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リスボンダービー感想

割引あり

 リスボンの画像だと思いました?残念!リスボン行きの画像なのでポルト・カンパーニャ駅の画像です!

リスボン地下鉄の画像

前半


 3-4-2-1と4-4-2の対決。3バックに対して2トップ、WBに対してSHとSBが対峙と、フォーメーション自体がスポルティングに対して噛み合わないベンフィカは劣勢を強いられる。特に、スポルティングの3-4-2-1の“2”を担うペドロ・ゴンサウベスとマーカス・エドワーズはベンフィカのライン間を使いたい放題。4-4-2で課題になる列間管理の難しさを見事に突く形になっていた。アントニオ・シウバが前への意識を強めて前後左右のカバーに勤しむ結果になった。前への意識が強いカバーリング型CBは、一番大きく成長するタイプなので期待している。
 しかし、さすがに攻め手が大してないまま前半をやり過ごすのは厳しかった。LWBヌーノ・サントスを中心に左から攻め続けたスポルティングは、左が対人・右がカバーのベンフィカCBコンビのアシンメトリーとガッツリ噛み合っていた。 39分の先制弾はまさにそのN・サントスのパスにトリンコンが反応し、カバー型のA・シウバがボールカットに失敗。対人型のニコラス・オタメンディも詰めきれずにトリンコンに押し込まれたものだった。N・サントスに渡る前も、列間があまり連動しておらず、かなり緩いフォーメーションを描いていた。

44分にも19歳のCBウスマン・ディオマンデがCKからヘディングを叩き込み、前半でスポルティングが2点を先行。このディオマンデも、対人と持ち運びに長けた優秀な若手CB。まだボールの持ち運びに余裕があって守備的なタスクもやりやすく振り分けられている、所謂“3バック専門感”は否めないが、じっくりとステップを踏めば問題ないだろう。
 前半はN・サントスデーと言ってもおかしくない出来だった。ベンフィカの右サイドはボランチ型のフレデリク・アウルスネス(RB)とジョアン・マリオ(RSH)が並んでいたこともあって、極めて中途半端な状態。マリオがN・サントスに着いて行こうとすると、同サイドで余っているアウルスネスが自分を持て余して当たりに行く、マリオが間に合わない場合はやはりアウルスネスが当たりに行くが、シンプルにSBとしての対人性能が高くないので被害が拡大してA・シウバがクソデカい範囲をカバーすることになる。正直言ってかなり悪い組み合わせに、相手との相性も組み合わさって地獄ができていた。別府か?

地獄の予習をしに行った時の画像

誰が将来も地獄行きじゃボケ

 一方、N・サントスは組み立てられて俊敏性も十分、よりスピードに寄ったベルナトといった感じだった。体格や身体能力に大きな特徴がなく、プレースタイルも中央向きなアウルスネスやマリオみたいなタイプには特にしんどい相手だったのではないか。そこにフォーメーションの噛み合わせも加わると、N・サントスもやりやすかったように映る。
 ベンフィカLBのグリマルドも、少ない機会ながら確実にチャンスを創出しており、このLB(LWB)同士の作り合いは見応えがあった。代表のヌーノ・メンデス、ラファエル・ゲレーロもそうだが、ポルトガルのLBはゲームメイク能力をきちんと持ち合わせている印象だ。イベリア半島がそういう傾向なのかもしれないが。

