浄土宗全書8附言

今回は明治41年(1908)4月に刊行された『浄土宗全書』第8巻に付録された附言を紹介します。ここでは8巻に加えて先に刊行された7巻の底本の情報が示されています。
なお旧字を常用漢字等現在通用の漢字に直し、適宜読点を加えました。

   附言
一、浄土宗全書は宗祖円光大師七百年御忌の記念として法恩の万一に酬ひ奉らんか為に之を発刊す、
一、本全書の内容は浄土宗教義に関する経論、及び之に属する支那日本の人師著述の疏釈等を網羅し、兼て宗史寺誌紀伝の類を蒐輯して剰さす、是一は他力教義研究者の座ながら数千の経疏を繙き得らるゝ便宜を図り、一は之に依りて宗内貴重の聖典を広く世に紹介して信念修養の資に供し、併せて珍襲秘蔵の書冊を保存せんと欲するにあり、
一、本全書は漢文と和文とを問はず専ら古態を存せんが為め渾て原本の儘を翻刻す、蓋し之が編輯校合に至りては諸種の版本、或は稿本を比較対照し、其善きものを選びて原稿に用ゐたり、左に第七巻と第八巻の原稿に採用したる書籍を記して読者の参考に供すべし、此等の事項は本全書全部刊行の後、凡例目録等に於て詳細記述する予定なるを以て、今は唯書目と其出版年月とを掲げ、併せて蔵本者の氏名を附記して愛蔵の書冊を貸与せられたる深き同情を鳴謝す、
   第七巻 選択立宗
(書目)                       (蔵書家名)
選択本願念仏集 (元禄年間、義山の建暦本を再梓せるもの) 本会
徹選択本願念仏集 (天保年間、聖光上人六百年遠忌報恩の為、信冏校合、立道門弟敬道をして再校の上開版せるもの) 野上運外師
徹選択抄 (天保版、上梓事由上に同し) 同
徹選択本末口伝抄 (慶安版) 同
教相切紙拾遺徹 (同上) 同
選択要決 (享保年中、祖巌の校正上梓せしもの) 松濤松巌師
会本選択伝弘決疑抄 (元禄年中、獅谷忍澂の校讐上梓せしもの) 本会
決疑抄裏書 (正保版、諸書を参照して校正を施す) 野上運外師
同見聞 (万治版、諸書参照校正を加ふ) 宗教大学
同直牒 (明治版、行誡校正したるもの) 本会
同疑門答 (寛文版、諸書を参照して校正を加ふ) 太田密道師
選択口伝ロ筆 (刊本) 本会
選択決疑抄見聞 (享保年中の活字版を本とし、他の二写本と参照校正を加ふ) 宗教大学
   第八巻選択立宗
選択大綱抄 (慶安版) 宗教大学
選択之伝 (寛永版) 同
選択集文前綱義 (写本) 越智専明師
同九門玄談 (写本) 宗教大学
徹選択集私志記 (写本、越智専明師蔵本と宗教大学蔵本とに対照校正せしもの) 太田密道師
選択密要決 (写本、宗教大学蔵本を本として吉川沢誠師、道重信教師、時宗日輪寺、福岡市西山派波多江某師の各蔵本を対照校正せしもの) 宗教大学
選択本願念仏集秘抄 (宝永年間、西山の某校正上梓せしもの) 野上運外師
同名体決念仏本願義 (写本、本会蔵本を本とし、宗教大学蔵及吉川沢誠師蔵とを対照校正し、丁数は吉川師蔵に依る) 本会
同肝要義 (写本) 同
同註解抄 (刊本) 同
新扶選択報恩集 (宝暦年間、宗祖五百五十年御忌報恩の為め文雄校正上梓せしもの) 宗教大学
扶選択正輪通義 (刊本) 本会
評摧邪輪 (延宝年間、東暉の上梓せしもの) 不染信翁師
念仏選摧評 (文化年中、宗祖大師六百年御忌報恩のため喚阿再梓せしもの) 神谷大周師
摧邪興正集 (松濤舜海師蔵天正年間の写本を謄写し、吉川沢誠師蔵慶安版と対照せしもの) 本会
弁無得道論 (刊本) 太田密道師
摧邪論 (寛永版) 松濤松巌師
摧邪輪荘厳記 (同上) 宗教大学
守護国家論 (明治再刻本) 本会
立正安国論 (同上) 同
無得道論 (刊本) 樹下隆信師
一、本全書行間字傍に「・何丁」と付せるは、原本毎紙の左終行最末の字傍に記したるものにして、即ち原本の紙数を知らしむる便に供す、
  明治四十一年四月二十日  浄土宗宗典刊行会
追記 第三回刊行第九巻(一枚起請文、漢語灯録、和語灯録等)は既に製版三百余頁に達し、第四回刊行第二巻(善導疏釈の類)も亦製版に着手せり、今後続々刊行の予定なり。

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