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徒然 「本の虫」

あなたは本の虫ですね、と人から言われた。はたと私はなぜ本を読むのだろう、と考えた。
そこで思い至った。本を読むのは、見えない感情を言葉で掬い取るためだ。
複雑で整理されていない混沌とした思考を読み解く鍵が言葉だ。そのためにはたくさんの表現方法を知っておく必要がある。あらゆる感情のうち、言葉が切り取れる部分なんて、ごく一部でしかない。しかも簡単な言葉でも、伝える相手と自分の言葉の意味がすれ違う時もある。絶望的だ。
言葉がなくても通じ合えるなら、本を読む必要なんてないんだろう。いつでも直感的かつ本能的な方法に頼れるなら、言葉なんていらない。でも服を着てお日様の下でたくさんの人と関わって生きていくなら、私たちにはどうしても言葉が必要なのだ。

昔から言葉にできない自分の感情を持て余し気味だった。なんで伝わらないんだろう、といつも歯がゆい思いをしていた。最近またポツポツ読書をするようになって、その苛立ちが少し減ったように思う。
この曖昧で不確実な気持ちを表す言葉を、もっと身につけるために、これからも本を読みたい。

#エッセイ #徒然

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