後半

 ハーフタイムにマリオを下げてアレクサンダー・バーを投入したベンフィカは4-3-3気味のフォーメーションに変更。アウルスネスとジョアン・ネベスがIH、シキーニョがアンカー。前半の講評の通り、マリオとアウルスネスを2人同サイドに置く必要はないという判断だろう。
 このシステム変更がハマった。サイドに高い位置を取るWGとSBを置けば、間で相手のWBを挟みやすく、2人置いているメリットが出てくる。
 それでもスポルティングも個人能力でなんとか対抗する。まだ18歳のネベスに、がっしりしたウルグアイ代表マヌエル・ウガルテが狙いを定める。シーズン前半は活動量が少なく、大人しいアンカーの印象が拭えなかったウガルテだが、シーズンが深まるにつれて機動性能も披露するようになっている。この日は2点を追いつかんとするベンフィカ相手のオープンゲームになっても強さを発揮した。オープン展開でも力を発揮できるとなると、いよいよビッグクラブも視野に入るのかもしれない。
 しかし、スポルティングはウガルテvsネベスの部分しか活路を見出せなかった。ベンフィカの4-3-3にサイドが押し込まれてしまい、LWB中心のゲームメイクも封じられてしまった。システムを変えようにも、ベースが3バックなので融通も効きにくい。袋小路に入ってしまった。
 フォーメーション変更を見てすぐ手を打ちたかったのか、54分にエドワーズとパウリーニョを替えている。エドワーズはトリンコンとちょっと被るスタイルだが、とはいえ大型な壁役は欲しいタイプで、トリンコンのフィジカルの部分は必要とする。メッシのようなプレースタイルで、メッシのような使いづらさはあり、トリンコンと比較すると先に下げたくなるのは仕方ないだろう。
 ただ、これがどういう意図の交代だったかは不明だ。プレースタイルこそ異なれどポジションはほぼ同じで(エドワーズの位置にトリンコンが移った)、根本的なフォーメーションの噛み合わせが悪化したことを考えればそこまで局面を変化させる手ではないように感じた。恐らくは、攻め込んでくるのが確実な相手の裏を取るためのストライカーが欲しかったというところだろう。
 単純な交代以外では何も動けないスポルティングを他所目に、ベンフィカは次の手を打つ。66分にはラファ・シウバとゴンサロ・ラモスをあっさり下げてピーター・ムサとゴンサロ・グエデスを投入。サイドを支配しつつあり、またネベスが高い位置を取り始めたのを見て、4-1-3-2気味のフォーメーション(というか4-1-1-4くらいになりつつあった)で高さを中心に攻め込むのを決めたようだ。71分にアウルスネスが倒れたフリ作戦でクロスからヘッドで得点を挙げると、勝負は一気にわからなくなる。
 そのアウルスネスは1試合でRB→IH→LWGと位置を変えたわけだが、フィジカルゲームになれば前線へ、テクニカルゲームになれば後方へ移れるこのノルウェー代表のインテリジェンスがチームを支えている。
 手を打つしかないスポルティングはRWBを交代させ、トリンコンに替えてマテウス・リースを投入。逃げ切りを図る形になった。79分にはSHまで上がっていたヌーノ・サントスをよりアタッカー気質なアルトゥール・ゴメスに替えている。持ち運びやフィードなどビルドアップでの貢献度が高い左利きのマテウス・リースを入れたら、ヌーノ・サントスの旨味が薄くなるという側面はあるし、それならドリブルに特徴があって終盤の活躍も期待できるアルトゥール・シウバにしたいのは間違いではないように思う。グリマルドもリスティッチと変わっているので、終盤欲しくないタイプなのは確かだ。
 ただ、右サイドでアップダウンを繰り返していたエスガイオをあっさり見切ってベジェリンを入れたのは難しい判断だった。疲れているエスガイオかベジェリンか、どっちが良いかは難しいだろう。
 ベンフィカ側は、シキーニョ→フロレンティーノ・ルイスと安全策も忘れなかった。終盤になってオープンな展開になると、後方はテクニカルな攻撃力よりも守備力を必要とするケースが多い。ある程度攻守分断にはなってくるからだ。フロレンティーノとJ・ネベスの組み合わせは恐らくアウルスネスの前方起用抜きには厳しいが、ネレスがIH気味にポジションを取るなどして微調整は計れていた。ムーブメントに特徴があるラファ・シウバではなく、テクニックに持ち味のあるネレスを残したのは終盤のパワープレーと、それに伴う攻撃的プレーヤーの中盤プレーの可能性を考慮してのことだろう。極めて滑らかな、ケースバイケースの交代であった。
 できることをやり続けた後半のベンフィカは最後に報われた。94分、最後まで冷静だったA・シウバが詰めて、溢れたボールを最後までファイトしていたJネベスが押し込んで同点ゴールが生まれる。対照的な若い2人がもたらした、あまりにも貴重な優勝への一撃だった。
 総括。前半のうちに2点を先行されて手を打つしかなくなったベンフィカのスクランブルに対して、噛み合わせがハマり全てがうまくいったスポルティングは全て後手になってしまった。システムの融通の問題だし、拮抗した相手に不利を受けると打つ手がないのも露呈した。一昨年優勝したチームだが、今季はブラガの後塵を拝して4位になった理由だろう。簡単な言葉で言えば、マンネリなのかもしれない。
 一方のベンフィカは、後半にまくりを見せたものの、エンソ・フェルナンデスの穴は大きかったのだと感じる。シキーニョでは攻守共に劣ってしまい、台頭してきたネベスはフロレンティーノと組ませにくい。最適解が一気にとっ散らかったのも含めて、あの移籍金はベンフィカにとっては適正価格だったのだろう。チェルシーにとっては知らないが。

著:パリオタク

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