【そろばんDANQ開発秘話】(前編)そろばん教室の課題解決につながるサービスを
そろばん業界に、新しい旋風を巻き起こすべく提供が開始された『そろばんDANQ (※1)』。2021年8月現在、新型コロナウイルスの影響もあり、なかなかこれまでの直接対面式のそろばん塾運営が難しい中、大きな期待を寄せられているサービスです。今回は、共同サービス提供事業者である朝日プリント社の山田社長と、オリエンスの木原社長にサービス提供までの裏側をお聞きしました。(後編はこちら)
創業69年目の会社と3年目の会社の協業事業
ー まず、簡単な自己紹介と会社紹介を山田社長からお願いします。
山田社長:
朝日プリント社の山田といいます、よろしくお願いします。当社は創業からずっとそろばん塾に限定して、そろばん塾のための印刷物を提供している教材の会社です。仕事の形態としては印刷および出版で、そろばん自体は作っていないんですけども、仕入れて販売するようなこともしています。いってしまえば、そろばんにまつわること全般です。
近年では、パソコンのソフトを販売したりですとかそのようなことも一部手がけてきました。その中で、アプリは今回初めて一緒に作らさせていただいています。創業は昭和28年なんで69年目になっています。今どの珠算塾団体も65周年70周年のところがほとんどのように、弊社の創業期がそろばんの連盟ができ始めた頃です。最初はそろばん塾を経営していたんですけども、そこから教材提供する会社がないということが判明しました。当時はそういう出版社が少なくて、我々が塾の方は撤退し印刷業の方に専念するかということで全国に展開していったという歴史があります。
ー ちなみにそのパソコン用っていうのは、そろばんに関するパソコン専用のソフトウェアなんでしょうか?
山田社長:
そうです。フラッシュ暗算というのがよくテレビで扱われるんですけども、画面に映し出された数字を足し算していくものです。それを作られた東京の宮本先生という方と一緒にソフトを全国展開していきました。
ー ありがとうございます。それでは、木原社長、お願いします。
木原社長:
はい、オリエンスの木原と申します。オリエンスは、2019年に創業の若い会社でして、少数精鋭で事業を行っています。基本的には、大きく2つ事業を行っています。
1つ目は、教育系IT事業として、スマホアプリと先生用の専用管理システムをセットで提供する事業を今回の『そろばんDANQ』として行っています。また、それとは別に、専門学校や、国家試験対策やTOEIC対策を行っている塾向けにもにシステムを提供しています。
2つ目は、東京・新宿四谷のリアルなそろばん塾です。こちらは、開業2年で生徒数が120人くらいになりました。全然別の事業を手がけているように見えますが、基本的にはオリエンスは「教育」と「IT」 を掛け合わせて何ができるかを模索している会社で、教育現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献できるサービスを提供することをミッションとしています。
全国のそろばん教室の課題解決につながるサービスを目指す
ー ありがとうございます。それでは、まず取り組みの経緯について山田社長からお伺いしてもよろしいでしょうか。
山田社長:
我々としてもアプリを作りかけたではないですけど、スマートフォンが普及しアプリなどができ始めた頃に、何かあればいいなというのは感じていました。もともと、パソコンのソフトは販売していたのですけれど、やはりパソコンの機種に依存したりとか色々とメンテナンス対応が大変でした。そういった中で、何かできないかなっていうのは色々と考えていました。しかし、やはり独自にやるとコストが馬鹿にならないというところで、そういう思いだけがずっとあって、アプリをいつか作りたいな展開していきたいなと感じていました。その中で何人か声をかけて頂いていたんですね。その中のお一人が木原社長でした。
木原社長は、そろばん塾をルーツに持たれていたということで、他の開発者さんとそこが違ってたんですね。もしかしたら、そろばんを全く知らない人が作った方がすごい革新的なことができるのかもしれないですけど、やはり、そろばんをある程度知っておられた方が+だろうなと感じました。また、木原さんがこれまでのキャリアでLMS(ラーニングマネジメントシステム)に取り組まれてきた実績もあり、教育や学習といった領域を専門でやられてきたということ、かつ、そろばん事業にも造詣が深いということで両社タッグを組むことになったという経緯ですね。
ー 逆に、今まで提案を受けてきたところは、あまりそろばん業界のことに詳しくない方からの提案が多かったのですか?
