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008 日本をやり直す/疑似政権交代

 かつての自民党は、疑似政権交代をしつつ、長期に亘って政権を維持していた。確かに、右派の岸内閣や佐藤内閣と、左派と言われる三木内閣あるいは大平内閣あたりとを比べると、なるほどと思われる。なかなか社会党も付け入るスキがなかったと思われる。優秀な官僚機構がこの体制を支えていたので、国民も安心して経済に注力していたということだろうか。
 1994年の選挙制度改革以降はどうであろうか。小泉内閣の郵政解散、民主党による政権交代は、この選挙制度改革の賜物と言える。衆院選の投票率は7割に近づいた。2大政党制への道筋が見えたかと思われたが、逆に政党は流動化する。比例代表並立制と政党助成金が流動化の原動力となった。
 特に野党には大きな遠心力として働いた。つまり、小さくてもそれなりにやっていけるということだ。小さくても代表であれば居心地は良い。一方政権与党は、利権の旨味によって求心力を高める。結果として、1強他弱と言われる状況が作られていく。国民にとって幸か不幸かは判らない。一つの選択である。
 さて、岸田内閣が誕生した。かつての自民党であれば疑似政権交代である。国民もそのことを期待した節があるが、実際は違ったようだ。政権交代というのは、対峙する勢力が切磋琢磨することが大前提である。そのような兆候は見られない。利権構造は温存されて、路線の変更はない。あらゆる分野に及んでいる閉塞感は変わらない。結果、失われた30年から50年へと前進する。

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