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【プレイバック】畜生と聖人の闘い|LLNK_1206の毎日がエブリデイ

【おことわり】
2021/07/18執筆のものです。下書きに残っていたので出します。古い情報が多いですが、その当時に書かれたものということを前提に読んでいただけると幸いです。

4年間の片想い、ここでファイナリー。

 数年来のラブコールがついに実った。
 PSGにとっては前回のミランとの契約更新時(2017年夏)にも大金を提示して引き抜きを画策した垂涎のターゲット。4年の時を得てフリーエージェントとなった意中の相手に再び告白し、エッフェル塔の片想いに終止符が打たれた。
 16歳8か月、史上最年少でセリエAのゴールマウスに立ってから、ジャンルイジ・ドンナルンマはミランのみならずイタリアの希望であり続けた。昨季はついにミランにCL権をもたらし、10年近くに及ぶ長い迷走に終止符を打った。初の国際舞台となるEURO2020では、2度のPK戦を中心に最後の砦として立ちはだかり、あっさり優勝を手中にした。

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デカすぎて固定資産税かかりそうなので途中省略しました。所得税はめっちゃかかります。

 セリエA通算251試合、イタリア代表33キャップ、欧州王者と十分すぎる実績を引っ提げて凱旋門へと入門する。一方で、パリではこれまでの正GKケイラ―・ナバスとのポジション争いが待ち受けている。復権イタリアの象徴と“ミスターCL”のポジション争いは過去に例を見ないレベルだろう。
 ナバスを抱えるチームがドンナルンマを取る必要があったかどうかという話は、長期的な編成計画を考えたらあり得ない議論である。ワールドクラスとはいえ34歳のGKをこれからも信用するというのはリスキーな判断。22歳の超ワールドクラスがフリーで転がっているのならなおさらだ。
 そもそもナバスはPSGからすれば“つなぎの選手”という扱い。もし本命選手として獲得していたなら、2019年夏の早い時期に獲得が決まっていたはずだ。だが実際は、移籍期限ぎりぎりに獲得。言ってしまえば最初から”滑り止め”扱いだった。本命はずっとドンナルンマであり、そうでなくてもヤン・オブラク。ディケイド単位でゴールマウスを託せる人材を探していたのだから必然である。裏を返せば、今回のドンナルンマ獲得はそこからブレていない一貫した動きなのだ。
 どちらがポジション争いに勝つかと言われれば、私はドンナルンマだと回答する。単純な話だが、かなり多くのシュートが飛んできてその大半を止めるGKと、そもそもあまりシュートが飛んでこない上にそのシュートのほとんどを止められるGKだったらどちらを選ぶか。守備範囲とセービングはドンナルンマに分があると感じている。ポジショニングは同等程度で、コーチングは現状ナバスだろうか。言語の壁がなければドンナルンマが上だと見ているが、イタリア語以外でコーチングするのは今回が初めてである以上、現状はナバスの方が上とした方がいいだろう。
 もっとも、実力が同等でも、22歳と34歳なら前者を優先するのがノーマルだ。レジェンドならまだしも、ナバスは在籍2年。CLでの結果は歴代のGKの比にはならないしそこへの貢献度も大きいが、それだけでチアゴ・シウバやズラタン・イブラヒモビッチ、あるいはブレーズ・マテュイディやチアゴ・モッタ、マルコ・ヴェッラッティと並べるわけにもいかない。ナバスが不遇だ、という意見は前提理解が足りていないように思える。
 そもそも、ナバス自体に付け入るスキがなかったわけでもない。彼の稼働率はGKにしては高くなく、現状でも正GKに据え続けるリスクは存在するのだ。以下にレアル・マドリー移籍以降でレギュラー稼働したシーズンの出場試合数を記す。

2015-16 リーガ34試合・CL11試合
2016-17 リーガ27試合・CL12試合・クラブW杯2試合
2017-18 リーガ27試合・コパ3試合・CL11試合・クラブW杯3試合
2019-20 リーグアン21試合・カップ戦3試合・CL9試合・その他2試合
2020-21 リーグアン25試合・カップ戦1試合・CL10試合・その他1試合