山田社長:
そうですね。例えば、教材をデジタル化するだけであったり、そろばんをまったく知らない企業にコンテンツをアプリ化しませんかなどといった提案は実際にいくつかもらいました。だけど、実際どうかなというのがあって。業界の課題解決に、つながっていないのではないかと思いまして。
ー ありがとうございます。それでは、木原社長からもお願いします。
木原社長:
もともと『そろばんDANQ』の原型になるようなアプリだったり、先生向けの管理システム自体は、実は当初、私が運営している「そろばんToz」で使えないかなと思いつくり始めたのが一番最初の経緯です。私は、前職でLMS(ラーニングマネジメントシステム)に近いようなことだったり、学習記録を使ってユーザーの学習継続に寄与するシステムの運営に関わっていたので、自分がそろばん教室をやるにあたって、アプリであったりITツールをうまく活用したいという思いがありました。
「そろばんToz」の教室では朝日プリント社さんの教材を使用させていただいていたので、試しに問題をシステムに入れられないかなというところで山田さんにお電話差し上げたのが、最初のきっかけです。そこから、今お話をいただいた通り、ぜひ一緒にやりましょうと言ってくださり、「そろばんToz」だけではなく、全国のそろばん教室のお役に立てるようなサービスに変えていこうというところで、開発を今も継続しています。
一本の電話からの出会い
ーもう少し深堀をしていくと、今聞いたお二人のお話はもともとの土台の話がメインだったと思うのですが、実際にお会いして明確に決め手となった場面はあったのですか?
木原社長:
もともとは、私が朝日プリント社さんに「こんなアプリ作ってて問題使わせていただきたいんですけど」と、実際ダメだろうなと思いながら電話したのが最初です。その中で、山田社長に応対を変わっていただいたんですけど、山田社長も当初は困惑した様子でした。そして、ちょっと検討しますとのことだったので、のちにまたお電話させていただいて、一緒に考えましょうと言っていただきました。実際お会いすることになったのは、そこから半年後ぐらいですかね。
ー その最初の電話の際、山田社長はどのような印象だったのですか?
山田社長:
そうですね...。やはり営業の電話は頻繁にかかってきて、「御社は儲かりますよ」や「ためになりますよ」などはよく言われます。しかし、今回決め手になったのは、弊社のお客さんからのお話だったというところですね。まったく取引のないところからの電話だと、ひょっとしたらここまで話は進んでいないかもしれません。そろばん塾をベースにしているということで、それだけで信用できるというのは変ですけど、そこで実際に子供たちを教えていることから信用であったり責任を感じることができました。
ー そうですよね。名もなき開発者からの電話で「アプリ作りましょう」なんてとまどいますよね。
山田社長:
IT業界も2年3年でつぶれる会社が多いっていうのもよくわかってましたし、最近出来たばかりで、すぐ消えていくんだろうな感じることも多いです。やはり長くやっていきたいので、革新をついたところを提供していければと思います。それが出来そうなきがしたんですよね。
リスクを背負っても課題解決を目指す
ー では、そろそろ『そろばんDANQ』の説明をお願いしたいと思います。
山田社長:
さっき言っていたような、そろばん業界が抱えてる問題につながる解決策を提供することが重要だと思っています。 大きく4つぐらいあるのかなと考えています。今までの事業スタイルは、「子どもの学習成績の見える化」がなかなかできていなかったんです。学習状況の見える化が一番だと思います。あとは、採点時間を短くすることで、先生が丸付けする負担を軽減する。さらに、昔は週3,4日通っている子が多かったんですけども、今は週1回の授業でも最大効率を上げることが必要です。(今は週1, 2回くらいが主流のようです。) アプリを使って塾に来てない時でも、塾に来てる時でも大幅な効率化目指していきます。 また、最近重要になってきてるのが生徒とのコミュニケーションももちろんなんですけど、親とのコミュニケーションです。そのあたりも、アプリを通じて保護者や生徒とコミュニケーションをとっていければと思います。見える化、採点、最大効率をあげていく、コミュニケーション、そのあたりはこのアプリで実現できているんじゃないかなと思います。
