どの部分に焦点を当てるべきかの判断力が鍛えられます。 

 この短時間描写は、クロッキーと呼ばれますが、せいぜい長くても10分程度ですので、短時間ながら集中して取り組むことを日課にできれば、練習にもなります。

 一方で、週に一度くらいは休日に、しっかり時間を取って細密描写までを含めて、作品作りに取り組みましょう。

参考:クロッキーのすすめ - デッサンや画材、表現について – | イラストレーションコース | コース別ブログ|アートスクール大阪 (art-school.co.jp)

(3) 異なる視点から描く


  普段とは異なる角度や高さから物を見て描くことで、空間認識の能力が向上します。いつも座って描くのであれば、立って、または物体の上部や側面から見下ろして描くことで、新たな発見があります。 

(4) 反射物を使う


  鏡や水面などの反射を利用して描く練習を行うと、対象を異なる視点から捉える能力が養われます。これにより、物体の形状や光の反射など、より複雑な視覚情報を処理する能力が向上します。 

 既述していますが、A4サイズやB4サイズの「黒い下敷き」を一枚購入しておくと、その上にあなたの意図しているモチーフを乗せて描くことで、「素晴らしい」影までも制作に取り入れることができます。

(5) 色の濃淡で描く


  モノクロで描く練習をすることで、色に頼らずに濃淡だけで物体を表現する技術が身につきます。

 黒鉛筆やチャコールを使って、異なる濃度で陰影をつけることで、立体感のあるデッサンが可能になります。
 
 これらの練習法を日常生活に取り入れることで、デッサンスキルは着実に向上します。

 少しの時間と、意識を変えるだけで、驚くほどの進歩が見込めるでしょう。毎日コツコツと練習を積むことが、上達への最短ルートです。 

8 まとめ


第2回個展出品作品 モアイのある静物 2000 F50 鉛筆画 中山眞治
  •  基本的な道具: デッサンを始めるには、鉛筆セット(2Hから4Bまでの7本)、厚手のスケッチブック、練り消しゴム、鉛筆削りやカッターが必要です。これらの道具を選ぶことで、デッサンの基礎が学べます。

  • 静物デッサンのステップ: 静物を選定し、適切な光の下で輪郭線を描き、光と影を観察しながら濃淡をつけ、最後にディテール(詳細)を加えることで、立体感のある作品を完成させられます。

  • 初心者の一般的な間違いと修整方法: 強く線を引きすぎる、比例感覚の欠如、細部にこだわりすぎる、光と影を無視するなどの間違いを避けるために、練習と観察を重ねることが重要です。

  • 異なる素材の使い方: 鉛筆、インク、ボールペンのそれぞれの特性を理解し、適切に使い分けることで、表現の幅が広がります。チャコールは特に陰影と質感を表現するのに適しています。

  • 練習法と日常の応用: 毎日のスケッチ、制限時間を設けた練習、異なる視点からの描画、反射物を使う練習、モノクロでの濃淡の練習、週に一度は時間をたっぷりと描けた練習などを行うことで、技術の向上につながります。

 このように、デッサンの基本から応用までの知識を体系的に学び、継続的に練習を積むことが、上達への近道です。
 
 ではまた!あなたの未来を応援しています。


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