 メガクラブだと、リーグ戦とCLはレギュラーGKに託すが、カップ戦はほぼセカンドGKの働き場である。なのでカップ戦を除いた試合数がレギュラーとして稼働した試合数になるわけだが、そこで言うとキャリアハイは2015-16の45試合。その他のレギュラー稼働したシーズンを見ると、リーグ戦とCLを10試合程度、割合にして30%近く欠場する。これは欧州の正GKでは比較的多い数字だろう。通常はリーグ戦とCLをほぼ全試合出場するので、欠場率は10%程度に収まるはずだ。

 彼の控えGKの成績も見ておこう。

2015-16 キコ・カシージャ リーグ4試合・カップ1試合・CL2試合
2016-17 キコ・カシージャ リーグ11試合・カップ6試合・CL2試合
2017-18 キコ・カシージャ リーグ10試合・カップ5試合・CL2試合
2019-20 セルヒオ・リコ リーグ2試合・カップ3試合・CL3試合・その他2試合
2020-21 セルヒオ・リコ リーグ10試合・カップ3試合

 これを見ても、実質的に今までもターンオーバーを敷いている状態だったのではないかということだ。もちろん明確な序列付けがなされているので、完全ターンオーバーとはワケが違うが、セカンドGKが平均して12,3試合程度出られるなら実質CL+カップ戦を託されている状態。これだけリコが出る余白があったというのは明確にリスクだろう。実際、2019-20シーズンのCLでは準決勝でリコが登場している。快勝で終わったもののリコのプレー自体はかなり危うく、相手が違えば彼のせいで敗退していた可能性も大いにあった。

 比較までに、これまでのPSGの2ndGKの成績も併記する。

2011-12 ニコラ・ドゥシェズ カップ3試合(EL7試合)
2012-13 ニコラ・ドゥシェズ リーグ4試合・カップ6試合
2013-14 ニコラ・ドゥシェズ リーグ1試合・カップ5試合
2014-15 ニコラ・ドゥシェズ リーグ5試合・カップ10試合
2015-16 サルヴァトーレ・シリグ リーグ3試合・カップ9試合
2017-18 ケヴィン・トラップ リーグ4試合・カップ10試合

 リーグ戦で言うと彼らは年間5試合弱しか出場していないため、10試合程度出場できていたカシージャやリコに比べるとやはり少ない。こう考えると、やはりナバスの欠場率は高いと言わざるを得ないのではないだろうか。

共存は可能と考えるのがリスペクトフル

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 補強の妥当性をここまで主張したが、ここからは今季以降どうしていくかについて記していく。
 まず、今季は共存体制を取るだろう。ドンナルンマがいくらいい選手だと言っても、22歳の国外初挑戦がリスクであることに変わりはない。アタッカーと違って守備者は適応にもある程度の時間を要する。34歳のナバスを放出してゲット&セーブできるカネも知れているので、それならばリスクヘッジ要員で残すほうが無難だ。フランスへの適応期間が欲しいことを考えれば、ドンナルンマのレンタル放出もあり得ない選択肢だ。
 共存できるか不安視する声も多いが、そもそも共存は1年だけの話なので大きな問題にはなり得ないのではないか。バルセロナは、リーグ戦はクラウディオ・ブラーボ、CLはマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンで完全ターンオーバーしていた時代があるし、同時期にはアトレティコ・マドリーがミゲル・アンヘル・モヤとオブラクを使い分けていた。ナバス自身もティボー・クルトワやイケル・カシージャスと争ってきた選手だ。所属期間中に揉め事を起こす人間ではないだろう。
 来季以降は、ドンナルンマがよほど適応に苦労しない限りナバスが退団する運びになるだろう。その際はまたセカンドGKを見繕うことになるが、問題がないなら今季はリコをレンタル放流して、来季再び戻したい。もっとも、これは都合が良すぎる話。実際はまた新しい選手を連れてくることになるだろう。できればここで協会内育成枠を満たしたいが、果たして。

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