そのような提案を、木原社長からたくさんしていただいて、いやそれはそうだなあと納得しました。今まで、我々が作ってきたリソースや問題とかその辺を提供することに抵抗が始めはあったんですけども、解決策があるのならばリスクを背負ってでもやっていった方がいいんではないかと思いました。業界の問題が解決できるアプリになっていると思います。
ー ありがとうございます。 今、プロダクトのコンセプトみたいところが多かったので、より細かくプロダクトについて木原社長から伺いたいです。
木原社長:
実際、自分でそろばん教室を始めた時に一番最初に思ったことは「生徒に声かけるタイミングって難しいな」ということです。1時間のうちでどれだけ生徒に声をかけれるだろうかと思ったんですが、それが正直予想外に少なかったです。率直に、そろばん教室を始めた時の感想ですが、正直問題自体の答えはわかってたりするので、採点なんかは経験のある先生じゃなくてもできることだったりするんじゃないかなと。
私はずっとIT業界にいた人間なので、これはもしかして人がやらなくてもいいところなのかなと思ったのが最初の『そろばんDANQ』の発想でした。そこから発展させていって、自動採点や間違えたところを自動でやり直したりというのは、実際に自分が教えていて気づいたところがベースにあります。
やはり『そろばんDANQ』を全国のそろばん教室にお届けするとなった場合を想定すると、いろんなスタイルのそろばん教室であったり、私のそろばん教室 と全く異なるスタイルのそろばん教室もたくさんあると思います。しかし、採点であったり、問題のやり直しや指示する時間は教える側には負担となる点は共通だと考えており、これを最短化したいです。生徒が計算結果を画面に入力して、先生の方にもその結果が表示されるという仕組みなら、大幅に先生の時間の負担が改善できると考えています。
それに加えて、モチベーションが低い生徒に対してもうちょっと頑張ろうよという声かけをする時間を作りたいです。実は、保護者からもっと求められていることって生徒におしりを叩いてどんどん進捗させたり、課題がある生徒に課題と練習方法を指導することだと感じています。そのために、月謝を払って教室に通っていると思うので、そういう時間をとにかく多くする、さらにより効率的に隅々まで生徒とコミュニケーションできるツールを提供していきます。
毎日教室に通っている生徒でさえ、本人が満足するレベルで先生と会話出来ていることは少ないと考えています。やはり、生徒さんや保護者さんからするとちゃんと見てもらえているのかなという不安があるし、先生からすればきちんと見ているのに評価されないと感じてしまい、結果として生徒の在籍期間が短くなることにつながってしまうことがあります。その点が非常にもったいないことだと感じており、さらには、ちゃんと先生が指導していると保護者さんからも感じてもらえるツールが何かしらできればいいなと思って開発してきました。思い切ってそろばん教室の方で使っていただければ、いろんなスタイルに合わせて使用できるのではないかなと思っています。
最後に一点、『そろばんDANQ』はアプリと先生側のICTツールのみの活用を推奨しているわけではなく、決して今の紙に鉛筆の教室スタイルを否定しているわけではありません。ただ、全部が全部従来の方式でやると課題が出てくるので、スタイルに合わせて使うことが重要だと考えています、授業中に積極的に使うのもいいですし、家庭で使うのもいいです。検定試験の直前だけ紙を使ったり、生徒の好みにまかせてもいいと思います。使い方はそれぞれんの教室にお任せするので、そろばん教室の数だけ多様な活用方法があると思います。ぜひお試しいただきたいです。
ー 個人的には、回答結果がデータベース化されたことで、どの先生でも生徒の課題がわかるようになっているので、属人的にならなくて済むことは良いと思いました。
木原社長:
そうですね。1人の先生で20人同時に見るのはどれだけベテランの先生でも難しいと思いますし、人間の記憶は完全ではないので、テキストを何回も見直すよりは画面で一括で見たほうが早かったりすると思います。より定量的に判断できると思います。
(後編に続く)
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